第17日

12月14日


生き物が進むときには車輪も進み、生き物が止まるときには車輪も止まった。また、生き物が地上から引き上げられるとき、車輪も共に引き上げられた。生き物の霊が、車輪の中にあったからである。
(エゼキエル書1章21節)



 トナカイは北ヨーロッパ、シベリア、アメリカの北極圏に分布する、大きな角とふさふさの毛皮が特徴の、シカ科トナカイ属の大形哺乳類です。意外なことに「トナカイ」は日本語。漢字だと「馴鹿」と書きます。
 もちろん聖書には出てきませんが、クリスマスと言ったら決して外せない動物のひとつです。サンタのそりは八頭のトナカイが引いていると言われますが、トナカイは犬のような整然とした集団行動が苦手で、実際に八頭だてのトナカイぞりなんか仕立てた日には、空を飛ぶどころかマトモに走らせることもできないそうです。また、トナカイは雌雄ともに角を生やしますが、クリスマスの時期に角が生えているのはメスの方。したがってあのそりを引いている、立派な角を生やしたトナカイたちは、全部メスのはずだそうです。
 ラップランドなど北極圏ではなくてはならない家畜で、角も毛皮も骨も有効に利用されます。かってはトナカイ乳もしぼられていました。肉は独特のトナカイくささがありますが、栄養素が豊富に含まれています。もちろん現地にはトナカイ料理を出すレストランもあります。国内でも青森県岩崎村の「サンタランド白神」などで食べられるそうです。
 トナカイと言えば忘れてはいけないのが、「真っ赤なお鼻のトナカイさん」こと赤鼻のルドルフ。ルドルフが誕生したのは1939年、シカゴのデパート「モンゴメリー・ウオード」の宣伝用小冊子に、専属コピーライターのR・L・メイが、サンタのそりを引く9頭目のトナカイの詩を書いたのが最初でした。この詩が好評を博し、数年後には単行本まで出版されました。49年にはメイの義理の兄弟J・D・マークスの作詞作曲でテーマソングも作られ、レコードが発売されるとこれも大当たり。全世界で歌われるまでになりました。それ以後もしばしばアニメ化されるなど、今なお世界一有名なトナカイの名をほしいままにしています。
 ではどうしてサンタクロースのそりをひくのがトナカイになったのでしょうか?
 


それは、1822年のクリスマス・イブにアメリカの詩人“クレメント・ムーア” という人が、自分の子供達に「クリスマスの前の夜」という詩を書きました。 その詩が世界に広まり、皆に親しまれるようになり、それからサンタクロース の乗り物は“トナカイが引くそり”が当たり前となったそうです。




「クリスマスのまえのばん」

クレメント・ムーア/詩  
タシャ・チューダ/絵 
偕成社


あしたはたのしいクリスマス。
床下のねずみもひっそりと しずまりかえった家の中 
だんろの前にはくつ下が ねがいをこめてかけてある。
「サンタクロースは、くるかしら……。」

ベッドですやすや子どもたち おかしのゆめでも見てるのか
しあわせそうに わらってる。
ねじたくすませた母さんが ふっとろうそくふきけすと
「おやすみ。」と 父さんも目をつむる。


たづなさばきもあざやかな ぎょしゃは小がらなおじいさん
ワシよりはやいスピードで 小さなそりはおりてくる。
サンタだ、サンタが口ぶえをふき 
トナカイたちによびかけている!

さあプランサー、それビクスン、
とばせコメット、キューピッド、
いいぞダンダー、ブリッツェン、
かべをつたってやねへ出る。がんばれいっきにかけあがれ!」

はげしいあらしにまいあがる かれ葉のようにかるがると、
トナカイたちはまっしぐら 雪をけたててつきすすむ。
どっさりにもつをつみこんだ そりはたちまちやねの上。
こんどはやねでひとしきり パカパカひづめの音がする。
やがてえんとつでごそごそ ------- ドシン! 
父さん、あわててふりむくと
だんろの口からいせいよく サンタクロースがとびだした。

毛皮の服からぼうしまで みなすすだらけ、灰だらけ。
背中のふくろを下におき いろんなおもちゃをつぎつぎに
出してはならべるその手つき 物売りのおじいさんににていたよ。
サンタは父さんをふりかえって
  「まあ、見ておいで。」というように
目くばせをしてうなずいた。
それからだまってかがみこみ 
一つ一つのくつ下に せっせと入れるプレゼント。



入れてしまうと父さんに しっ、しずかに!とあいずして 
あっというまにえんとつへ。
やねにのぼったサンタクロース ひらりとそりにとびのると
ピューと口ぶえ、またふいた。
アザミのわた毛がとぶように そりは夜空をとおざかる。
だんだん小さくなっていく そりを見おくる父さんは
さいごにちゃんと聞いたのさ 「みなさん、クリスマスおめでとう!」

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