真実のマレーネ・デートリッヒ
この映画を見ていると人の生き様は、幸せか不幸せかという色分け
ではなく、如何に生きたかという見方こそ大事なのだということに
思い至る。精一杯生きたならその結果が幸せでも不幸せでもどうでも
いいではないかと。
ドイツ生まれの大女優が反ヒトラーを貫いた姿を関係者に語らせ
ドキュメンタリーに描く。ヒトラーにとって敵である連合軍を慰問する姿は
迫力があり圧倒される。
ただ、何が彼女をそこまで駆り立てたのか背景説明はやや不足
していたように思う。陥落したベルリンに真っ先に駆けつけたり、恋人
のジャンギャバンに会いに戦地に赴いたり、自由奔放と言う言葉では
説明できない彼女の熱い血のたぎりを感じさせる。
例の「リリー・マルレーン」であるけれど、英語で歌っている歌は好き
になれない。ララ・アンデルセンはドイツ兵を鼓舞するために歌い
デートリッヒは連合軍のために歌った。同じ歌が敵味方それぞれに
流れたというのは不思議な縁を背った歌だ。
デートリッヒの英語の歌はいかにも優しい。一方ドイツ語の歌は
怒りとも悲しみともつかないものが内からほとばしり出る。
ドイツ人から愛されなかった女優。この映画がベルリン映画祭に出品
されたというのもまた皮肉的な事のように思える。
後年の顔とは違って若いときはぽちゃぽちゃしていたのは実に意外だった。
(2004.4.14)
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