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ストーリーは韓国の現在大統領である金大中が1974年に日本から
韓国に拉致された時の話。韓国KCIAの仕業という話はあったがうや
むやのままで政治決着させたという記憶がある。この映画はどこまで事
実を拾ってきて話が組み立ててあるのかはかりかねるが、かなり事実っ
ぽい気がする。

セリフが全体にこもった感じで、しかも韓国人の俳優が日本語を使うので
なお分かりづらいところはあるがそれがまた妙にリアルな感じを醸し出してい
る。金大中がどういうことになるか結末は分かっているわけだがそれでいて
緊迫感のある映画になっている。この手の映画によくある、カメラがやたらと
パンするということがない。ほとんどのシーンがかしっと固定して撮ってある。
それが緊張感を生んでいる理由の一つだろう。それと日韓の俳優が手堅く
演技している。中で原田芳雄はなかなかいい。

今年の秀作の一つにあげて良い。新聞でもそれなりの評価をしていたので
劇場で見たいと思ったのだが上映期間が短くて見そびれた。
この拉致事件と、今問題になっている北朝鮮の拉致事件とは時期的に
ほとんど重なる。
当時の南北朝鮮の緊迫した状況がこうした不幸を生み出していったという
背景が分かる映画だ。
今回の拉致問題が大騒ぎになる前に公開された映画だが、拉致問題を
考える上でもっと取り上げられていい映画のように思う。

(2002.12.13)