第12日

12月9日

 



家畜の初子は生まれたときから主のものであるから、それが牛であれ、羊であれ、だれもそれをささげることはできない。それは主のものである。
(レビ記27章26節)


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ヒツジ
 ウシ科ヒツジ属の哺乳類。野生種は凶暴ですが、家畜化された羊は温厚な性質で、八千年以上前から世界各地で飼育されてきました。ミルクと肉は食用、毛は織物の原料として、皮は家屋の覆いなどに活用されます。
 豚や牛を食べてはいけないという宗教はありますが、羊を食べてはいけないのは、殺生そのものを禁ずる仏教の僧やジャィナ教徒ぐらいのものです。キリスト教でもイエスを「世の罪を除く神の小羊」と呼ぶなど、羊は従順や犠牲といった象徴によく用いられます。
 クリスマス絵画には馬、牛、ラクダなどいろんな動物が描かれますが、聖書の降誕の場面に確実に出てくる動物は羊だけです。羊飼いたちの生活は楽ではなく、牧草地を求めて、夜中に休息もせずに移動し、野宿しながら夜通し羊の群れの番をしました。そんな羊飼いたちに、クリスマスの夜、天使たちがやってきて福音を告げます。羊飼いたちは羊を連れて、イエスさまの誕生を祝いに出かけていき、赤ちゃんイエスさまを拝んだのでした。


ヤギ
 ウシ科ヤギ属の哺乳類。中近東で古代から家畜化されていました。羊よりも粗食に耐え、動作も敏捷なので、山地などの荒れた環境でも飼育できます。ヤギ肉、ヤギ毛、ヤギ乳が利用されています。
 聖書では羊に比べるとあまりいい扱いはされていませんが、ヨーロッパでは、多産なヤギは豊穣のシンボルとされ、北欧神語の雷神トールの乗る戦車を引く動物とも考えられていました。現在でもスウェーデンでは、クリスマスに麦ワラ(やはり豊穣の象徴とされています)で作ったヤギの人形を飾り、新しい年の豊作を祈る、古くからの習慣が残っています。
 中世の絵画でヤギの顔やヤギの足を持った悪魔が描かれているのは、キリスト教がヤギ崇拝を異教の風習として駆逐しようとしたことのあらわれですが、ここからも逆に、かつてのヨーロッパにおけるヤギ人気の根強さをうかがうことができます。


 全世界に分布する、ハト目ハト科の鳥の総称。
 「ルカによる福音書」のクリスマス物語を読むと、マリアの産後の清めの際に、「山鳩一つがいか、家鳩の雛二羽をいけにえとして献げるため」エルサレム神殿に上ったとあります。律法の「出産の規定」(旧約聖書「レビ記」12章)によると、本来は産婦の清めの儀式には一歳の雄羊一頭と鳩一羽を献げることになっています。ただし、貧しくて小羊に手が届かない人の場合は鳩二羽だけでいいという救済措置も明記されています。こちらを利用したということは、ヨセフ家の経済状況は決して良くはなかったようですね。


ロバ
 ウマ科ウマ属の家畜。馬に姿形はよく似ていますが、ずっと小型で耳が大きいのが特徴です。気性が穏やかな上、粗食でも重労働に耐えるため、馬よりも早く四千年前には家畜化され、ヨーロッパ、アジア、アフリカなどで広く農耕・運搬・乗用に利用されてきました。中近東でも古くから親しまれ、イエスがエルサレム入城の際にロバの子に乗るなど、聖書のあちこちにも登場しています。戦車や騎兵など軍用に使われていた馬とは対照的に、民問の日常生活に密着したロバは、平和のシンボルとしても捉えられています。
 使い勝手の良さからでしょうか、サンタクロースもトナカイぞりに乗り換える19世紀までは、プレゼントを満載したロバを随伴させていました。二つのカゴを背負い、片方には良い子にあげるプレゼント、もう片方には悪い子にあげる小石やタマネギやムチがぎっしり。フランスでは荷物運びだけでなく、悪い子の靴の中にフンをしていくという小学生レベルの嫌がらせにも従事します。


