よろしかったらご試食を!

               池田 和美

 いつも指折り数えて待つ長期のお休み(幼稚園のお仕事が嫌なのでは決してないのだけれど!)。普段できない細々したお掃除やら、知らず知らずのうちにたまってしまう雑多な物たちを整理しながら少しずつ専業主婦モードに切り替わっていく。するとパン!パン!パン!とまるでパンたちに呼ばれているかのようにパンづくりの日々が始まっていく。     ふっくらバターロールや我が家でつぶつぶ食パンと名づけているグラハム粉のはいった食パン、リンゴたっぷり(いつでも作れるようにリンゴは煮て冷凍しておく)のアップルシナモンロールやメロンパン、干しぶどうを生地の分量の半分も入れるどっしり重たいぶどうパン、油で揚げないさっぱり指向のカレーパン、作れば作るほど次々に作りたいものが頭の中をかけめぐり、ひとりでに手が動いてしまうのだ。                
 休みに入りパンづくりが始まると「次はあんパンね!」などと家族は楽しみにしてくれるのだが次第に「和菓子も食べたいなあ」とか「パンばかりでなくごはんもいいよね!」のことばになり、揚げ句の果ては「もういいかげんにすれば」と云われる始末。自分でももうビョーキだと思うのだけれど楽しくっておもしろくってやめられない。決して短時間ではできないし、下ごしらえもあれば洗いものだってたっぷりある。とってもめんどくさいかも。でもね、ただの粉にホンの数種類の材料を加えるだけで、あんなにかわいいパンたちができあがっちゃうってなんともステキ  少しずつ膨らんでいく発酵の時、かぜをひかないように(乾燥しないようにということ)手早く丸めていく時、部屋全体になんともいえない心地よい香りが漂う焼成の時、どの時も私にとっては至福の時となる。他の事を考えるゆとりがない。パンの事だけ考える。元来ぶきっちょな私は一度にいろんな事を考えられない、ひとつだけで精いっぱい。そんな私に合っているんだと思う。どんなにぶかっこうなバターロールでも真ん中に大きな穴があいてしまった食パンでも、笑って食べてくれる家族がいる限り私のパンづくりは終わる事がないだろう。

                    
 今この時も頭の中はこの間見た宅配ピザの広告の、あのトッピングでピザを作ろうかなとか、あのパン屋さんで売っていたあの豆パンはどうやって作るのかなと渦まいているのだ。楽しいね。手づくりパンがお好きな方、どうぞお声をかけてください。食べていただけたらうれしいです。

      (いけだ かずみ)


越谷教会月報『みつばさ』2004年4月号「私・・・に夢中です」より