今月の特集題  平和への祈り



ターシャの庭
Y.F
 アメリカにターシャ・テューダーという絵本作家がいます。NHKで何度か特集で紹介されたので、ご存じの方も多いでしょう。絵本作家としての人気とは別に、90歳を超えた彼女が最近改めて注目を浴びているのは、ガーデナーとして写真集で紹介されてからです。
 50歳を過ぎてからバーモント州の田舎に移り住み、一人で30年以上かけて広大な庭(東京ドームの10倍とか?)を自分の思うように作り上げ世話し、今では「理想のナチュラル・ガーデン」とまで呼ばれているそうです。
 私は、自宅に庭もなく、たまに鉢植を買ってくればもれなく枯らしてしまうという、園芸家には最も不向きな人間なので、よけいにターシャのような、緑の指を持つ人に惹かれるのかもしれません。
 番組を収録したDVDを買ってきて、BGMがわりに流したりしています。
 彼女は19世紀の生活スタイルを頑固に守っています。文明の便利さを安易に取り入れはしません。画面で見る限り、電気も電話もテレビもありません。水を汲み上げるポンプだけは「有り難い」と話していましたが。自分で使うろうそくも自家製です。
 クリスマスを祝うシーンで、ツリーに本物のろうそくを飾っているのは感動的でした。ツリーのてっぺんに、カラスが飾られているのはおおいに疑問でしたが。
 ターシャにとっての理想の環境を作り上げるのに、どれだけの労力と精神力が必要だったことでしょう。特に、自分にとって不要なものを排除する、頑なといえる程の意志の強さは並大抵ではありません。
 彼女は自分の理想郷を、戦い勝ち取ったというふうに見えるのです。
 テーマの「平和への祈り」と一見関係ない話をしてきましたが、どうすれば平和への道が開けるのかを考えていた時、ターシャの生活態度が思い浮かんだのです。
 平和とは何か、言葉で言い表すのは難しいことです。国で言えば、戦争がない、国民の生命の危険や飢えがないとか、人で言えば、周囲とトラブルがない、自分自身のストレスや葛藤や病苦がない状態であるとか、「〜がない状態」としか表現しにくい不思議。
 マイナスの要因を取り除いていくと、そこに現れるのが平和であるのでしょうか。
 テーマをいただいて、何を書いたらいいのか思い惑うというそのことが、自分が平和の中にいる一番の証拠なのですね、きっと。「み神の給える奇しき平和よ」という讃美歌531番(これには平和という歌詞が14回出てきます)の歌詞をかみしめ、祈るばかりです。 
(Y.F)

戦争の真実
荻田久次郎
 近世は戦争の時代と言われております。日本は日清、日露戦を含め第一次、第二次世界大戦と四度もの戦争をしました。とりわけ昭和16年12月8日の真珠湾攻撃によって開戦の火蓋が切られた太平洋戦争では幾多の犠牲者を敵味方にもたらし、又多くの自然破壊と数知れない悲哀と苦痛を人々に与えました。
 日本国内に於いても、又近隣諸国及び島々に於いても多くの人を苦しめ、殺して来ました。米軍機による本土空襲、広島・長崎への原爆投下による大量の犠牲者がでた後、昭和20年8月15日の終戦(敗戦)を迎えました。戦争と言う名で人を殺戮する事が正当化され、より多くの人を殺す事が正義とみなされて来ました。
 神はモーセの十戒の中で「殺すなかれ」と命じておられます。けれど人々は歴史の中で戦争を止めることなく、21世紀の今日現在もイラク紛争、イスラエル紛争を始めとしたテロ攻撃が世界各地で引き起こされております。私たち人類は、とりわけ唯一の被爆国である日本は戦争の惨めさ、惨酷さを日本国内だけでなく、全世界に言い伝え、発信しなくては。それには私達一人一人が戦争の真実を知らなければなりません。各地にある戦争記念館、広島、長崎の原爆資料館等を訪れて戦争の真実を肌で理解したいものです。
 ここで、埼玉県東松山にある「原爆の図丸木美術館」を紹介致します。
 この美術館は丸木位里、俊夫妻によって建てられ、世界平和を発信する美術館として広く知られています。第二次世界大戦末期に広島と長崎に二発の原爆が落とされ、30数万人の尊い生命が失われました。広島生まれの水墨画家であった位里兄と洋画家の俊姉は原爆投下直後の広島に入り、惨状を目の当りにしました。そして、被爆した人々の苦しみや願いを伝える為に二人で描いたのが大作「原爆の図」です。「あの悲劇を再び繰り返すなという思いを地獄図の中に込めて描くことで、一人でも多くの人に美と希望を見出してもらいたい」(位里兄の言葉)と「原爆の図」全15部は30年に渡り描き続けられました。夫妻は被害者の姿のみに留まらず、加害者の立場も描きました。「南京大虐殺の図」「アウシュビッツの図」「沖縄戦の図」等を描き続けた夫妻の画業は世界中の人々の支持を受け、1995年にはノーベル平和賞の候補にもなりました。(案内書より引用) 
 終戦から62年も経過し、戦争の記憶が次第に薄れて行き、戦争体験の無い世代が多い今日に於いてこそ、私達は戦争の真実を知り、後世代に語り継ぎ世界に発信し続けなければなりません。その為にも是非この美術館を訪問し、戦争の真実を肌で感じてみたらいかがでしょうか。  

   
(おぎた きゅうじろう)

越谷教会月報みつばさ2008年2月号特集「平和への祈り」より


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