フィールドノートのすすめ

INDEX

 最初は識別できなくて当然

 フィールドノートつけよう

 野鳥の数にはこだわらない

 書き方のポイント

 手書きよりも、写真が確実?

 

 

よく「野鳥が覚えられない」「見分けられない」から、野鳥観察は難しい、というご意見を聞きます。そこで今回は、最初の気持ちの持ち方と、識別したり名前を覚える秘訣をご紹介します。

 

最初は識別できなくて当然

観察会では、僕は「初心者の頃は、識別できなくて当然。名前も無理に覚えなくて大丈夫です。こんな特徴の鳥が、ここにいることだけを知ってください。」とお話します。

それというのも、実は「確実に識別する」というのはとても難しいことなのです。野鳥の多くは雄と雌で羽色が異なりますし(ホオジロなど)、季節によって異なる種類もあります(カモ類など)。さらに年齢(多くは1歳未満)で羽色が違う場合もあります(シギの仲間や、ルリビタキなど)。また地域差や亜種の違いもあります。そして生き物ですから、当然個体差もあります。これを見分けるのですから、かなりたいへんです。むしろ長く野鳥とつきあうことで、より細かく・正確に識別できるようになることが、野鳥観察の面白さの一つではないでしょうか。

でも、ベテランのように、やっぱり目の前の野鳥の名前が知りたい…。

こんな時は、メモ−「フィールドノート」をつけることをお勧めします。

 

◆ フィールドノートをつけよう

「フィールドノート」とは、野外でとるメモのこと言います。サイズに決まりはありませんが、野外で使いやすい小さめのものがいいでしょう。筆記用具は、ノック式の油性ボールペンが定番。水性だと雨で流れますし、キャップは野外で落としやすいものです。

書く内容は自由ですが、必ず「いつ」「どこで」だけは書きましょう。

さて、目の前の野鳥がわからないときは、イラストや言葉で特徴を記録します。目の前の野鳥をじっくり観察してください。羽の色だけでなく、嘴や脚の色も。また動き方、鳴き声、環境なども書いておきます。

こうしてメモをすれば、後でゆっくり図鑑で調べられます。現地で図鑑と見比べるのも大事ですが、やはり野外では野鳥を見ることに時間を使いたいものです。

特徴を記録すれば、ベテランに聞くという方法もあります。本会へもどんどん問い合わせてください。

イラストの上手・下手にこだわる人もいるかもしれません。でもこれはあくまで自分のための記録用。忘れないように描ければ十分です。

 

◆ 野鳥の数にはこだわらない

多くの方が、「記録は正確でなければならない」と思うあまり、ついつい羽数も「書かなければならない」と感じているようです。

もちろん羽数の記録はとても大事で、野鳥保護に欠かせない基礎資料になります。けれども特に初心者(まだ自分の識別に自信が持てない)の間は、数にこだわる必要はありません。

そもそも数を把握するためには、その前に確実に種類を識別できなければなりません。でも、初心者の頃には、そもそも種類を見分けるだけで大変です。また冬にカラ類の混群に出会ったとき、メジロを数えることに夢中になると、シジュウカラやエナガ・コゲラを見落としたり、それらの出現の順番などに目がいかなくなります。それでは「混群」という、冬のカラ類の暮らし(重要な生態)を知るせっかくのチャンスを失ってしまいます。

また池にいるカモ類も、ついつい数を数えたくなります。でも特徴が明確な雄ならまだしも、雌は慣れないとかなり識別は困難です。ところが残念ながら、多くの方が「雌がわからない」から「数がわからない」、だから「記録をしない」ようです。

こういう時は、むしろカモの種類(雄だけ)、どんな行動をしていたか、池の周囲にどんな小鳥がいたかなどを観察・記録してください。その「場所」を保護する時にも、「マガモが♂131羽♀76羽」という記録よりも、「マガモ、コガモ、ヨシガモ、カイツブリがいて、土手にはアオジとモズがいた」という記録の方が役にたつことがあります。

「数える」のは、「ロードサイドセンサス」や「定点調査」「モニタリング調査」という調査方法の第一歩です。ですから羽数を記録できるなら、もう立派なベテランになったといえるのです。

 

◆ 書き方のポイント

       …♂

       …♀

さえずり

(繁殖期の鳴声)

地鳴き

(繁殖期以外の鳴声)        

飛んでるとき      

識別に自信がないとき       

○○の仲間としかわからないとき       …Sp

 最後に、野外で簡単にかくために、慣れた人が使っている記号をご紹介します。とても役に立ちますので、ぜひ覚えてください。

 例)

・ホオジロの雄1羽を見 ……「ホオジロ1♂」

・ウグイスの「ホーホケキョ」を聞いた(姿は見えず)……「ウグイス1S」

・一瞬だったけどトビのようだった(自信がない)……「トビ? 1」

・形はカモだけど遠くてわからない ……「カモSp1」

 ただ、どれが「さえずり(S)」で「地鳴き(C)」か、どんなときに「Sp」をつければいいかは、最初は難しいと思います。これは野鳥の生態や分類に関係していますので、機会があれば詳しくご説明します。早く知りたい方は、ぜひ観察会へお越しください。お待ちしています!!

 

◆ 手書きよりも、写真が確実?

写真は正確ですが、初心者の頃は、やはり「一にフィールドノート・二に撮影」という姿勢をお勧めします。撮影中心だと、なかなか「動き」や「鳴き声」に意識がいきません。これでは識別力は身につきません。また、ついつい「全体(特に顔)をきれいに写そう」ということばかり考えがちになります。そうすると、例えば脚の色や長さ、翼の模様といった「顔以外の特徴」に目がいかず、記憶にも残りません。こうした写真は、やっぱり顔以外はうまく写ってなかったり、ピンボケだったりします。また「写真と実際の色が違う」ということもあり、野外での識別には役に立たないこともあります。

撮影中心になった人は、野鳥を見つけたらすぐ機材をセット。後はシャッターチャンスを狙うときだけ、ファインダーごしに野鳥を見ています。ファインダーをのぞいていない時は休憩時で、野鳥すら見ていません。マナーを守らない一部の野鳥写真マニアは、こうした見方に慣れてしまって、野鳥を「被写体」としてしか考えていないのだろうなと、僕は感じています。

「観察」は、遠くてもそれなりに我慢できます。しかし「撮影」は、「よりよいアングル」のために、近寄る (またはいい場所へ移動する)ことが必要です。これはともすれば、野鳥よりも「自分の都合」を優先することになり、野鳥観察・撮影マナーに反することです。これを自制するためにも、撮影をメインにするのは、少なくともそれなりの経験を積んでからにした方がいいでしょう。

 

このページの先頭 | TOP PAGE