宮城県立こども病院 見学レポート
*このレポートは、難病のこども支援全国ネットワーク発行「がんばれ!83号」に掲載されたものです。
皆さま、こんにちは!『がんばれ』編集委員をさせていただいている赫多(かくた)です。
昨年の秋だったでしょうか、カツ丼やらわかめラーメンやらを食べながらの編集会議の席で、「オープンした宮城県立こども病院の特集記事なんてどうですか?」と発言したところ、「いいね!」と満場一致の賛同をいただきました。「でも、誰が書くの?」っと、皆さんの視線が私に・・・。「えっ?でも私、修士論文出すまで無理ですよぉ!!」「じゃぁ、論文出したら取材に行ってもらおう。なに、なに?1月の末・・・ちょうどキャンプの実行委員会もしなきゃならないし、キャンプの仲間で『開院祝賀会』もやろうと思ってたんだ。」と、理事の小林さん。こうして、理事のお供をしながらの今回の取材が決まっていったのです。
では、これから私が皆さまを「宮城県立こども病院」の誌上ツアーのご案内をさせていただきます。
<駅から歩けます!>
2004年1月29日の午後、JR仙台駅から仙山線に乗り換えて「陸前落合駅」に到着。そこここに雪が残る歩道を歩いていくと、見えてきました!想像していたよりも、こぢんまりとした、でも素敵な建物です。
お子さんを連れての通院は、自家用車を使う方が多いとは思いますが、JRの駅から徒歩10分という立地条件はいいですねぇ。もちろん、駐車場は広々としています。(その分、除雪が大変だそうですが。)
入り口の表示が、とってもいい感じ。こどもの背丈を意識してのものでしょうか。写真をカラーでお見せできないのが残念です。「こども」が、青、黄色、赤と1字ずつ違う色なんですよ。クレヨンで書かれているようなかわいい文字です。シンボルマークは、ふた葉の芽ばえたおうちの中に、おとなに守られている男の子と女の子・・・なるほど、「元気のでるファミリーホスピタル」なんですね。
<さあ、中に入ってみましょう!>
玄関のドアは二重になっています。奥のドアの枠は木でできています。あたたかな印象の木目の建材があちこちに取り入れられていました。(ここで、問題です。この後ろ姿の女性は誰でしょう。ヒント:毎年、七夕キャンプで大活躍のママさん実行委員!)
自動ドアの向こう、正面には『おおきなかぶ』の大きなレリーフです。もちろん、さわってOKです。大きなまあるいかぶ・・・きっとここに来たこどもたちは、必ず1度はさわっていることでしょう。目の不自由なこどもたちも楽しめますね。「おばあさんがおじいさんをひっぱって、おじいさんがかぶをひっぱって・・・うんとこしょ、どっこいしょ!」レリーフにさわりながら、お母さんやお父さんがお話をしてくれたら、ここが病院だなんて、こどもたちは、すっかり忘れてしまっていることでしょう。
総合案内です。頭上に大きなディスプレイがあって、情報が分かりやすく表示されています。カラフルなコスチュームのスタッフの方がとてもにこやかです。
こちらの病院では、スタッフは白衣を着ません。コスチューム委員会で選定された6種類のユニフォームの中から、各自が好きなものを選んで着用しているそうです。
1階のロビーは吹き抜けになっています。明るくって広々していて、そしてこどもたちが楽しめるさまざまな工夫がいっぱいです。あっちには、大きな郵便ポストのすべり台があります。こっちには、おかしのいえのエレベーターが行ったり来たりするんですよ。
エレベーターの天井には、無数のビー玉が埋め込まれていて、色とりどりにキラキラ光っています。乗り込んだ一同は、上を見上げて、思わず「オーッ!!」っと歓声をあげたのでした。
ロビーの一角に、タイル張りの小さな小川が流れています。お水が流れる音が気持ちをなごませます。おもちゃのお船を浮かべて遊ぶこともできそうです。
外来の受付は、船のイメージです。この雰囲気、いいですね。これから船に乗って航海に出発!
