里辺香に夢中
森谷 愛
里辺香の遅めの朝食が終わると、自分のコートを引き摺って来て、「ジージ」と囁くように散歩の催促である。二、三カ月の頃は、外気浴程度であったが、一歳の今は、急に歩くようになって、裏の梅林公園を、お花の好きな里辺香は、上機嫌でグルグルハイキングである。
好奇心旺盛で、犬と大型の働く車が特に大好きで、車両に見入ったりする。
難産の上、病院を挙げて、命を助けられ、重体の儘退院した娘に代わって、じじ・ばばが主軸になっての孫育てである。
私自身の子育て時代は、高度経済成長時代で土休は無し、帰宅は深夜であったから、子育ては妻任せであった。
しかし、今回は少々ハラハラしながらも、新生児の里辺香の毎日のタライ入浴が、やがて、お風呂に入るようになり、楕円形のバスタブの中で遊泳し、歩き回り、楽しく遊ぶ。可愛くて、可愛くて、丁度、陶芸の壁に突き当たって悩んでいたのも何のそのである。
思えば、若き純粋な日々、老醜だけは身に纏いたくないと思っていた。あらゆる欲の積もったものに見えたのである。しかし、自分だけが、そこから免れる筈がない。罪だけは人には負けない。
しかし、晴天の稲妻のように、天から里辺香をお授かりした。この幼子と共に育てられ、希望を持ちつつ日々新しく、喜びと、感謝と、祈りの内に生きたい。
(もりや めぐむ)