〔概要・問題点〕 ふだん野鳥はガラスを避けていますが、これは汚れや反射によって「何かがある」と警戒しているためと思われます。そのため、何らかの条件でガラスが見えにくくなると、「何も無い」と勘違いして衝突することがあります。 このガラス衝突事故は、施設によっては「よくある」事故です。ただ「たかが野鳥がぶつかっただけ」と思われるのか、あまり問題にされず、また調査・研究もほとんどありません。 しかし毎年、多くの施設で多数の命を奪っていることは確実です。 |
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様々な野鳥が事故に遭っていますが、筆者はフクロウ、キジが激突死したのを見たこともあります。これだけの大型の野鳥でも「ガラスは避けられない」のです。 これまでに得られた事故情報から、次のような傾向を感じています。
春:渡りの時期ですが、あまり事故が多いようには感じられません。これは幼鳥がおらず、全体の個体数が秋より少ないこと、また春に渡来する個体は、前年の秋に無事渡った経験があるからかもしれません。 夏:親鳥・幼鳥ともに、森林の安全な場所にいるためか、事故はあまり見られません。 秋:最も事故が多発します。まず幼鳥が増えたことから、全体の羽数が増加しています。さらに渡りの季節(留鳥でも幼鳥は分散するため移動を行います)であり、経験不足の個体も大きく移動する危険な時期になります。 冬:地上近くで採餌する種が事故に遭います。この習性により最も事故が多いのはシロハラです。またオオタカなどに追われた 小鳥類が激突する事故もあります。 |
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詳細なデータを取ったわけではありませんが、筆者の経験では次の3パターンでの事故が多いようです。@、Aは「明るさ」が影響してガラスが「見えなくなる」ケースです。そのため、日の出直後に事故が集中します。一方、Bは「見えるけれど避けられない」ケースで、日中でも事故が発生します。 なお、いずれのケースでも、地上近くから大きなガラスが立ち上がっているほど危険度が増大するようです。
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大きな対策の方向は、次の二つです。
モデル@、Aは、第一に「ガラスが見えなくなる」という問題がありますので、対策Aが有効です。これにはガラスにシール(専用のものも販売されています)を貼る方法のほか、ワシタカ類のシルエット・図柄の紙を貼るだけでも効果があるといわれています(鳥取県の米子水鳥公園では、自作の紙型をガラスに貼っています)。 モデルBでは、「気づいても避けられない」とことが問題です。野鳥の相当なスピードで飛び立ちますので、筆者の経験では、樹木とガラスの間が3m程度あっても衝突するようです。ですから対策Bの抜本的な方法は、その最も近い樹木を無くしてしまうことです。(前述の山上施設は@・A・Bが複合した最悪のケースでしたが、幸か不幸か最もガラスに近い樹木が枯死し、衝突事故は激減しました)。ただ多くの環境では伐採まではできないでしょうから、特に晩夏から秋はこまめに刈り込み、見通しをよくすることが良いと思われます。あわせて対策Aを実施すれば、事故は軽減できると思います。 |
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事故が起きても、茂みに落ちたり、野良猫等に食われて、「事故があった」ということすら気づいていない場合もあります。 またガラス衝突事故で死んだ野鳥を見つけても、「かわいそう」と埋葬はしても、その対策を行うことはあまりありません。 しかしこの事故は、人間が原因であり、対策をとることが可能です。 今回3つのモデルを示しましたが、特にこうした環境が多いのは「山間部や林に隣接する、地上近くから大きなガラスがある施設」― つまり、学校や商業施設です。ですから、もし皆さんの身近の施設でこうした事故を聞いた場合、上記を参考に対策をとるよう勧めていただければ幸いです。 また、データがあればより細かな分析、また新たな対策をとることも可能と思われます。ぜひ事故が起きた場合、その状況をお知らせください。 |
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