讃美歌21 273番「この聖き夜に」

                      亀井 周二

 普通クリスマスの讃美歌はグローリア等喜びを表す言葉を多く耳にする。しかしこの歌は4節まではキリエレイソン(主よ、憐れみ給え)で終わる変わったクリスマス讃美歌であるが歌詞、曲共に美しい。作詞者クレッパーは北ドイツで牧師の子として生まれ、2人の娘を持つユダヤ人女性と結婚、その結果自らもナチスの迫害を受け1942年39歳で死ぬ。
 私は毎年クリスマスの華やかさ、にぎやかさの中でふと十字架を思う。アドヴェントの教会暦の典礼色は赤や緑ではなくレントと同じ紫で悔い改めを示す。この歌の歌詞も「馬小屋の御子のゆくては十字架」と歌い最後の5節で「よみがえりの朝、はじめてわれらも……心より歌わん、主にホサナ」と終わり、キリエの言葉は消える。この歌は主の十字架の苦しみと私たちの悔い改めの心を忘れた、ただ「メリー・クリスマス」と軽い気持ちで祝う人々に是非伝えたい讃美歌です。

(かめい しゅうじ)










越谷教会月報『みつばさ』2005年12月号「私の一曲」より