傷病鳥獣保護体制の問題 |
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〔概要・問題点〕 香川県では、長く傷病鳥獣は栗林動物園が受け入れてきました。 しかし同園での傷病鳥獣の飼養には問題が多く、本会は県立の「鳥獣保護センター」の設立を求めています。 そして、恐れていたとおり同園が閉鎖。県下の傷病鳥獣の行き先がなくなりました。県はここに至って、県立の「傷病鳥獣保護センター」の設立を検討しますが、平成16年3月、突然の方向転換。民間企業への委託継続を決定します。 野生動物は、県民全員の財産です。しかし、香川県では傷病鳥獣保護体制は全く改善されません。 子供たちが傷ついた動物を見つけたとき、「あそこへ預けたらきちんと治してくれるよ」と言うことができない。 このような状況にある県が、果たして環境立県などできるのでしょうか。 |
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〔経緯〕 ●2002年9月 新聞報道で、県の傷病鳥獣保護事業を受託している栗林動物園が閉園することが明らかに。これによって、傷病鳥獣の受け入れ先、また現在治療している傷病鳥獣の行方が全くの白紙に。香川県は10年前から「鳥獣保護センター」を検討する「計画」だったにも関わらず、何もせず長年放置していた。 (この後、県立の傷病鳥獣保護センター(総合的な鳥獣保護センターではない)を作るという方針が明らかになる。) ●2003年3月 新聞報道で、県が「繋ぎ」だった民間企業への傷病鳥獣保護事業の委託を正式な体制とし、県立施設は作らないことにしたことが判明。 この時点では、ニューレオマワールド内の「野鳥園」で傷病鳥を飼育することになっていた(県議会で知事が明言)。 ●2003年3月 香川の野鳥を守る会、○県立のセンターの設置と○「野鳥園」の中止を要望。あわせて、現状について質問書を提出。 「野鳥園」での傷病鳥の飼養・展示はしないと県が回答。 ●2003年3月 県から回答届く。 |
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〔香川の野鳥を守る会の主張・方針〕 ★香川県の自然・野生動植物保護の推進のため、県立の「鳥獣保護センター」を設立すべきである。 ★傷病鳥獣は県民の共通財産であることから、県立の「鳥獣保護センター」で保護するべきである。 横流しや2次感染の恐れがある民間企業への委託は不適切。また、民間企業が倒産した場合、再び同じ問題が発生する。 |
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〔INDEX〕 ●栗林動物園 閉園 −香川県の傷病鳥獣保護体制が崩壊−(2002年9月) ●傷病鳥獣保護センターの建設中止 −本会、香川県へ要望書を提出−(2004年3月) ●香川県から回答届く −「まず民間企業への委託ありき」−(2004年3月) |
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●栗林動物園 閉園 −香川県の傷病鳥獣保護体制が崩壊−(2002年9月) 高松市の栗林動物園が、9月末で閉園することが明らかになりました(9月12日付四国新聞)。 報道では、来年9月末までに動物の移転・建物取り壊しの上、県に土地を返還する予定のようです。最大の焦点は「現在飼育されている動物の引き取り先」とのことですが、実は野鳥保護の立場からは、「今後の傷病鳥獣の受け入れ先の確保」という非常に大きな問題があります。 ★指摘し続けていた「傷病鳥獣問題」 現在香川県では、傷病鳥獣は県の指定する2箇所の傷病鳥獣収容施設、3名の傷病鳥獣保護収容者が保護することになっています(第9次鳥獣保護事業計画)。しかし実際は、県下の傷病鳥獣のほぼ全てが栗林動物園に収容されています。 本来、傷病鳥獣は公立の「鳥獣保護センター」で保護すべきであり、環境省も「傷病鳥獣の保護等鳥獣保護思想の普及啓発及び野生鳥獣に関する各種調査研究や保護管理の拠点とすることを目的として」鳥獣保護センターを設けるべき、という基準を示しています(第9次鳥獣計画の基準)。 そこで本会を設立する以前から、私たちは下記の理由などから「一刻も早く『鳥獣保護センター』を設立すべきだ」と県へ提言してきました。
しかし香川県は、この問題を真剣に考えませんでした。 ★今度こそ県立の「鳥獣保護センター」の設立を! |
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●傷病鳥獣保護センターの建設中止−本会、香川県へ要望書を提出−(2004年3月) 今年2月、県の傷病鳥獣保護事業について驚くべき方針が明らかになりました。 @栗林動物園閉園後、とりあえず(有)日振動物へ傷病鳥獣保護事業を委託しているが、これを正式な体制とする。 A傷病鳥はニューレオマワールド内の「野鳥園」で飼育・展示する。 B県立の傷病鳥獣保護センターはつくらない。 というものです。 「やっと県立の傷病鳥獣保護センターができる」と期待していた本会には寝耳に水。新聞のスクープがなければ、3月の県議会まで明らかにされないところでした。 新しい県の方針のように、傷病鳥獣保護体制の中心が民間企業では、再び倒産して受け入れ先がなくなったり、傷病鳥獣をペットショップや剥製愛好者への横流しするなど、違法行為に繋がる可能性があります。 そこで3月12日、本会は急遽香川県へ@鳥獣保護センターの設立 とAニューレオマワールド内の動物園での「野鳥園」の中止指導 を要望し、あわせて21項目にわたる質問書を提出しました。 今回は要望を伝え、質問書を渡すことが目的だったのであまり細かい話はしませんでしたが、県との話し合いで明らかになった点を報告します。
