数学に夢中です

横田 和広

 企業のエンジニアとして二十年あまり働いてきましたが、ここ数年マンネリ化している自分に耐え切れず、何等かの目標設定の必要性を痛感し、高校の頃大好きであった数学をもう一度学び直してみよう、と思い立ち、独学で再履修している、というところでしょうか。これも具体的目標が無いと途中でどうでもよくなってしまうので、そういう点では日本の社会はよくできていて、生涯教育のひとつに数学検定なるものがあり、その一級を目指そう、と志した次第でした。
 昔使った参考書を引っ張り出しそこに掲載されている問題が解けたときには、その美しさに、やはり若いときに感じた感動が再び蘇ってきます。難問に取り組んでいる時間に感じるあの陶酔感は、あたかも大聖堂の長い残響のなかでバッハのカンタータに包まれている時間に感ずる透明感に似ていることは、理科系に進んだものが一度は味わった事のある共通体験だと思います。
 この挑戦の間で考えたことのひとつに、数学の試験がなぜ必要なのか、ということがあります。今までの人生の中でこの部分に関する議論を聞いたことがないのですが、私が思うに、受験者の論理的思考能力を、数学にて測定しよう、というのが起点なのだと思います。考えて見れば数学くらい論理的思考を必要とする(つまり直感では問題解決できない)学問はありません。それでも受験数学は解法技巧に奔り過ぎている傾向は強すぎますが。
 そう考えてくると、学問の目指すものは論理的思考の実現にあって、そのために有効な基礎知識をいかに多く蓄積するか、を目標とすべきなのだろう、と思います。
 ホーキングは、God Created The Integer.(神が整数を創造した)と言いました。でもその論理を展開させたのは人間だった、という主旨で著作しています。この神と人間との合作である数学を生涯の友としたいと思います。

(よこた かずひろ)


越谷教会月報みつばさ2007年12月号「私・・・に夢中です」より