林田 キヨノ
「ヨイッショ、ヨイッショ」。私のこの掛け声は何をしていると思いますか。ソーラン節は「ドッコイショ、ドッコイショ」だし、綱引き? 血圧が高いので厳禁。登山? 八十歳のババには無理。
実は昨年の夏頃、膝に違和感を覚え、友達にこぼしたらスイミング教室のウォーキングに通うことを勧められました。
「まさかと思うが洋服のままでは…」
「勿論、水着になるのさ」
「ちょっと待って。私は泳いだこともないし、おまけに水着になるなんて…」
なんだかんだと、すったもんだがあったが、スイミング教室へ通うことになりました。初めて水着を着て鏡の前に立った時、子どもの水着姿はとても可愛らしいのに、私のスタイルは出っ張るべき所がペッシャンコで引っ込むべき所が出っ張って、見るに堪え難いものがありました。天国の夫が見たら目を逸らすであろうし、両親なら「はしたない、誰に似たのかな」と、嘆くのが目にみえるようでした。
ウォーキング教室は、週に二回、生徒は十人でほとんどが五十代、運動不足、太り過ぎ、膝が痛い等々、男性も二人おります。初めてプールに入った時、冷たいのでびっくりしましたが水温は三十度前後に設定され、冷感刺激によって体温調節機能が鍛えられるとのことでした。又、体力作り、美容、リラックス、ストレス解消等、水の特性を生かしたメニューが指導員によって用意され、体力のある人は大きく速く、体力のない人は小さくゆっくり歩くのですが、私は超自分ペースで歩くので年齢が気になるのか指導員は特別に声を掛けて励まして下さるし、娘のような年の仲間も私を若い若いと煽(おだ)て、やる気を起こさせて、協力して下さるのです。使うことの少ない筋肉は、ここでより鍛えることができないと思うと、水の抵抗にむきになって闘うので、つい「ヨイッショ、ヨイッショ」と口を吐(つ)いて出てしまうのです。
四十分歩き通しですが、水の浮力のお蔭で疲れたと思うこともなく、むしろ体が軽くなり、あっと言う間に時間が経ってしまうのです。
何時かは、風邪の引き易い体質も、ギックリ腰になり易い腰筋も、膝の痛みも忘れることが出来るであろうと思うと、水着のスタイルも「中々いいジャン」と鏡に堂々と向き合えることができるようになりました。
傘寿の祝福が、かくも豊かに神様から与えられたことを覚え、近い将来召されるであろうその時の晴れ着は、水着もどきにしようかな。
(はやしだ きよの)