いかがでしょうか。これだけでも、いかに県が甘く、その場しのぎの対策しか考えていないか明らかだと思います。 いったい誰が、県の指定する傷病鳥獣の受入れ先に獣医がいないと思うでしょうか。 本会は引き続き、県の鳥獣保護事業の核となる「県立鳥獣保護センター」の設立を目標として、県へ要望・抗議を重ねていきたいと思います。皆さんのご支援をお願いします。 |
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●香川県から回答届く −「まず民間企業への委託ありき」−(2004年3月) 香川県から、本会が提出していた質問書に対する回答が届きました。 「野鳥園」での傷病鳥の飼養はしないと前回の交渉時に県が発言したため、ポイントは現在委託している(有)日振動物への傷病鳥獣保護事業の委託が、果たして適切かという点に絞られます。 県の回答を検証すると、明らかに「まず民間企業ありき」で、傷病鳥獣保護事業(ひいては野生動物の保護)など考えてもいないことが明らかになりました。 以下、回答のポイントを抜粋して解説します。(質問書・回答書の全文は、資料室にあります。) 以下、青字が質問、赤字が回答です。なお、回答は原文のまま(ただし太字・下線は本会が付す)です。 @傷病鳥獣保護事業の委託先として、日振動物を選定した理由を明らかにしてください。また、その判断根拠となった実績(傷病鳥獣保護の実績等)があればお示しください。 【回答】 選定に当たっては、下記項目に留意し、同社は委託先として適当であると判断しました。 ・実 績:傷病鳥獣保護を行なってきた実績はないが、かつて旧レオマワールド内において、動物園等を経営するなど動物飼育 ・収容設備:現社屋内には、飼育・保管スペースがある。 ・所 在 地:鳴声や臭い等の関係で、住居地からある程度離れている。本県のほぼ中央に位置することで、受付(環境保健セン A日振動物において、傷病鳥獣の飼育に直接携わる人数と、そのうち獣医師免許所有者の人数を明らかにしてください。 【回答】 傷病鳥獣の飼育に携わる人数は1〜3名であり、獣医師免許所有者はいません。 B日振動物が業務として売買している鳥種のうち、過去3年間に日本産鳥類(フクロウ、オオタカ、メジロ、ウグイス、ホオジロ等の日本鳥類目録第6版記載種)を扱っているか、扱っていればその種名・羽数をお示しください。 これは傷病鳥が横流しされる可能性がないかをチェックする最も基本的な情報です。これすら確認していないということが無いことを期待しています。 【回答】 ご指摘のような鳥獣を扱ったことはないと聞いています。 Aで獣医がいないこと、Bでメジロ、ウグイスなど日本産鳥類(実際に傷病鳥として持ち込まれる種類)を取り扱ったことはないことが明らかです。あわせて、@「傷病鳥獣保護を行なってきた実績はない」。 こうした業者が、「委託先として適当」という判断は常識的に不可能です。 オウム・インコ等の洋鳥と日本産鳥類は食性・生態が異なり、単純に知識・経験を転用できるものではありません。獣医師の大学では野生動物を対象とした講義は無いことから、一般の獣医でも野鳥の治療には慎重になると聞きます。しかも、獣医師ですらない人間が傷病鳥獣保護事業に「適切」とは、どのような根拠があるのでしょうか。 また、世話に当たる1〜3名は専門職員ではなく、他の業務(鳥獣商としての仕事)を持つ「兼務」であることを、県との協議の際に確認しています。完全に片手間の世話です。 C日振動物が現実的に収容可能な傷病鳥獣の個体数の見込みをお示しください。(人員や施設とのかねあいから、無制限な収容は不可能なはずです。) 【回答】 これまでの傷病鳥獣の収容実績から見て充分な施設であると判断しており、どれくらいの数まで収容可能であるかの推定は不必要なため行なっていません。 重油流出事故をはじめ、大量の傷病鳥獣が発生する可能性は少なからずあります。また通常業務においても、収容可能個体数の目安は、以降の受入を検討するため必要な情報のはずです。それとも無制限に持ち込み可能なのでしょうか? D鳥獣商としての財産である販売用の鳥獣と、傷病鳥獣との物理的な隔離状況を明らかにしてください。 また、傷病鳥獣から感染症が伝染し、販売用動物が罹患・死亡するなどして販売価値がなくなった場合、県がどのような賠償責任を負うのか明らかにしてください。 【回答】 収容された傷病鳥獣をどの鳥舎で収容するかは委託業者が判断すべきことであると考えますことから、そういう懸念はないものと考えています。当方が視察した限りにおいては、同一鳥舎、飼育ケージには入れていませんでした。 