Great Ormond Street Hospital School 視察レポート


Great Ormond Street Hospital School
この学校はグレイト・オーモンド・ストリート病院の中にあり、ロンドンで最も大きいホスピタルスクールである。

説明:Mrs. Mel Lewis 
   他に精神科病棟担当教師、
ICT担当ティーチングアシスタント

1. 学習環境

1)教室
メイン教室はSouthwood棟Level 2dにあり,精神病棟にも小さな教室が1つある。
メイン教室は2つに区切って使用しており、1つは5才から11才用の部屋、もう一つは12才から18才の部屋で、こちらは職員室を兼ねている。(独立した職員室は無い。)ここには精神科以外の病棟のこどもたちが登校してくる。ただし、精神科の子どももアートの授業にはここに来て一緒に活動する。
人がたくさん出入りするので、子どもが集中して勉強できないという難点がある。
教室から屋外の中庭に出られるようになっている。そこは遊びにも学習にも使用する。
 
2) ICT環境
小さなコンピュータルームがあり、ビデオカンファレンスができるようになっている。コンピュータはデスクトップ(ほとんどがMAC)とラップトップを合わせて30台ある。そのうちの17台はマイクロソフト基金による“anytime anywhere”プロジェクトによるものである。
教室の全てのPCはネットワークにつながり、インターネットにアクセスできる。インターネット回線は2年半前に導入されて、スピードは64Kである。 2003年中にブロードバンドになる予定。
フルタイム教師の一人がICT担当で、さらに大学でITを専攻したICTアシスタント(技術者)がいる。
コンピュータはどの教科においても教員の判断で必要ならば様々に活用されている。
ビデオカンファレンスを使って、博物館や子どもたちのhome school(原籍校)と結ぶなどしている。
博物館の教育課の学芸員とやりとりできる。博物館はすでに一般の学校とビデオカンファレンスをするような活動を行っている。
対学校に関して言えば、中等学校はビデオカンファレンスの環境がある場合が多いが、初等学校にはまだ整っていない。

3) 在籍者数及びスタッフの人数

1日5人から25人の生徒が教室に来る。(日によってかなりばらつきがある。)在籍者の15%はSENがある。
フルタイム教師12名、パートタイム教師4名、ティーチングアシスタント5名、オフィスアシスタント2名がスタッフとして勤務している。
そのうち、フルタイム教師1名、パートタイム教師1名、ティーチングアシスタント1名が精神科病棟担当である。
教員はメインストリームの学校で経験を積んでからこの学校に来るが、個人の意志で戻らないことが多い。
入院しているプリスクールの子どもへの対応は、プレイスペシャリストが担当している。

2. 概要、カリキュラム等


1)沿革
ホスピタルスクールは1953年開設され、1976年に文部省に認定された。
それ以前は定かでないが、76年以降に関して言えば、子どもの入院期間の長短に関係なく、二重の学籍登録で、転校しないで入院すれば即教育が受けられるようになっている。

2) カリキュラム
2週間以上入院して教育する場合、原籍校に連絡をして情報や助言を得てカリキュラムを構成する。
2週間以内であれば時間割にそった教育を行う。
5〜11才が初等教育で、12〜18才中等教育であり、9:30〜15:15(昼に1時間15分の休憩をはさむ)に授業を設定している。
教室まで登校できる体調であれば、ナショナルカリキュラムに即したバランスのとれた授業が受けられる。病状が悪いときはベッドサイドで授業をする。
午前中は文字、数字に親しむ内容の学習が主である。
春、秋、冬の3つの学期が更に半分に分かれている。(これをハーフタームという。間には1週間の休みがある。)秋の先のハーフターム(キーステージ1,2)と後のハーフターム(同3,4)で、時間割の内容が変わる。
午前中はテーマを決めた学習(たとえばアメリカを課題にするなど)やICT、午後は作業の多い授業内容になっている。
子どもの出欠の判断や送迎は病室の担当者が行い、学校側が呼びにいくようなことはしない。 

3. 精神科ユニットについて

精神科病棟の教室では9〜14才の子どもたちが学習している。精神科の子どもの入院期間は1ヶ月、1年時には2年と長期になることもある。精神科入院中の全てにLDか行動傷害等のSENがある。

