乳腺の診断

腫瘍マーカー

 悪性腫瘍の進行を知る目安として、血液などから測定する物質を腫瘍マーカーと言います。原発腫瘍の臓器、組織型によって、増えるマーカーは異なります。

 乳癌の腫瘍マーカーで主なものは、
       CEA, CA15-3, NCC-ST439, BCA225, TPA です。

  CEA : carcinoembryonic antigen (0.0〜5.0 ng/ml)
 腺癌で主に産生される物質で、分子量約18万の糖タンパクです。消化器癌、肺癌、甲状腺髄様癌、乳癌、胚細胞腫瘍など局所再発、肝転移で高率に陽性化する。
  CA15-3 : carbohydrate antigen 15-3 (0〜27 U/ml)
 human milk-fat globule membraneを免疫原とするモノクロナール抗体115D8と、モノクロナール抗体DF3とを併用することで測定される乳癌関連抗原である。115D8は癌に対する感度が高く、DF3は乳癌に対する特異性が高いという特徴があり、これら2つを組み合わせることで乳癌の有用なマーカーとなっている。現在では乳癌および卵巣癌のマーカーとして用いられているが、早期診断には不適で、治療評価、経過のモニターに適している。なお反応性の違いからCEAとの併用は陽性率を高めるのに有用である。
  NCC-ST439 : national cancer center-ST439 (0.0〜7.0 U/ml)
 ヒト胃癌細胞株St-4を免疫原とするモノクローナル抗体により認識される末端にシアル酸残基を有するムチン型糖蛋白で、胃癌をはじめとする各種癌組織に高率に発現し、癌患者血清中に出現する。乳癌では腫瘍マーカーに用いられているErbB-2タンパクと逆相関し、両者の併用により再発乳癌の診断における陽性率の向上が期待される。
 40歳以下の若年女性の場合には正常でも20〜30 U/ml程度の高値を示す症例もある。
  BCA225 : breast cancer antigen-225 (<=160 U/ml)
 ヒト乳癌株T47Dの培養上清中のウイルス様粒子分画を免疫原として得られた2種類のモノクローナル抗体CU18とCU46の組み合わせにより測定される乳癌の腫瘍マーカーである。抗体の認識する抗原は225kDa, 250kDaで、ムチン型の糖蛋白であると推定される。
  TPA : tissue polypeptide antigen (0〜70 U/l)
 細胞構造蛋白であるサイトケラチンの前駆物質もしくは関連物質と考えられている。臓器特異性は認められない。
  IAP : immunosuppressive acidic protein (<500μg/ml)
 癌患者の腹水や血清中に見いだされた分子量約5万の糖蛋白で、α1-酸性糖蛋白の一種である。IAPの上昇は、癌患者の免疫機能の低下の原因となっている。IAP値は癌の進達度、腫瘤の大きさ、転移とよく相関する。また治療効果、予後ともよく相関する。

 骨転移を示すマーカーは、
  ICTP : serum carboxyterminal telopeptide of type I collagen
 主に骨芽細胞で産生されるI型コラーゲンのC末端側のテロペプチド(ICTP)は、骨ではピリジノリンで架橋されているが、骨細胞の崩壊に際して切断され有利の型で血中に出現する。骨吸収を反映するマーカーであり、前立腺癌を含む癌の骨転移診断に有効とされる。乳癌ではICTPの増加が骨転移発見に先行する。
   TRACP : tartrate resistant acid phosphatase
   ALP : total alkaline phosphatase
   NTx : urinary type I collagen cross-linked N-telopeptides