組織学的分類

VI.腫瘍様病変 Tumor-like lesions

A. 乳管拡張症 Duct ectasia
 間質の線維化による乳管の圧迫狭窄ないしは閉塞の結果、乳管内分泌物の貯留により乳管が拡張したものである。普通多くの乳管に多発するが、一つの乳管が大きくなることもある。拡張した乳管の内容物は脂質の豊富な濃縮物で、脱落崩壊した細胞成分を含む。これらの内容が管外に漏出すると乳管周囲炎(periductal mastitis)や形質細胞乳腺炎(plasma cell mastitis)を起こす。

B. 炎症性偽腫瘍 Inflammatory pseudotumor
 種々の病変を含むが、最も多いものは外傷性脂肪壊死(traumatic fat necrosis)で、黄色肉芽腫様反応を示す腫瘤を形成する。ほかに乳房形成術に使用する各種異物に対する異物肉芽腫(silicon granulomaなど)や手術によるタルク、縫合糸などに対する肉芽腫などがある。

C. 過誤腫 Hamartoma
 乳房内に周囲との境界鮮明な被膜を有する腫瘍を作る。乳房の組織成分と同一かあるいは一部が欠損した組織からなり、しかも各組織成分の割合が著しく正常と異なるものである。腺脂肪腫(adenolipoma)はその代表的なものであり、一見脂肪腫様であるが、中に乳腺組織と同様な成分を有する。

D. 女性化乳房症 Gynecomastia
 男子乳腺の肥大で、組織学的には浮腫状の線維性間質に囲まれた大小種々の管腔をもつ乳管様構造がみられる。多くの場合、乳腺小葉は存在しない。

E. 副乳 Accessory mammary gland
 本来の乳房以外の胸壁、腋窩などに皮下腫瘤を作る。組織学的には年齢ないし性周期性相当の乳腺組織と類似する。乳頭および乳輪を有するものとこれらを欠くものとがあり、腺組織の構成要素にも種々の割合のものがみられる。

F. その他 Others