精神科では違う時間割を使用している。午前中はアカデミックな内容やICT、午後がダンスやアートなどである。異なった学年の子どもたちが、同じ教室で同じ科目を学習するが、テーマは同じでも年齢に応じて難易度を変えるなど工夫している。
アートの授業は他の病棟の子どもたちとの交流の意味もかねてメイン教室で行っている。精神科の部長の方針により、アート以外の科目はメイン教室の子どもたちとは分けて教育を行われている。
3人のスタッフで他の科目を全て教えていくのは難しいと感じている。
教室には、図書、アート、コンピュータ6台、パズル、ブロック、ゲーム等の教材が用意されている。
精神科病棟内ではベッドサイド学習はしないで教室に連れてくるようにしている。     
精神科病棟は10床あるが、現在6人しか入院していない。その全てが学校で教育を受けている。
精神科の患者は元の学校に戻らないことが多く、別の学校を選んで送ることになる。
退院のプロセスを検討するミーティングを持ちプランをたてる。ホスピタルスクールの教師、元の学校の教師、ソーシャルワーカー、精神科医がミーティングに参加する。
精神科病棟から退院した場合は一般の学校に戻るが、フォローはホスピタルスクールと教育委員会が行う。新しい学校には必ず精神科担当の教員が訪問することになっている。
 精神科の問題を持つ子どもたちは増えている傾向があるかもしれない。できるだけ一般の人と触れさせて社会に帰属することを目標にしたい。コミュニケーションに問題があれば、メイン教室で学ぶ他の病棟の子どもたちと交流することが必要と考える。
 精神科の担任する教育は特に特別な訓練を受けたわけでなく、担当となってから研修を積み専門性を高めている。
精神科病棟にプレイスペシャリストはいない。放課後は精神科の看護士が子どもたちに対応している。
 
4. その他

1) 退院後のフォロー

精神科以外の生徒は特に問題なく元の学校に戻っていが、退院後すぐにもとの学校に登校せず、自宅で学習して慣らすケースもある。
最高1日1時間と上限を決めて復帰の準備する。
元の学校に登録しているサプライ(プール)ティーチャーに来てもらう場合もある。アレンジメントのイニシャティブはホスピタルスクールがもつ。
3週間ぐらいの入院ならば家に教師を派遣することもなく宿題で対応する。

2) ティーチングアシスタント
5年前 SENの必要だと考えて導入した。現在いる5人のアシスタントは大学を出ているが、教員免許は持っていない。

3) 教員の資格

ここのフルタイム教員はSENの資格は無い。1人の教員はかつてSENSに所属しており、教員にSENのトレーニングを施すことができるコーディネーターである。
 




Great Ormond Street Hospital School 
保護者向けパンフレット 翻訳・要約


運営について

この学校はロンドンCamden区の
foundation special schoolである。
学校スタッフ、地方自治体、病院、保護者、
Camden評議会の代表者を含む管理機関によって運営されている。

学校スタッフ
教師、アシスタントティーチャー、管理オフィサー、事務アシスタント、コンピュータ技術者、大学生、ボランティアスタッフ
スタッフが最新の教育情勢に対応できるように、継続的なトレーニングプログラムが施行されている。

学校目標
・子どもたちが治療中でも学習を継続することにより、学校生活への支障を最小限にとどめる。
・年齢や個人のニーズに合った豊かで楽しい経験を提供し、学校への不安を軽減する。
・教育を子どもの全人的な扱いの一部とし、学校を病院施設の必須のものとする。

教育の場所
Great Ormond Street Hospitalでは
・ 病棟内:ベッドサイド、小室、プレイルーム
・ メイン教室:サウスウッド棟
・ 精神科病棟内教室 
 University College London Hospital では
・ ギャラクシー病棟
・ 青年病棟

対象者
全ての学齢入院者と2才から19才のスペシャルエデュケーションニードのステイトメントを有する生徒を対象としている。ただし、優先権は長期入院児や入退院を繰り返す生徒、受験を控えた生徒に与えられる。
また長期入院児の兄弟で地元の学校に通えない子どもも対象にしている。
教育期間は様々な要素によってそれぞれの生徒によっても異なる。
・心理的、外科的要因を含む医療的状況
・入院期間
・検査要件を含むあらゆるスペシャルエデュケーションニーズ
・教師の有効性
・病棟のタイプ

たとえばMildred Creak 病棟に入院している生徒は教室でフルタイムの授業を受けることができる。グレイトオーモンドストリート病院のSouthwoodビルのメイン教室に通学可能な生徒もフルタイムのスクーリングができる。
                                
