屋島パラグライダー問題

〔概要・問題点〕

高松市の屋島において、活性化対策としてパラグライダー離陸施設の整備計画があります。高松市は、「活性化」につながるとして高松市は補助金を支出しています。

しかし県内にはすでに8箇所もパラグライダー施設があり、それらの状況把握、屋島に整備した場合の利用状況の試算などは何もなく、ただ「活性化に役立つ」という根拠のない期待だけがあります。

また、屋島には絶滅が懸念されるハヤブサ(国・県とも絶滅危惧U類に指定)、ミサゴ(国・県とも絶滅危惧種に指定)が繁殖。これらへの悪影響が予想されますが、事前の調査は全くありません。

こうした無計画な事業ですが、行政などは「活性化対策」という言葉だけを重視。税金が無意味に投入されています。さらに県も「市が補助する事業だから」と安易に考え、国立公園・鳥獣保護区・天然記念物である屋島での樹木伐採を許可しました。

試験飛行が強行され、ミサゴをはじめとする野鳥への影響が明らかになったにも関わらず、検討委員会の判断は「着地地点を変えればいい。それまで休止」というもの。

検討委員会では、「高松市には自然保護を担当している課はない」という、市担当者の暴言もありました。

 

〔経緯〕

●2002年

高松市の屋島において、活性化対策としてパラグライダー離陸施設の整備計画があるとの報道。これは県内のパラグライダー愛好者の「屋島で飛びたい」という要望が市議会議員に寄せられたのが始まりです。

パラグライダーの飛行が野鳥に悪影響を及ぼすのではないかという懸念が、県内の野鳥関係者に生じました。

●2002年2月

日本野鳥の会香川県支部が中止要望を提出。

●2002年4月

誰も知らないところで、市の活性化対策事業として正式に交付決定。

●2002年6月

高松市の6月市議会で、香川県支部から中止要望書が出ているが、どのような状況かと問われ、高松市長は「調整する」と答弁。

また、屋島は国立公園・鳥獣保護区・天然記念物です。

現況とこの議会発言を考慮すれば、簡単に事業が推進されることはないだろう、というのが大方の見方でした。

●2003年3月

突然、伐採に要する各種許可(天然記念物の改変・国立公園特別地区での工作物の設置・保安林の解除・保安林内作業許可)がおり、3月初めに離陸地点を伐採したということが判明。

本会事務局はこの時まで、「この事業は、すでに社会的に認知されている日本野鳥の会の支部が中止要望を出したのだから、それなりにきちんと再検討されるだろう。」と判断し、当面静観する方針としていました。

しかし突然の伐採を受け、急遽事業の経緯を調査。その結果、事前調査もない、活性化の見込みもない、全くの行き当たりばったりの事業であることを確認しました。

●2003年4月

伐採という既成事実を追うかたちで検討委員会が設置。しかし最も重要な、根本的な事業の必要性は検証されませんでした。

●2003年6月

香川の野鳥を守る会、中止要望書と質問書を高松市に提出。

事業効果の見込みが無いこと、確実に野鳥への影響があることなどを、様々な根拠をもとに指摘しました。

●2003年8月

香川の野鳥を守る会、屋島パラグライダー計画の問題点について、談話会を開催。

●2003年10月

試験飛行実施。

しかし、試験飛行と比較するはずの「何も無い状況」の調査はとうとう無し。また、試験飛行のコース・飛び方等はパラグライダー団体任せ。「何を、どのように調査するのか」、「どういう状態を影響ありと評価するのか」が全く検討されず、また環境省の示す猛禽類調査のガイドラインにも配慮しない、無意味な調査でした。

香川の野鳥を守る会は、現場で独自の影響把握調査を実施しました。

●2003年11月

香川の野鳥を守る会、独自の調査報告書を市等関係団体に提出。

パラグライダーが明らかに野鳥に影響を与えている事実を明らかにしました。

●2003年11月

検討委員会開催。

野鳥への影響があったこと、着地場所をずれたケースが複数あったことなどが報告されました。これで環境・安全面での問題が明らかになったにも関わらず、「影響があったので」着地場所を変える、それまで休止、という判断。

影響があるという事実から目をそらす、推進ありきの結果でした。

 

〔香川の野鳥を守る会の主張・方針〕

★他施設の利用状況も把握せず、利用見込みも立てていない「活性化対策事業」は無意味。

★有料道路内で、初心者が使えない施設で「活性化」はありえない。

★野鳥への影響を把握するには、「何もしていないとき」の調査が不可欠。それがない「試験飛行」は無意味。

★試験飛行では、明らかにミサゴに影響があった。これ以上の「試験飛行」は無意味。

事業は即刻中止。伐採地は原状回復すべきだ。

 

INDEX〕

●高松市のウソ −ごまかすためには何でもあり−(2003年3月)

●高松市のずさんな事業執行 −山ほどある問題点−(2003年6月)

●高松市の無責任体制 −他の課のすることは知らない−(2003年6月)

●試験飛行 −無意味な調査−(2003年10月)

 

●高松市のウソ −ごまかすためには何でもあり−(2003年3月)