外来の診察室のドアには、海の生き物のイラストの「一部」が描かれています。これは、なんだろうなぁ〜っとドアを開けると、「全体」が分かるようなしかけです。診察室に入るのを「楽しみ」にさせてしまうマジック・・・こどもの心理をしっかりとらえてます。う〜ん、やりますねぇ。
院内の標識のイラスト・・・とってもかわいい!特にこの「車いすおきば」の絵、最高に気に入りました。「車いすはここにおいてね。ルン、ルン♪♪」っていう声が聞こえてくる感じ。
<病棟はどうなっているのでしょうか。>
これからオープンする病棟の中を見せていただきました。4Fは、オレンジ色がテーマカラーになっています。中央は、スタッフのための空間。こちらの病院では、「ナースステーション」とは呼ばず、「スタッフステーション」と言うそうです。「ナース以外にもさまざまな職種のスタッフが出入りしますからね。」というのが理由だそうです。なるほど・・・確かにそうですね。
ここは、少し年代の上のこどもたちのための病棟だそうです。「ティーンズルーム」という部屋が用意されています。小さいこどもたち用のプレイルームとは違って、中学生ぐらいのこどもたちが、好きな音楽を楽しんだり、友だちとゲームをしたり、おしゃべりしたりするための空間です。ちょっと、おしゃれなカフェのたたずまいでした。素敵ですね。
これは、何だと思いますか? 実は、各部屋の入り口にはめ込まれているステンドグラスです。部屋ごとに鳥だったり、花だったりとデザインが違います。うっとりしてしまう美しさです。実は、このステンドグラスは、毎年七夕キャンプでボランティアをしてくださっている「ふれあいステンドグラス村」の皆さんの作品なんです。1枚、1枚に「はやく、元気になってね。」という、病気のこども達へのメッセージが込められているようです。
では、病室の中に入ってみましょう。こちらは、個室。フローリングの床、白木素材の床頭台、作りつけの棚も木目です。左側に置いてあるのは、付き添いようのベッド。患者さん用のベッドは、これから入るようです。それにしても、これまでの病室のイメージとずいぶん違いますよね。なんといっても、白っぽくないのがいいです。それに、外光がたっぷり入って、明るいのです。4人部屋でも、カーテンを引いても、各ベッドが窓に面するように間取りが工夫されています。
ドアを入ってすぐの洗面台。「あら、お部屋でシャンプーができるのね。」ホントだ・・・便利ですよね。
お部屋のトイレは、車いすのままですっと入れます。
内装は、使い勝手を考えて、何度も何度も設計をし直したそうです。
ここでも見つけました!かわいいイラスト!おトイレに行くにも、これを見るたび笑顔になってしまいますね。
<院長さん きいて!>
これは、いわゆる「ご意見箱」です。他の病院では、小児病院といっても、保護者向けに設置していると記憶していますが、ここでは「院長さん きいて!」という用紙が用意されています。これなら、こども達だって、堂々と意見を書いて投書できますね。
<家族をしっかりサポート!>
家族支援室には、こどもの病気や福祉制度に関する本や資料が整理され置かれています。インターネットの端末もありました。心配なこと、困っていることをこちらのスタッフに相談することができます。病気のこどもの家族の心強い味方です。
<あとは、人です!>
「これだけいい建物ができて・・・あとは、人ですよ、ヒト!ここに働くスタッフが、いい病院を創り上げていかなくては・・・。」
今回、院内を案内してくださった副院長先生の言葉です。その笑顔と共にとても印象に残りました。
「患者さんとその家族を大切にする」という心遣いにあふれた医療が、この宮城県立こども病院で実践され、日本中の病院にその理念が波及していってほしいなぁと心から願います。
「きょうのたんとうかんごし」さんのパネル
この他にも、「こども図書館」「リハビリ室」「院内学級」「祈りの部屋」「屋上庭園」等もっとたくさんご紹介したいのですが、紙面に限りがあり残念です。
堺副院長先生はじめ、宮城県立こども病院の素晴らしいスタッフの皆さんにお会いしたい方は、「七夕キャンプがんばれ共和国」に是非ご参加ください!!