コミュニケーションについて
〜病院内学級におけるICT活用の実際からコミュニケーションを考える〜
【communication】人間が互いに意思・感情・思考を伝達し合うこと。
言語・文字その他視覚・聴覚に訴える身振り・表情・声などの手段によって行う。
<横浜の院内学級との交流の経緯>
13年1月末、全国の病気療養児に関わる教員や医療関係者が多数参加しているメーリングリスト「brjp」に、
横浜市立二つ橋養護学校・横浜市立大学医学部付属病院院内学級のK教諭から
同学級にTV会議システム(フェニックス2000HX)が設置されたという書き込みがあった。
2月、都内で行われた研究会でK教諭とお会いした際、このシステムを利用して交流や
合同授業を行いたいと申し出たところ、「是非、実現したいですね」という返事をいただいた。
その後横浜側のシステムが安定するのを待ち、担当教員同士のメールのやりとりや
TV電話でのミーティングを重ね、子どもたち同士の交流や合同授業が今年度になって実現した。
共に病院内学級という環境であり、画面の向こうで、車いすに乗っていても、
パジャマ姿や帽子をかぶっていても、ボトルの下がった点滴台が映っていても、
日常的に見慣れているものなので、双方の子どもたちに違和感は無い。
それは、また自分の姿が「特別」に見られることもないという安心感につながる。
一般的に子どもの会話では使われないであろう「採血」「点滴」「外泊」というような言葉も、
入院児ならば説明不要の共通語である。「入院中」という共通の立場は、
それだけで連帯感と親近感を子どもたちに与えているようだ。
お互いを思いやり、分かり合える、無理のない自然な交流となった。
<TV電話による交流の展望>
児童の前籍校との交流は、メールベースで行われた例はいくつかあるが、
TV電話の環境が整っている相手校はなく、TV電話の交流事例は無かった。
今後、政府の方針通り、ブロードバンドが各学校の各教室にまで届くようになれば、
画像と音声カメラの前に座り、画面の向こうの「元気な」同級生と気後れせずに交流するためには、
様々な配慮が必要である。入院中の子どもを、これまでと同じように
「仲間」として受け入れることのできる態勢が整った「学級経営」がなされているかどうかが問題となる。
入院中の子どもと「会いたい」「励ましたい」「仲間であり続けたい」という「想い」が
担任とクラス全体にあってこそ、教室と病室がつながることに意義がある。
学校現場の情報化が進み、学級担任の情報機器操作スキルのレベルが上がったとしても、
クラスの「想い」が無ければ、このようなシチュエーションの交流は実現しないと思われる。
コミュニケーション成立の前提:つながりたい
コミュニケーション継続の前提:つながっていたい
コミュニケーション発展の前提:つなぎたい