3月市議会では、「伐採前に、香川県が日本野鳥の会に委託して猛禽類の生息調査を行った」と市長が答弁。

しかしこの調査は、全県のハヤブサ・ミサゴの分布状況を調べることが目的の、5年前の調査です。また屋島のハヤブサの繁殖状況について調査しているものの、それは単に「いつペアになり、いつ巣をつくり、いつ孵化して・・・」という程度の調査でしかありません。

全く関係のない昔の調査を、現在の開発工事の「事前調査」と言い張る。結局高松市は、事前調査をしていないためにこうした「嘘」でごまかすしかなくなったのです。こんな「関係のない調査」を「事前調査」としてごまかす行政は信用できません。

また、仮にこうした「過去の調査を事前調査とする」という馬鹿な話が成立するなら、どんな調査も将来の開発工事の事前調査になりえます。

例えば高松市は、「高松市身近な環境調査」という調査を実施し、市内のヒバリやツバメなどの調査をしていました。この調査は平成12・13年度の2年間にのべ987人も参加し、小学生が最も多かったそうです。調査の目的は「自然環境保全のための資料」(高松市ホームページより)であり、実際参加者は郷土の豊かな自然を守る手助けがしたい、という気持ちだったと思います

しかし市の姿勢は、この調査も、開発工事の事前調査になりえるということです。

 

●高松市のずさんな事業執行 −山ほどある問題点−(2003年6月)

 

1 事前調査の不足

(1)伐採地の事前調査がなされていない。また伐採にあたって影響がないと判断した根拠がない。

(2)ハヤブサ・ミサゴの事前調査がない。また試験飛行は影響がないと判断した根拠がない。

(3)飛行予定ルートの下で繁殖するオオルリやホトトギスなど、樹上でさえずる野鳥の生息状況の事前調査がない。また試験飛行は影響がないと判断した根拠がない。

 

2 飛行状況が変化した場合の対策が不明

(1)本格的に稼動した場合、毎年ハヤブサやミサゴの繁殖状況をチェックしなければ、飛んでよい状況かどうかわからない。誰が、どのようにして継続的に確認するのか不明。

 

3 レッドデータリストへの配慮の欠如

(1)ハヤブサやミサゴは国のレッドデータや県の暫定的なレッドリストで、絶滅危惧種としてランクされている。

行政はその保護に配慮すべきだが、高松市は国及び県のレッドデータブックを尊重する意思がない。

 

4 活性化につながるという根拠が不明

(1)県内にはすでに8箇所もパラグライダー施設がある。屋島で実施するにあたり、他施設の利用状況を確認していない。

(2)「活性化」という名目で市費から補助金を出しているが、実際にどれくらい効果があるのか調査されていない。

 ※市は「やってみなければわからない」と言いました。

 

5 事業が失敗し、活性化につながらなかった場合の処理が不明

(1)影響が発生したとき、伐採地の原状回復が困難である。

  ※市は「放置しておけばいつか元に戻る」と言いました。

(2)整備しても人が集まらないとき、活性化対策を失敗した責任は誰が持つのか不明。

結局パラグライダー愛好者の「遊び」のために、税金を投入して国立公園・鳥獣保護区を破壊したことになる。

 

高松市の無責任体制 −他の課のすることは知らない−(2003年6月)

2003年  月、市議会で「平成16年度の全国豊かな海づくり大会で、パラグライダーを飛ばす」という市の発言がありました。

しかしその時、まだ検討委員会があるだけで、試験飛行も未実施。香川の野鳥を守る会も中止要望を提出していたところです。

そのような中、本格稼動を予定するとはどういうつもりか、と高松市観光課へ抗議しました。

すると、最初に帰ってきたFAX回答は、

「あの発言は別の課が準備したもの。うちの課は知らない」というもの。

同じ高松市という地方公共団体で、同じ事業について、別の課だとかどうかは関係ありません。

しかも、その別の課じたいも、屋島パラグライダー計画の検討委員会に入っており、現在どのような状況かは理解しているはずです。

完全に検討委員会を無視し、また反対意見を馬鹿にする態度。

この件で、高松市という行政の体質が見えてきます。

 

●試験飛行 −無意味な調査−(2003年10月)

当日、基本的に全てパラグライダー団体任せ。どう飛ぶか、いつ飛ぶかは自由。結局選抜メンバーが遊んだだけでした。

事実、飛行したうちの一人は、冒頭にパラグライダー団体の責任者自身が「高く飛ばないように」と指示してたにも関わらず高度を上昇。その光景を見た記者が、パラグライダー団体の責任者に「あの人は何をしているんですか?」と問うと、はっきり「彼は遊んでいますね」と回答していました。

これのどこが「調査」なのでしょうか。また昼食時には、転落防止のためのチェーンを放置。安全管理のずさんさが、すでに明らかになりました。

なお、検討委員会で示された調査結果は、調査というより「観察記録」。本来なされるべき雌雄識別、飛行コースの記録、タイムテーブルなどは全くありませんでした。

★香川の野鳥を守る会の調査報告書は資料室に収録しています。

 

●パラグライダー事故相次ぐ

 

 

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