なお、最近は、高病原性鳥インフルエンザの感染の有無について、環境保健研究センターで、保護された際に検査しています。 本質問は、感染症が発生する可能性の有無を問うものではなく、発生して「販売用動物が罹患・死亡するなどして販売価値がなくなった場合、県がどのような賠償責任を負うのか」を質しました(「県がどのような賠償責任を負うのか」と明記)。 業者が判断するからそのような事態は起こらない、起こっても業者の責任だという姿勢だが、公金を投入する事業である以上、法的にどのような責任を負うか(負わないか)を明確にしておくべきである。 E既に日振動物は昨年9月以降に傷病鳥獣保護事業を受託していますが、受託から2月末までの実績(保護数とその結果(死亡・継続飼養・放鳥獣等))を明らかにしてください。 【回答】 保 護 数)鳥類51羽 獣類2頭 計53羽/頭 死 亡)鳥類32羽 獣類1頭 計33羽/頭 継続飼養)鳥類15羽 獣類0頭 計15羽/頭 放 鳥 獣)鳥類4羽 獣類1頭 計5羽/頭 どのような状態の傷病鳥獣であるのかは不明だが、発見場所から日振動物まで持ち込めたということは、すぐに死亡するほどの傷病ではないと思われます(傷病がひどければ、持ち込む前に死亡します)。 具体的な状況がわからない中で結果だけを問題にすることはフェアではないことは承知していますが、53羽/頭中、死亡が33羽/頭(約62%)という数字だけを見ると、日振動物での不十分な体制(獣医なし、兼務の1〜3名、野鳥を扱った経験無し)が影響していると考えざるを得ません。 F9月以降、県へ連絡無く、直接日振動物に持ち込まれた傷病鳥獣があれば、その種類と個体数を明らかにしてください。またそうした場合、日振動物から県へどのように報告されるのか明らかにしてください。 【回答】 傷病鳥獣が直接業者に持ち込まれたことはないと聞いています。持ち込まれることがあれば、県に報告するよう指導しています。 県との協議において、県が把握できず直接持ち込まれた傷病鳥獣の横流しを防止するシステムが不可欠である、ということは何度も説明しました。 しかし回答は、「聞いている」だけであり、何ら客観的な検証はされておらず、また確認するシステムもありません。 企業を信用するだけではいけないことは、狂牛病、鳥インフルエンザ等様々な事件で明らかとなっている。 G密猟・違法販売が絶えない香川県では、収容された傷病鳥獣が横流しされないよう、第三者による個体数チェック、飼養状況の定期的な視察は、どのような業者であっても絶対に必要です。 傷病鳥獣の飼養状況に対し、外部視察が可能かどうか、不可能であればその理由を具体的にお示しください (県の傷病鳥獣保護事業を遂行する上で必要な業務であるはずです)。 【回答】 収容個体の適正な管理については業務を委託している県において確認を行なうべきものであり、また、個体数チェックについては特に専門的な知見を必要とするものではないため、第三者によるチェックの実施については考えていません。 質問のとおり、本会は専門的知見の有無を問題としているのではなく、外部の視点の必要性を言っています。 Fの県の回答のように、県は企業から聞いただけで「問題なし」と考えます。このような放任体制だからこそ、第3者によるチェックが必要なのです。 関係者(発注者(県)と受託者(業者))だけのチェックでは限界があるからこそ、外部監査等が導入されているのではないでしょうか。 H傷病鳥獣保護事業として委託契約している業務内容、委託費及びその積算根拠をお示しください。栗林動物園の場合、低額で委託していたため県は強い指導ができなかったのではないか、との噂もあることから、どのような積算によるのか、その額は第三者から見て適切かを検証するべきです。なお、本事業の委託契約は通常の売買契約と異なり、公開したからといって「自由競争」に影響が生じるものではありません。 【回答】 下記のとおりです。 ○業務内容:県民等が保護した傷病鳥獣を収容し、適切な治療・給餌・回復訓練等を施す。 ・傷病個体の受付場所からの引取業務 ・治療・給餌・回復訓練業務 ・放鳥獣業務 ・その他上記業務に関連する業務 ○平成16年度予算:傷病鳥獣保護収容業務委託料6,300千円 人件費や餌薬品代、管理経費等から算定しております。 ※H15年度は、委託期間が8/12〜3/31のため、日割り計算:4,010,653円 600万(50万×12ヶ月)+消費税30万という積算と思われます。 この金額が高いかどうかは単純には言えません。しかし月額50万円には、餌薬品代、施設の管理費用も含まれているため、獣医師1名すら専属で確保できません。香川県の傷病鳥獣を救う、またそれによって鳥獣保護思想の普及を行なうという事業から考えれば、不十分な額です。 ただ、現実に(契約金額どおり)獣医師もおかず、兼務の人間だけが携わり、どんなに死亡しても問題にされない、という業務形態なのだから、受託する側にとっては非常に楽な業務となります。受け入れて、世話をせずに死んでも「手遅れだった」と言えばいいわけです。こうした態度にならないよう監督する必要がありますが、県にその気がないのは明白です。 |
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