今月の特集題  希望に生きる喜び



ほむべきかな 主のみ恵み
中村真砂子
 「神のなされることは皆その時にかなって美しい。」私の好きだったこの御言葉は今有りません。88年の人生を振り返ってみてこの3年の間に肉親を二人天国へ送りました。夫との想い出はアルバムを開いて懐かしんでいます。次男は今だに信じられなくて「今日は」と訪ねて来る気が致します。忍耐強い優しい子でした。61歳の若さで親より先に亡くなるのは、残された者にとっては辛い事です。息子は病を知ってから熱心に近くの教会へ通いました。最後はペンテコステの礼拝に出席し、翌日千葉がんセンターに入院し僅か一週間で病床洗礼をして頂いて亡くなりました。私は今天国で夫と共に見守っていて呉れていると思います。
 私の部屋に幼い男の子ばかり三人の曾孫の写真があり、その前に立つとつい笑みが出て「元気で良い子になってね」と声をかけています。
 私にとって戦争中の体験は忘れる事が出来ません。夫が松山航空隊に勤務していました時「隊に低空で敵機襲撃多数死者有り」と報道されました。私は心配になり着替を持ってバスで行かれる処まで行き、山道を歩いて隊の守衛に身分証明書を見せ、元気な夫に逢えました時は嬉しかったです。
 広島に原爆が投下されました日、夫は、予科練生を連れて広島の山で松根掘りをしての帰りの列車には痛ましい姿の方が乗っていらしたと話してくれました。
 倉敷航空隊に居りました時は連日B29が百機程連隊で飛んで来て岡山・福山に焼夷弾を落し夜は真赤々でした。夫は終戦後直ちに通訳として佐世保・鹿屋に行ってしまい、私は10月中旬出産の身で一人心細くして居りました時、弟弘が母を連れて来て呉れたのです。有難かったです。無事長男を出産し夫の戻るのを待ちました。
 漸く12月末に戻りましたので早速越谷へ帰る事にしました。敗戦後の列車は大混乱でガラスの無い窓から乗り降りし、私が母乳を与えている時私の頭を踏んで男の人が乗り込んで来ました。夫がとっさに庇ってくれましたので無事でした。止る都市は総て焦土と化し、名古屋で下車して疎開先の姉の家に泊めてもらい、やっと安らぎを与えられ翌日無事越谷へ帰る事が出来ました。
 あれから64年が経ちました。戦争によって如何に多くの尊い命が奪われた事でしょう。何故教団は政府に従い軍部に協力してしまったのでしょう。ホーリネスの牧師は妥協せず投獄され亡くなられた方もおられます。私達は深く反省し犯した罪を詫び世界の平和を祈って行き度いです。
 この歳になりますと日野原重明先生のお言葉が身に沁みます。
  一、愛すること
  二、高齢になっても希望を持って何かを創めること
  三、耐えること
と述べられています。
 私は主が共にいて下さる事に感謝し、生ある限り主を賛美して行き度いと思います。
(なかむら まさこ)


母から子へ 子から母への贈り物
− 小さな命の詩集より −
榎本 壽子
 つい先頃の新聞広告で目にした「母になったあなたに贈る言葉」(浜文子著・清流出版)と言うタイトルにひかれ、この2月に出産した娘に丁度良いから送ってやろうと早速近くのスーパーの書籍売り場に走り、取り寄せてもらいました。思いの他早く手元に届いたので娘に送る前に「ちょっとお先に見せてね」と言いつゝ久し振りに新しい本を開く時のワクワク感を味わいながら読み始めました。この詩集の著者は子育てをしながら詩を書き随筆も書き講演活動も、と八面六臂の大活躍の女性の様です。この詩集には全部で22編の詩が収められていますがどの詩も心に深く届く詩でしたので全部御紹介したかったのですが、それは出来ませんのでその中の二編だけを紹介させていただきます。(尚割愛した部分と行間の取り方が違うところがありますがご了承下さい)

     赤ちゃん
  あわて者でもいい 泣き虫でもいい
  手先が不器用でも 音痴でもかまわない
  おまけに 学歴 職歴 賞罰 一切不問
  そのままのあなたがいい そのままのあなたが好き 
  赤ちゃんはそう言いたくて あなたに両手を伸ばしてくる

 「そうか、そうだったのか」私はこの詩を読みながら自分の子育ての頃に思いを馳せ思わず「有難う」と声に出して呟いていました。こんな私でもそう思っていてくれたろうか。だから両手を私にさし伸べてくれていたんだ。そう思うと胸がいっぱいになってきました。子どもが乳幼児期の頃にはその声を聞きその姿を見ているだけで、その寝顔を見ているだけで幸せになり「あなたは我家の天使、天使よ」と一日に何度子どもに頬を寄せたことだろう。次に御紹介したい詩はこの詩集も終りに近いところの一編を写し取ってみました。

     祈 り
  抱き上げた あの日に あなたにさし出した 双つの掌だった 
  その時から 双つの掌は 料理へと 縫いものへと あなたの習わしで動き始め 
  あなたに貰った幸せや安らぎ よろこび   
  あなたの運ぶ戸惑いや苦しさ 切なさ それら 訪れた時間の全てを 
  こぼさぬよう こぼれぬよう 双つの掌に 包み 受け止め 母を生きた 
  もう おとなになった あなたに 何もしてやれない 双つの掌を閉じれば 
  閉じた両手は 祈りの形に定まる 祈ること それが母である私の 最後の仕事
  祈りから生まれた あなただから あの日 さし出した手を 再び祈りの形に据えて
  母を 生きている

 神様からいただいた命、今ここに存在する命の不思議さ、それもこれも神様のご計画であり神様の御業なるもの。感謝の他ありません。     
(えのもと ひさこ)

越谷教会月報みつばさ2009年9月号特集「希望に生きる喜び」より


特 集      HOME