always 三丁目の夕日


セピア色の映画でした。
この時代を生きた人にとってはいたく涙腺を刺激されます。

昭和30年代前半の東京。
なのですがどっか昭和と大正時代が混ざり合っているような気もします。
あのころは皆んな貧乏だったが、隣近所それなりに仲良くやってたよね・・・・
というステレオタイプな映画でした。

TVのある家に近所の人が見に集まり、そのころの人気は力道山の
空手チョップ。
集団就職もあったし。
リンゴのほっぺの女の子。
いたねそんな子が。

フラプープ、空くじが「スカ」とでる駄菓子屋のくじ、クリスマスの時の
オジサンの三角帽子、昔を思い出させる看板、路面電車、氷で冷やす
冷蔵庫、あ!それから例のゴムでプロペラを廻す飛行機。
そして出てくる人は皆ないい人達ばかり。
みんな良かったよね、懐かしいね。

まだやるのと思えるほどの人情表現。
監督の意図が分かっていても胸がじーんとしてしまう。
そんな自分が腹立だしくなるほど。
当時を生きた人を泣かせるのもいい加減にしてといいたくなる。

そして最後の夕焼けのシーン。
30年後、50年後もこんな夕焼けがあるのかって。

たぶんそこが監督の言いたいところなんでしょう。
みんな変わってしまったと。
じゃあどうするのという視点が見えてこない。

力道山のTV見たさに集まった町の人たちも、それぞれがTVを
持てるほどの豊かさになると、互いの行き来はなくなってしまったのです。
自分の家にないものを求めて必死に働いた時代。
それが満たされた後に残ったものは。

あのころに戻れるなら?
いいえ、戻りたくはありません。
この安逸をむさぼった体にはあの頃の生活などできるわけが
ありません。
よしんば昔の生活の戻ったところで、人の心までタイムスリップするはずは
ないじゃありませんか。

泣かせる映画なんですが妙にさめた気分もありました。
高齢者に対する霊感商法の映画です これは。
素直にノスタルジックな気分になればいいのかも。

当時を知らない若い人はこの映画をどう見るのでしょう。
僅か40数年前、この通りではありませんがこんな日本が確かにあったような
気がします。

 

涙分だけおまけで
 (☆☆☆☆)

(2006.1.10)