息子の部屋 

精神分析医である主人公が息子を事故で失い精神的なダメージを
受けるが、そこから立ち直る きっかけを掴むまでの話。

精神分析医が精神的に参ってしまうと言うところが話としてはひねって
あるところ。医者はこうあらねばならないという思いこみが強いばかりに、
受けた精神的なダメージをストレートに表に出せない。息子の事故と
自分の行動を重ね合わせ、タラレバの世界、過去だけを追い求める
世界にはまり込んでしまう。悲しみをストレートに出してしまった妻の方
が立ち直りが早い。このあたり男と女の違いを見せつけられる。

「これでは患者との差が無くなる」と吐き捨てるように言う言葉に
精神性が凝縮 されている。医者は患者より上にいなければという
思いが。それでいて患者に信頼されていないという意識と、実は患者は
信頼していたという現実とのギャップ。そしてこの患者からの信頼と、
息子のガ−ルフレンドとのふれ合いから立ち直りの きっかけを掴む。

大げさな表現のないこうした映画はいいね。誰にもある心の弱さが、
じわーっとしみてくる。演技も全体にしまっているし。

ラストの方で、ガールフレンドが家を訪ねてくる。その時にボーイフレンドと
一緒だと少女が言う。ヒッチハイクしている彼らを結局次の予定地まで
車で送る。
その車の中のシーン。次第に息子の死が彼の中で冷静に受け止めら
れていく。ボーイフレンドを見ながら「イイ子そうじゃないか」
そして少女との別れ。車の中から手を振る彼女をさりげなく見送る家族。
まるで大したこともなかったかのように。