ウシ
牛の出す乳は、遥か昔から人類に大きく貢献してきました。栄養豊富な牛乳は、そのままの状態でも、またチーズやバター、ヨーグルトといった加工品にしても、人類にとってとても有用な食料になってきました。聖書には牛は数多く登場します。
「彼は威光に満ちた雄牛の初子/彼の角は野牛の角。」(申命記33:17)と旧約聖書にありますが、牛は雄々しい生き物と見なされていました。また、「特別の誓願を果たすため、あるいは和解の捧げ物として若い雄牛を焼き尽くす献げ物あるいはその他のいけにえとして主にささげる」(民数記15:8)とあるように、牛は羊や山羊と並んで神への捧げ物としても良く使われました。特に特別の事の時に献げられたのが雄牛でした。神様には自分達にとって一番大切で一番良いものを捧げるのが慣わしでしたから、やはり牛はその当時から雄々しい生き物として用いられ、人には無くてはならない生き物だったのです。
生誕の絵画には家畜小屋の牛の絵が描かれている場面が数多くあります。赤ちゃんイエスさまが寝かされていた飼葉桶は牛や馬の餌となる草を入れる桶です。聖書の生誕の箇所に牛は書かれていませんが、そういったことから後世の人たちが生誕の場面に牛を描いたのでしょう。


コマドリ
 スズメ目ヒタキ科の小鳥。オスの顔面から胸にかけては、鮮やかな橙色の羽毛が生えています。十字架にかけられたイエスさまの額に刺さった茨のとげを抜こうとして、返り血で胸が赤く染まったという伝説はよく知られていますが、実はコマドリとイエスさまとの因縁は降誕の日までさかのぼります。
 古い言い伝えによると、世界最初のクリスマスの晩、あらゆる動物たちがイエスさまの誕生を祝いにベツレヘムに集まってきたそうです。その際、コマドリも飛んできて、天使に負けないすごい声量で、喜びの歌を歌いました。イエスさまに最初に歌を聞かせたごほうびということで、コマドリはより大きく美しい声をもらいました。それ以来、コマドリはクリスマスの頃になると美しい鳴き声で鳴くようになったということです。


 ネコ科ネコ属のニャーと鳴く夜行性肉食小動物。北アフリカ原産のリビアヤマネコがペット化され、世界各地に分布しています。人問にはそこそこ馴れるものの、小柄なため肉も毛皮もとれず、ロクに芸も覚えない役立たずですが、貯蔵作物を食い荒らしたり伝染病を媒介するネズミを捕ってくれるため、農村では益獣として放し飼いにされました。中世ヨーロッパでは「魔女の使い」と考えられ、多くの猫が駆除されましたが、これが数度に及ぶペスト大流行の原因のひとつと言われています。現在は主に愛玩用に飼われています。
 トラ猫の額をよく見るとアルファベットの「M」の字のような模様がついていますが、これの由来もクリスマスにまでさかのぼるそうです。動物たちがベツレヘムに集まった際、一匹の猫が感激のあまり生まれたばかりのイエスにじゃれつこうとしました。驚いたマリアはイエスがひつかかれては大変と、とっさに猫の額を押さえました。以来、猫の額にはマリアの頭文字「M」の字がついたとか・・・ただの伝説だとは思いますが。


クモ
 クモ科クモ目の節足動物。
 ドイツのある貧しい家が、モミの木に何も飾るものが出来ず、とても淋しいクリスマスを迎えようとしていました。おまけにクモがツリー一面に巣をはってしまい、情けなさはつもる一方でした。しかし、イブの夜、その家にやってきたクリストキント(南ドイツにいた伝統的なサンタさんの一人)がクモの巣を見て、かわいそうに思い、その巣に触ると、ねばねばの糸はまたたくまに、銀の美しい糸に変わりました。一家は美しく飾られたそのツリーを囲み、幸せなクリスマスを祝うことができたそうです。その伝説からきたのでしょうか、ウクライナ地方ではクリスマスの朝、ツリーにクモの巣がはってあるのが見つかると、幸運のしるしだと信じられています。

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