オーストラリア・シドニー 
こども病院視察レポート

8月半ば、連日熱帯夜の続く東京を離れ南半球へ。
朝晩はセーターにコートが必要な冬のシドニーに

約1週間滞在する機会を得ました。

 <病院って、意外と楽しい・・・ところ?>

到着翌日から2日間、シドニー市街から車で約1時間ほど郊外にある
The Children’s Hospital at Westmead
(ウエストミードこども病院)を視察しました。

広々とした敷地に新しい建物、
「中はどんなふうになっているのかしら」と期待に胸がふくらみます。

 吹き抜けのロビーはとても明るく、入り口を入ってすぐのところに、
カラフルな遊具が配置されています。初めてここに来た子どもたちは、
きっと歓声をあげて駆け寄るにちがいありません。
このエントランスに立っただけでも、
「病院=いやなところ」というイメージが払拭されるのではないでしょうか。


きりんの親子の絵

廊下や壁には、美術館のように絵が展示されています。
ちょっとしたコーナーには、彫刻などの立体作品がさりげなく置かれています。
プロの作家によるものもあれば、子どもたちの作品もあります。
州全域の学校から応募があるという絵画コンテストに入選した作品です。
どれもが、心がほんわかとなごむような、
また不思議と元気が湧いてくるよう作品です。

様々な素材を使った、ジャンルの異なる作品群ですが、
全体として調和が保たれています。
その秘訣は、専門の美術コーディネーターが統括しているからだと分かりました。
病気の子どもたちにこそ、「いいもの」に触れて欲しいというスタンスがあるのです。


診察室や検査室もご覧の通り、壁一面に絵が描かれていて、
MRI
などいかめしい装置も良い意味で存在感がなくなってしまいます。
こんな検査室に横たわった子どもたちは「恐怖」ではなく、

水族館の中のようなMRI検査室

水族館にいるような「興奮」を覚えることでしょう。

なにせ、横にはアシカやウミガメが泳ぎ、天井には蛍光塗料で輝く
ポップな魚の群れが揺れているのですから。この病院での
MRI検査は、
ちょっとしたアクアラング体験として子どもたちの記憶に残るのでしょうね。

ここでは外来や病棟の他にも、院内学級、チャーチ、庭園、
マクドナルドハウス、付き添い家族のための宿泊棟、
スターライト・エキスプレス(院内放送スタジオ)の見学をしました。
在宅ケアに移行するにあたり、親子で宿泊しながら訓練を受けるための
専用ルームもありました。充実した施設にため息の連続です。

もちろんハード面だけでなく、医療スタッフとパラメディカルスタッフの数も
充実しています。2日間で美術コーディネーター、院内学級の先生、
日帰り手術の患者に対してプリパレーションを専門に行っているナース、
プレイスペシャリスト、ソーシャルワーカー、病院のクレーム処理担当者、
広報担当者など、多彩な方々からレクチャーを受けることができました。
お話を伺っていると、皆さんが誇りと情熱を持って働いておられることが
伝わってきます。

また、院内には多くのボランティアが出入りし、子どもたちのQOL向上に貢献しています。
その多くが定年でリタイアした方々です。通訳の方によると
「責任がともなう事はプロのスタッフが、なくてもいいけどあると助かるな、
便利だなというようなサービスはボランティアさんが担っている」のだそうです。    
売店のお菓子の出張販売や外来患者の遊び相手
、両親頻繁に来られない子どもの所に
「おばあちゃん」「おじいちゃん」として面会に来るボランティアもあるそうです。
素敵なアイディアだと思いませんか?
ボランティアは、毎週あるいは毎月きちんと決まった日に来ることになっていて、
よほどのことがない限り休まないという「忠実さ」を求められるそうです。


陽気なクラウンドクター

こちらはカラフルな衣装を身につけたとっても陽気な
クラウン・ドクターです。カートにフェイスペインティングセットや
子どもサイズのクラウン変身用ウイッグなどを乗せて、
ボランティアさんと共に外来ロビーや待合室に「ハッピー気分」を
デリバリーしていました。バルーンアートの腕前も一流でした。


☆.:*:・'゜★.:*:・'゜

以下、病院から帰宅した女の子と近所の男の子の会話でまとめてみました。
(あくまでもフィクション―会話はもちろんオージーイングリッシュのはずですが。)

Heyジェミー!(マウンテンバイクを止めて)君のほっぺのペイント、
 とってもおしゃれじゃない?
いったいどこでやってもらったんだい?」

「あら、グレッグ!これのこと?・・・
 こども病院でクラウン・ドクターに描いてもらったのよ。

 私もとっても気に入ってるの。」

「びょういん?病院って注射されちゃったりするところだろ?
 遊園地のまちがいじゃないかい?」

「あら、こども病院にはクラウンがいるものなのよ。
 それに私、ちゃんと注射もやってきたわ。ほら、これが証拠よ。

(左腕を差し出してばんそうこうを見せる)
 今日はピンクのハート柄のを選んだのよ。

 どう?スカートの色に合わせたの。」

 「へぇ〜。すごいや。・・・注射で泣かなかった?」

「プレイスペシャリストのローラと一緒に本を読んでいる間に終わっちゃったの。
  ちょっぴりチクッとしたけど、ストーリーに夢中で泣くひまなんてなかったわ。
  でもね、偉かったってみんなからほめてもらえたし、
  その後ママがロビーのカフェでフラペチーノをごちそうしてくれたの。
  ホイップクリームがたっぷり・・・
(うっとりとした表情で)
  あやうく
このほっぺたを落としそうになっちゃったわ。
  ・・・病院って、意外と楽しいところよ!」

 「そりゃ最高だったね!今度ぼくも連れてってよ。
   是非クラウンに紹介してほしいな。」

 「ふふふ・・・。考えておくわ。じゃ、Bye!

☆.:*:・'゜★.:*:・'゜

<オーストラリアに根付くチャリティー精神>

8月23日、自由時間にホテルから街の中心地に出かけるのに
地下鉄を利用しました。
電車がセントラル駅に到着し改札を出ると、なにやらどやどやと
人々が特設されたようなカウンターに向かっていきます。
好奇心でのぞき込むと、皆、次々と黄色い2
A$(=約¥150)の
リボンを買っていきます。
かわいいラッパスイセンの造花がついたリボンです。

目に入ってきたのは「The Cancer Council」という看板。
カウンターの上には、これもスイセン柄のシャツを着た
大小のクマのぬいぐるみが並べられています。 
その日は国中こぞって
「がん予防・制圧研究推進及び患者家族サポート」協会に寄付する
「スイセンの日」だったのです。そうと分かり、
私もリボンと小さいサイズのクマちゃん(7
A$=約¥500)を購入しました。

当日訪問したシュタイナー学校では、子どもたちがおやつに
チャリティーケーキを買っていました。売り上げを寄付するのだそうです。
シドニー大学キャンパス内でも、リボンとクマの売店が出ていました。
そういえば、道行く人の大半が胸にスイセンをつけているのでした。
オーストラリアの人々に根付くごく自然な
チャリティー精神に感じ入った一日となりました。

チャリティーくまちゃんとすいせんリボン

今回私が参加したのは、野村みどり教授(東京電機大学情報環境学部)を
団長とする「オーストラリア、香港のこども病院+プレイスペシャリスト
教育プログラム視察」ツアーです。
来年
222日(土)午後、東京電機大学・神田キャンパスで行われる
「第
18NPHC(こどもの病院環境&プレイセラピーネットワーク)研究会」
で視察報告が行われます。興味をお持ちの方は以下
URLをご参考ください。
http://www.nphc.sie.dendai.ac.jp/


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