第23日

12月21日

 

     
天使たちが離れて天に去ったとき、羊飼いたちは、「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と話し合った。そして急いで行って、マリアとヨセフ、また飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てた。

(ルカによる福音書2章15節〜19節)
      
      

 

むかしむかし、真っ白いひげの羊飼いがいました。
ひげの羊飼いは、夜が大好き。星たちの歩く道をみんな知っています。
ある晩、杖を手にした羊飼いは、まごの男の子と一緒に野原にたって星たちを見上げていました。
「あのかたはきっとおいでになる」
「あのかたはいつくるの?」

「おじいちゃん、あのかたは金の冠をかぶっているの?銀の刀も持ってるの?緋色のマントを着てるの?」
「ふん・ふん」
男の子は満足でした。
男の子は毎晩ふえを吹きました。ふえの音色は吹けば吹くほど澄んできれいになっていきました。
あの方がおいでになったら、ふくために・・・・・。
誰もこの子のように上手には吹けないのですから。

「おうさまが、冠も刀も緋色のマントを持っていらっしゃらなくても、おまえはふえを吹いてくれるかい?」
ひげの羊飼いは心配そうにたずねました。
「いやだ!」
男の子は首を振りました。
「冠も刀も緋色のマントも持っていないおうさまなんて、ボクはいやだよ」

  

ひげの羊飼いは泣きました。
どうして、金や銀のおうさまを信じさせてしまったのでしょう。
あの方はきっと冠も刀もない・・・でもどんなおうさまよりずっと立派なはず。ああ、どうやってこの子にそれをわからせたらいいのだろう?

ある夜、真っ白いひげの羊飼いが待ちに待ったしるしが 天に現れました。星たちがいつもより明るくきらめいていました。 そして、ベツレヘムという街の上に一つの特別大きな光り輝く星が 止まっていたのです。

天使たちが現れて言いました。
「こわがってはいけません。今日、あなたたちのために救い主が お生まれになりました」
男の子は大きな星の光りのほうへいちもくさんに 走り出しました。大事なふえを抱きしめて、できるだけはやく・・・はやく。

男の子は一番にそこについて、生まれたばかりのあかちゃんを見ました。 あかちゃんは、おくるみに包まれてうまやのかいば桶ですやすやと眠っていました。
男の人と女の人がうれしそうに見守っていました。
羊飼いたちはあかちゃんの前にひざをつきました。ひげの羊飼いはあかちゃんを拝みました。

でもこのあかちゃんが おうさまなのでしょうか?
「いいえ、ちがう!このあかちゃんはあの方ではない!」

男の子はおこって、がっかりして暗い夜のなかへ出て行きました。
ところがそのとき、あかちゃんの泣き声が聞こえてきました。 男の子は耳をふさいで走り出しました。 でも泣き声がどこまでもおいかけてきます。 とうとう、その泣き声は男の子をあかちゃんのところまで連れ戻したのです。
あかちゃんは泣き止まず、みんなでいっしょうけんめいなだめている所でした。
いったいあかちゃんは、何が欲しいのでしょう?

男の子は上着のしたからふえを取り出すと吹き始めました。
いままでのどの時よりも真剣に心をこめて吹きました。

あかちゃんは泣き止むと、男の子をみてにっこりしました。
男の子はよろこびでいっぱいになりました。金の冠よりも、銀の刀よりも、緋色のマントよりも・・・あかちゃんのえがおは、男の子のこころを豊かに満たしてくれたことがよくわかったからです。

女子パウロ会「ひつじかいのふえ」より
マックス・ボッリガー:作 ステバン・サヴィール:絵


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