華氏911

ドキュメンタリー映画としてそれほど優れたものとは思えないがインパクト
はある。ただ、事前に監督マイケル・ムーアの著作本(「やいブッシュ、
世界を返せ」というタイトルだったか)を読んでいたからインパクトがそこそこ
だったかもしれぬ。

前半、ブッシュ大統領とビンラディン一族やサウジとの関係についての
部分は事前知識が邪魔して眠たかった。本当にうとうとしてしまった。
後半、イラクで死んだ息子を持つ母の話や貧しい青年達を軍に志願
させようとする軍関係者を追った映像の方がはるかに引きつけられた。
そして最も秀逸なのは、国会議員に自分の子供を軍に入隊させるかと
聞いて廻る場面。議員達がムーアのインタビューを避けようとする姿に
イラク戦争をアメリカの上流階層がどう受けとめているかを見事に浮かび
上がらせていた。

この映画を見てアメリカという国についていろいろ考えさせられる。
明らかにイラクを自分たちの利益に供したいと考えている一部の富裕層や
ビジネスマンが存在する。その一方で貧しい人が20%もいるという。
中間層でブッシュを支持するという人は、イラク戦争の胡散臭さを知りながら
アメリカは世界に貢献するんだ、という願望に固執し、そうありたいと自分
たちが思いこみたいがために戦争を支持しているに過ぎないような気がして
ならない。
世界がアメリカをどう見ているかということはお構いなしに。

イラクで息子が死んだアメリカの母親は、何で自分の息子が死ななければ
ならないのかと嘆き悲しむ。しかし、イラクにはその何倍も何十倍もそうした
悲しみを抱えてしまった人たちがいるということを忘れてならない。
戦争は常に国民に大きな悲しみだけを強いるものなのだ。


(2004.9.4)