ロンドン大学病院の生徒は主に1つの解放病棟に集められ、教師が授業をすることができる。

学習内容
ナショナルカリキュラムから全ての達成度レベルに応じ、個々人のニーズと学習意欲に合致するよう計画されたナショナルカリキュラムから提供している。
初等教育レベルと中等教育レベルの教科ほとんどの分野を提供することができる。
英語、数学、ICT、社会健康教育、市民教育、デザイン、技術、フランス語、ドイツ語、科学、芸術、歴史、地理、音楽、体育、ダンス

スペシャルエデュケーションニーズへの対応
スペシャルエデュケーションニーズのある子どもたちには他の生徒と同様に等しい配慮事項に加え
スペシャルニーズ・ティームによって特別なサポートを受けることができる。

時間割
GOSのメイン教室では毎日の読み書きと数のレッスンを含む初等中等教育の時間割が行われている。
長期入院や入退院を繰り返す生徒に対しては、在籍期間を通じて広い範囲で学習経験を持つようにカリキュラムを組んでいる。

中等教育の生徒には主要科目である英語、数学、ICTあるいは試験科目に重きを置いた時間割を基本にしている。

モニター体制

我々は子どもが適切に教育されているかを慎重に確立された計画、記録、査定システムを持っている。
生徒は個人記録を持ち、教師がそれぞれの子どもごとに進歩を記録シートに記入している。

長期在籍児はさらに彼らの個人的な学習ニーズに対処するIEPを所持している。これらの記録や学期ごとのレポートは、常に連絡を継続している地元校への重要な情報となっている。

リソース

・魅力あるよく準備された教室
・高度なICT環境(インターネットへのアクセス、様々な教育CD−ROM)
・広範囲、様々な年齢、言語に対応した本、VTR、テープ、CD
・全てのナショナルカリキュラム教科のカリキュラム教材
・様々な楽器や機器
・スペシャルエデュケーションニーズのある子どもたちのための広範囲にわたる教材
・ 校外学習のためのマイクロバス

誰にでも平等な機会を
病院にいる全ての子ども、青年に対し、性別、能力、民族、社会階層に関係なく、カリキュラムと学校施設を使用する平等な機会を提供するように委託されている。
ホスピタルスクールのカリキュラムと施設はイギリスの多民族(multi−cultural 
nature)社会を反映している。
我々はいかなる差別、人種差別主義者の行動に対しても反対の立場である。生徒たちが彼ら自身また他の文化的財産への理解を発展できるように我々は積極的に探求している。


コミュニティーとの連携を
学校は病院の総合学習分野組織の中心的役割を担っている。教師はホスピタルプレイスペシャリストや医療チームと共に、子どもたちに対する最善の全体的視野からのトリートメントを提供している。
我々は多くの外部団体とも提携を発展させてきた。
ロンドンシンフォニーオーケストラ、ロンドンシティ交響楽団、国立美術館、科学博物館、グリーンキャンドルダンスカンパニーなどである。例年のオープンデーには、クリスマスプロダクションに参加している地域の小学校と一緒に活動している。病院のメンバーと共に、より広い共同体のメンバーを歓迎している。
情報技術の進歩により、eメイル、ビデオカンファレンス、オンラインコミュニティー、リソースが現実のものになり、現在では近隣あるいは遠方の学校や博物館と日常的なつながりを持つようになった。

保護者支援
例年のオープンデーには長期や入退院を繰り返す生徒の保護者にはバックアップ体制を充実させている。
地元校の教員が直接ホスピタルスクールの教員と連絡を取り合って情報交換し最適な教育を提供できることを伝える。スペシャルエデュケーションニーズのある子どもに対しても関連機関と連携していることを伝え「必要を感じたらどうぞご連絡ください」とアピールしている。

アンケートにより、生徒、保護者、病棟スタッフ、地元校からホスピタルスクールに対する意見・要望を募っている。しかしながら、生じた問題は校長と直接話し合うことによって解決することになる。それでも解決に至らない場合は学校管理委員長?に申告することができる。

休業期間中の活動
学期間の休業期間と夏期休業の開始2週間、通常より少ないスタッフでオープンしている。この間は様々なイベントが催される。長期入院の生徒はこの期間中に学業の遅れを取り戻すことも可能である。

                   

(翻訳:赫多 久美子)