City Hospital(バーミンガム)視察レポート
City Hospitalにおけるホスピタルプレイについて
2003年8月18日(月)City Hospitalを訪問し、City Hospitalにおけるホスピタルプレイ、開発したプリパレーション・ツール、テディベア・クリニックについて、プレイスペシャリストから話を伺った。
<はじめに>
City Hospitalには、7名のプレイスペシャリストがいる。2名は総合、こども、外来病棟等の担当。3名が乳児病棟、2名がデイ・サージャリー(日帰り手術)を担当している。
プレイスペシャリストは病院に来た子どもたち全てに対応している。
今回は、小児病棟内のサンルームで、病棟担当プレイスペシャリストの
Alison Clarkさんのお話を伺った。
<プレイスペシャリストの役割>
Alison:
プレイスペシャリストは、子どもが病棟にとけ込んでいるか怖がっていないか、退屈していないかなどに気を配り、各自のニーズに対応している。
何か処置を受けなければならない時はプレイスペシャリストがプリパレーションを行う。点滴をしなければならない場合、ドクターからされると子どもは怖がってしまう。それで、プレイスペシャリストが、子どもに分かるように人形を使って説明する。点滴台のツールを見せて、点滴をしながらでもこうやって動けるということを説明する。
もう少し大きい子どもたちには、写真を見せながら、どういう処置が行われるのか説明する。
採血の説明をするのに、使う人形もある。実際に針を刺して、赤い色水(ストロベリージュース)を注射器で抜き取ることができるようになっている。子どもたちに、自分の手を見せて、「ここに血管があるでしょう?」と説明する。
やけどを負った子どもや、骨折した子どもたちには人体の絵図を使う場合がある。ツールは子どもの年齢に応じて使い分けている。
何か処置をしている場合、プレイスペシャリストが、おもちゃや音楽で子どもの気持ちを紛らわせたりする。音の出るおもちゃや『ウイリーを探せ』といった本などを用いる。子どもは、これに夢中になって採血に気づかなかったりする。
ごほうびとして「がんばったね賞」の絵をあげたりする。
プレイスペシャリストのペーパーワークとしては、この日にどのような子どもにどのようなことをしたのか、プリパレーションの記録をする。方法、結果などは、成功しても失敗しても記入する。問題やニーズ、対処などについても書き留める。
スペシャルニーズのある子どもたちに使う記入用紙もある。子どもの状態に合ったおもちゃを与えるためにも、障害や病状の正確な情報を得ることが必要だ。
PTや栄養士とのコラボレーションも重要である。
両親も私たちの対象である。
朝一番にナースから、どの子にどんな検査が行われるのか連絡が入る。誰が血液検査を受けるのかなどの情報をもとに活動予定をたてる。医師の回診後も情報が入る。
8時から4時までのシフト、12時から8時まで。週末も交代でカバーするので、7日間、プレイスペシャリストの誰かが必ず病院にいることになる。
<教師との連携>
朝の打ち合わせでナースから得た情報を教師に伝える。プレイスペシャリストがどの子にどんなことをするのかも伝える。病状が悪く授業が受けられない等の連絡もする。授業中に子どもの状況が悪くなったような場合には、教師からプレイスペシャリストに連絡が入る。
プリパレーションはプレイスペシャリストの役割で、学校では体についての学習等で発展させる。
<脳波検査のプリパレーション・ツール>
医療用器具は、できるだけ現物を使う。その方が現実性が増して良い。
検査部門に、破損したもの、使い古しのものなど不要品を提供してもらう。高価なものはもらえないが、できる範囲内で調達する。
けいれんのある子どもたちが、脳波の検査をする前に使う手作りのプリパレーション・ツール。売っていないので手作りした。
コードをつけた人形で、少々怖く見えるが、これを使って、脳波の検査は「痛くない」ということを説明する。
脳波のシートも見せて、どこに異常が出てくるのかということまで説明する。
プリパレーションを行う場所は特に決まっていない。子どもがリラックスできるところであればどこででも行う。
ベッドサイドで行う場合もあればプレイルームで行う場合もある。
両親がいれば一緒に巻き込んで行う。その方が親たちの理解も促進する。
検査の前にベッドサイドで行うと子どもが緊張しなくてすむ。ツールは専用の戸棚があり、病棟に保管している。
プリパレーションをどのように行うかはかなり厳しい規則がある。
誤った方法でプリパレーションを行うとひどい結果を招くことになる。
<テディベアのクリニック>
3年前から行っている、1年に1回、4〜10才児を対象としたイベントで、40人ほどの子どもたちが参加する。地元の小学校等に招待状を送って参加者を募る。定員は決めていない。
子どもたちが、自分のテディベアを病院に連れてきて、それを患者に見立てて、薬を飲ませるまねをしたり、検査や処置を受けさせたりする。実際に目が取れていたりするテディベアがあれば修理もする。
自分の身にはやられたくないが、テディベアにだったら治療を受けさせてもいいという子どもたちが多い。
外科外来が休診の週末に行い、プレイスペシャリスト全員がこのイベントに携わる。
病院を怖がっていた子どもたちが、病院に来ることを怖がらなくなったという成果がある。
テディベア・クリニックに参加した経験のある子どもたちは、その後入院という事態を迎えても、病院を怖がらない。
今年は、テディベア・クリニックの後で、学校でも「病院」を課題とした学習を1、2週間、継続してもらいたいと考えている。