一大シンフォニー
―角を高く上げるー


「地において、海に住む竜よ、深淵よ…主は御自分の民の角を高く上げてくださる。」
(詩編148編7節、14節)





 この詩編148編について「天からの賛美が高きところで始まり、創造主を讃える、被造世界の一大シンフォニーの幕が切って落とされる」(バイザー)と記されている。
 詩編148編において、前半は天の賛美が後半は地の賛美が応え、天と地で神を賛美する歌が響き渡る。
 地にある存在の全て、自然の現象と野の獣、鳥、そして「若者よ、おとめよ、老人よ、幼子よ。」(12節)、全ての者が主への賛美に招かれ、「主を賛美せよ」「主を賛美せよ」と繰り返し歌われている。
 その地にあるものを招く最初の言葉が「地において、海に住む竜よ、深淵よ」(7節)この呼びかけで始まる。竜と深淵、これは神に逆らう世界、神の光を失った世界として語られてきた。神を賛美する事が出来ない世界だ。竜や神の光を失った世界にあるものも神への賛美の場に招かれている。
 とうてい招かれるに値しない世界の者も神の賛美の群れに招かれている。
エフェソの信徒への手紙1章10節に主イエスの業において「天にあるものも地にあるものもキリストのもとに一つにまとめられるのです。」とある。
 主イエス・キリストの十字架は罪の深淵の中に立つ。罪を犯し、神を賛美する事ができなくなった、罪の深みに十字架の主は立ち、命を捧げて、この罪の深みから救い上げ、天と地、この断絶の世界を一つにしてくださった。
 主イエス・キリストの救いはまさに、全ての者を「天と地」が一つになって主を賛美する大合唱の中に招く。
 この天と地の神を賛美する大合唱の中で「角を高く上げる」ことができる。すなわち生きる力、生きる喜び、そして、誇り、平安が与えられていく。
 わたしたちの地上の賛美は、わたしたちの礼拝の賛美は、天上の神を賛美する大合唱につながる賛美だ。

  71歳で教師検定試験の勉強を始め、78歳で按手礼を受けて、伝道者として立った一人の伝道者が、教会の大きな課題を担い、克服し、天に召された。
 ホスピス病棟の医師は、死を前にこれほどの平安な顔をしている人は、今まで2、3人しか知らないと言った。家族が歌い続ける讃美歌に包まれて静かに召された。
「教会を守るために、命がけの仕事をした」(家族の声)。初めは信徒として、そして74歳からは伝道者として。その厳粛な死の時に立ち会った者たちは、悲しみの中に大変感動したという。
 病院の小さな部屋の小さな声で歌われる賛美の声は、天上の神の世界の大合唱と響き合う賛美だ。その死がその人生の終わりではなく、天上の命、神の国の栄光を受け、神の大きな祝福の中に神に受け入れられていく。この大いなる祝福の中に、賛美の群れにすべての者が招かれている。。