2000/9/20
教育勅語全文
朕惟ふに
我が皇祖皇宗國を肇むること宏遠に徳を樹つること深厚なり
我が臣民克く忠に克く孝に億兆心を一にして世世厥の美を濟せるは此れ我が國軆の
精華にして教育の淵源亦實に此に存す爾臣民父母に孝に兄弟に友に夫婦相和し朋友相
信じ恭儉己れを持し博愛衆に及ぼし學を修め業を習ひ以て智能を啓發し徳器を成就し
進て公益を廣の世務を開き常に國憲を重じ國法に遵ひ一旦緩急あれば義勇公に奉じ以
て天壌無窮の皇運を扶翼すべし
是の如きは獨り朕が忠良の臣民たるのみならず又以て爾祖先の遺風を顕彰するに足
らん
斯の道は實に我が皇祖皇宗の遺訓にして子孫臣民の倶に遵守すべき所之を古今に通
じて謬らず之を中外に施して悖らず
朕爾臣民と倶に挙挙服膺して咸其徳を一にせんことを庶幾ふ
明治二十三年十月三十日
御名御璽
大日本国憲法について
大日本帝国憲法の中で、特に天皇に関わると私が思う部分を抜き出しました。
【 】 は私が挿入しました。注目してもらいたい部分です。
( )は私の説明です。
私は法律の勉強はしたことがないので、専門的知識を持った人が見れば間違いがあるかも
しれません。そこは自由に指摘してください。訂正いたします。
憲法発布勅語 ・・・国家統治ノ大権ハ朕カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ伝フル所ナリ【朕及朕カ子
孫ハ】将来此ノ憲法ノ条章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲ愆ラサルヘシ・・・
(天皇が憲法に従う必要があることを書いています。)
・・・将来若此ノ憲法ノ或ル条章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ【朕及朕
カ継統ノ子孫ハ発議ノ権ヲ執リ之ヲ議会ニ付シ議会ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ
之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ】
(憲法改正の是非を論じる事ができるのは国会だけ。天皇は発議の権利しかない)
朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ為ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及将来ノ臣民
ハ此ノ憲法ニ対シ永遠ニ従順ノ義務ヲ負フヘシ
(憲法を施行する責任は政府にある)
第1章 天皇
第1条
大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第2条
皇位ハ【皇室典範ノ定ムル所ニ依リ】皇男子孫之ヲ継承ス
(皇位継承も,法律の規定するところとなった)
第3条
天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス (天皇は政治の責任を取らないし,取れない)
第4条
天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ【此ノ憲法ノ条規ニ依リ】之ヲ行フ
(制限君主制)
第5条
天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ (帝国議会の議決がなければ,立法ができない)
第6条
天皇ハ法律ヲ【裁可シ】其ノ公布及執行ヲ命ス
(法律を制定し,ではない。日本国憲法に受け継がれている)
第7条
天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス
(日本国憲法に受け継がれている)
第8条
@ 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉
会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス
A 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ
政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ
(これが少し曲者,緊急時の天皇大権)
第9条
天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ
必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ【命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス
】 (つまり,法的手続きを経ない天皇の個人的な発言には,公的な効力は一切ない)
第10条
天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ
法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル
第11条
天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス (これが統帥権)
第12条
天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム (しかし,その予算を議決するのは国会である,天皇は承認するだけ)
第13条
天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス
第14条
@ 天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
A 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第15条
天皇ハ爵位勲章及其ノ他ノ栄典ヲ授与ス (日本国憲法に受け継がれている)
第16条
天皇ハ大赦特赦減刑及復権ヲ命ス (日本国憲法に受け継がれている)
第17条
@ 摂政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
A 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ
第2章 臣民権利義務
第20条
兵役ノ義務
第21条
従ヒ納税ノ義務
第22条
居住及移転ノ自由
第23条
日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ
第24条
日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルヽコトナシ
第25条
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラ
レ及捜索セラルヽコトナシ
第26条
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第27条
@ 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルヽコトナシ
A 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第28条
日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第29条
言論著作印行集会及結社ノ自由
第30条
請願権 第31条 本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナ
シ
第32条
本章ニ掲ケタル条規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴触セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス
(全てに,法律の定めるところにより,というただし書きがありますが,これは実は
現在でも同じです。これらの権利は,天皇大権が発動するとき以外は守られます。)
第3章 帝国議会
第37条
【凡テ法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス 】
(立法権は完全に議会が握っています)
第49条
両議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得
第4章 国務大臣及枢密顧問
第55条
@ 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ【其ノ責ニ任ス】
(国政の責任は国務大臣が負います)
A 凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス
(国務大臣の承認がなければ天皇は勅令を発することができません)
第56条
枢密顧問ハ枢密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ応ヘ重要ノ国務ヲ審議ス
(問題は,内閣総理大臣の規定がないことで、総理大臣は他の大臣と同列になってい
ます。そのためリーダーシップを発揮できず、他の大臣の主張に引きずられてしまう
ことがしばしばでした)
第5章 司法
第57条
@ 司法権ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
(司法を行うのもやはり裁判所です)
第6章 会計
第62条
@ 新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ変更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
B 国債ヲ起シ及予算ニ定メタルモノヲ除ク外国庫ノ負担トナルヘキ契約ヲ為スハ
【帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ】
第64条
@ 国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
A 予算ノ款項ニ超過シ又ハ予算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝国議会ノ承諾
ヲ求ムルヲ要ス (臨戦費はこれに当ります。従って,臨戦費を可決した議会にも戦争の責任はありま
す)
第66条
皇室経費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年国庫ヨリ之ヲ支出シ将来【増額ヲ要スル場合ヲ除ク
外】帝国議会ノ協賛ヲ要セス (これは日本国憲法に受け継がれている)
第67条
憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ属ス
ル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝国議会之ヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得ス
(統帥権=天皇大権と無理矢理に解釈すれば、軍事費に国会は手をつけてはいけない
ことになってしまいます。問題のある条文です。)
第71条
帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ予算ヲ
施行スヘシ (予算が否決された場合,前年の予算が施行されます。従って,戦時費が否決されれ
ば戦争はできません。日清・日露戦争のときに軍と政府はこれを恐れました。)
第7章 補則
第73条
@ 将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議
ニ付スヘシ
A 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員3分ノ2以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開
クコトヲ得ス出席議員3分ノ2以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ
得ス
第74条
@ 皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス
A 皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ条規ヲ変更スルコトヲ得ス
第75条
憲法及皇室典範ハ摂政ヲ置クノ間之ヲ変更スルコトヲ得ス
第76条
@ 法律規則命令又ハ何等ノ名称ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法
令ハ総テ遵由ノ効力ヲ有ス
A 歳出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ総テ第67条ノ例ニ依ル
これを見ると、大日本帝国憲法にいう「天皇」とは、むしろ国家とでもいうべきもの
で、国家のやるべきことを天皇の名において行うと規定していることがわかります。
その「国家」も国会、政府(政党)、(官僚)、軍、枢密院、(元老)(カッコ内は
憲法に規定はない存在)などいろいろな勢力が張り合っていて、決して国政を一手に
握っていた存在ではありませんでした。むしろ大日本帝国憲法は最高権力者を天
皇とするあまり国政をまとめあげるリーダーがいなくなってしまい、戦前の日本は
国政の決定が混乱しがちでした。 軍部はこの混乱しがちな国家の意思決定を一手に握ることによって、彼らの言うとこ
ろの「非常時」を乗りきろうとしたのですが、このとき天皇はむしろないがしろにされ
ます。