命を分けたザイル


しんしんと冷えるときにこういう映画を見たら
体の芯まで凍ってしまいそうな気がしました。
それにしても山の荘厳なまでの美しさには圧倒されます。

ストーリーは南米の山で遭難した登山家が奇跡的に生還するという
実話にもとずいたドキュメンタリータッチな映画。

凍りついた岩壁を登る出だしは割合淡々と展開するなと思っていたら
登頂後の遭難からが凄い話。

二人のうち「ジョン」は下山途中に滑落し足を骨折する。
相方の「サイモン」がザイルを使って下ろすうちにジョンが宙づりになる。
にっちもさっちも行かなくなりやむなくサイモンはザイルを切る。
ジョンはクレパスに落ちるが奇跡的に命は助かる。
サイモンはジョンは死んだものと思い一人下山する。
そこからジョンの生還物語が始まる。

実際に山に入って撮影しているらしく、本物の迫力がひしひしと伝わってくる。
クレパスの中のシーンなんか見ているだけで冷や冷やする。

人というのはここまで生きることに執念を持てるものなんですね。
改めて凄さに脱帽しました。

この映画では当事者である二人がインタビューに答える形でその時々の心境を話す。
ザイルを切ったサイモンはどこか後ろめたさが感じられる雰囲気であるのに対し
一人で生還したジョンは堂々と自信に満ちた態度であったのが対照的だった。

こんなに迫力のある山岳映画は久しぶりというかほとんど初めてというか。
すごいです。
実話にもとずいた映画だから説得力を持つのですが、これが単なるお話しだったら
こんな話はと軽く一蹴しそうな映画になっていたでしょう。

 

 (☆☆☆☆)

(2006.1.7)