一人より二人 そしてもっと多く

                           


竹原 京子

 音楽でもスポーツでも一人で行動するものよりバックコーラスが付くものの方が私は好きです。何人かで奏でられるものはどんなものであれ美しいと思うのです。マラソンはリレー、聖歌隊の混声合唱、それからサッカー。こんな風に挙げてきますと、団体行動が無理な私の楽しみは、そういうことの出来る人達を見ることの快さを受け取っているのだと感じます。
 そうしてスポーツは40年来好きな野球に辿り付きます。国内の野球も贔屓のチームはありました。でも、でもです。8年前から辛抱強く見てきたのはメジャーに行ったかの野茂さんでした(以下敬称略)。 彼を始めて見たのは96年の9月の朝のテレビの前でした。誰かメジャーリーグで投げているのだっけと中継を見て驚きました。あのような投球フォームを見るのは初めてだったので…。そして野茂はこの試合でノーヒットノーランを8人の人々に守られて達成させたのです。
 二年後、彼の身に起こったことは、日本で気を揉んでもどうしようも無いことでした。不調でメッツを解雇され、99年〜00年と弱体球団で辛抱強く投げていました。見ていた私が一番熱く応援した時期でした。
 翌年レッドソックスの開幕第二戦目はノーヒットノーランをチームメイトに固く守られて成就させました。感激でした。これこそ試練を益とした人の業です。
 そうして、彼の稀有の資質こそ、天が与えられたものと私は信じます。周りからどんなに酷い事を言われても、平然としているように見える強さ、毅然とした態度を崩さなかったこと、それでいながら頑固で無いらしいこと(褒めすぎですか)。大リーグを見ていると、投手は分業で、先発、中継ぎ、クローザーになっているようです。中継ぎがブルペンから出てくるとき十字を切るのをよく見ます。このしぐさを見ると親しみを覚え頑張ってネと思います。
 今期野茂はメジャーでの百勝を挙げましたが、来期、また試練があるような気がしています。杞憂であることを願ってていますが、それは誰もわかりません。
 今、試練の中にいる方、これからもしかしたら受ける方に贈りたいゴスペル、それは、スタンド・バイ・ミー「(主よ)わが傍らに立ちて」です。私は心にこの言葉を唱えると安心しますので。最後に朝日新聞の記者の言葉を紹介致します。
 「開拓者の後を人は追える。しかし誰も開拓者にはなれない。」

(たけはら きょうこ)

月報みつばさ2003年11月号「私・・・に夢中です!」より