摺り寄せた鼻先の冷たさに、下村は擽ったそうに目を細めて肩を竦めた。 それがなんだか可愛い素振りで、坂井はいっそこのまま朝など来なければ、といつも思う。 頬を寄せた下村の首が、朝方の空気の冷たさに少し染まって、寒そうなうなじまでもが伸ばした指先に冷たく凍えた。 寄り添うように毛布に包まって、それでも自分より随分冷たい体が気に入らなくて、強く引き寄せる手を背中に這わ す。特にそれに逆らう様子もなく、下村は猫のように首を竦めてやり過ごす。 そんな風な触れあいを、見方によっては幼いような仕種さえ、坂井にとっては何よりも胸をざわざわと波立たせた。 ただ単純に、それを情愛と取っていいのか、それともただの本能のなせる業なのか。正直なところよく分からなかった けれど、それでもこんな風な触れ合いを、見方によっては幼いような仕種さえ、坂井にとってはあまねく全ての愛しい言 葉を捧げて余りあるのに他ならないと思うのだった。
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