時計仕掛けのオレンジ

キューブリックには脱帽です

セックスとバイオレンスが闊歩するこうした映画は好みではない
けれど、キューブリックのこだわりが画面からひしひしと伝わって
来るところは凄い。

「2001年宇宙の旅」も30年以上前にあんな映画を作る事が
できる力量を見せつけられたがこの映画はそれとは違ったこだわり、
本物志向という監督の気合いを感じる。

例えば、主人公が警官に首根っこを掴まれて顔を水に浸けられる
シーンがある。普通ならロングで見せたりアップで水に浸けられた
俳優のもがく様を見せたりと何カットかで見せるものだが、
キューブリックは中間的なアングルで延々とワンカットで写し続ける。
その間警官にぶん殴られたりする。そのシーン1分近くもあろうか。
見ている方が大丈夫かと心配になる。

主人公の凶暴な性格を変えるために瞼に器具を挿入して、目を
閉じなくしてしまう。目をぬらすために目薬を差すのだが、これを
見ているとこちらが拷問されている気になってしまう。
いやはや凄い。これでは俳優も大変だ。

モンタージュ手法なんかくそくらえといった調子で観客に映像を
ガンガン見せつける。

ヴィスコンティや黒澤も妥協しない監督だがそれとは違ったこだわりを
持つ監督だ。

キューブリックはクラシックをバックに使うのがお好きと見える。
「2001年」ではウィンナーワルツだったが、この映画では「第九」を
効果的に使っていた。

キューブリック作品をもっと見たい気にさせる監督だ。



(2004.12.15)