私の書庫から (作成中)

 

私自身の成り立ちに関わったと思う本を載せていきます。


哲学入門
三木清
岩波新書(赤版)

三木清は、他に「人生論ノート」などが一番読まれていると思うが(そのためか、あるいは主著となるべき「構想力の研究」が中途半端に終わっているためか、哲学者としての扱いは、なんとなく1.5流だが)、やや処世訓ぽさのある箴言集であるそれよりも、彼の頭の中の構造が素朴に出ていて、僕はこちらのほうに夢中になった。

高校時代、1ページに10分くらいかけて読んだ。僕自身の思考パターンの原型(原体験)みたいなものがあるとすれば、ここかもしれない。


学問の方法
ヴィーコ
岩波文庫

17世紀(だったと思う)のイタリアの哲学者だが、デカルトに代表される「北(欧州)」の合理主義哲学に対峙した、「南(欧州)」の哲学の論客。アリストテレスの「弁論術」の系譜につながるものだが、人間の認識、認識の伝達について独特の示唆に富むと思う。

僕自身にとっては、20代後半の頃、懸命に調べたり分析したりしたことをなぜうまくレポートにまとめてうまくプレゼンできないのか、に苦悶していた時、曙光となった。

100ページ程度の本(しかも行間が広い)なので、気軽に読めます。


千利休−無言の前衛
赤瀬川原平
岩波新書

作家で、路上観察の大家(?)。

「目玉を境界として、その外側世界と内側世界が等価なのだ。」

「こだわり」でもない、「独善」でもない、「認識」ということの本当の意味を教えてくれる。


心理療法序説
河合隼雄
岩波書店

ユング心理学の臨床家である河合隼雄は、多筆で極めて多くの著書があるが、そういう人によく見られる「緩み」がなく、また読んでいて、ふと救われることが多い。

本書は、心理療法の基本の考え方が、素人にも分かりやすく綴られていて、コンサルタントにとっても極めて示唆が多い。

僕自身にとっては、「コンサルティングとはどういう仕事か」を考える、拠り所の一つになった。


なぜいま青山二郎なのか
白洲正子
新潮社

「何者でもない人」青山二郎を語った名文。

「(青山は)精神は尊重したが『精神的』なものは認めなかった。意味も、精神も、すべて形に現れる、現れなければそんなものは空な言葉にすぎないと信じていたからだ。これを徹底して考えてみることはむつかしい。生きることはもっとむつかしい。金持ちになった日本人は、これからは精神の時代だ、などと呑気なことをいっているが、相も変わらず夢二の夢から一歩も出ていはしない。」(白洲)

「優れた画家が、美を描いた事はない。優れた詩人が、美を歌った事はない。それは描くものではなく、歌ひ得るものでもない。美とは、それを観た者の発見である。創作である。」(青山)

「美しい『花』がある、『花』の美しさといふ様なものはない。」(小林秀雄)

生きることの質が問われる。戦慄が走る。


レトリック認識
佐藤信夫
講談社学術文庫

人が「認識する」ということ、「認識を伝える」ということの構造が、鮮やかに示される。
言葉とは、「コミュニケーションの手段」である以前に、「認識」そのものであることに気がつかされる。

中でも、冒頭の「黙説」について書かれた章は圧巻で、感動的ですらある。


素足の心理療法
霜山徳爾
みすず書房

(同じ著者で 「人間の限界」 岩波新書青版)

上智大学に長く勤めた臨床心理学者(ちなみに、かつてCDIにいた三島和佳子さんの先生です)であるが、この人の文章は、まるで音楽、殊に宗教(教会)音楽のようである。そこから何かを読み取るとか学ぶとかいうよりは、文章に身をゆだねているだけで、静謐な気持ちを取り戻せる。

河合氏の著書も同じだが、臨床心理家の心には、コンサルタントのそれ(の一面)に通ずるところが多いのではないかと、僕は思う。


隠喩としての建築
マルクス その可能性の中心
柄谷行人
筑間書房(ちくま文庫)

柄谷行人は批評家、文芸評論家だが、どちらかと言えば理が先に立つ人だと思う。理が勝ちすぎて、「含み」のある中に論を完結することが出来ず、議論が円環し自分自身を閉じた世界の袋小路に追い詰めていく。その論理過程の厳しさは瞠目すべきものだが、一方で僕はそれに辟易してしまうこともある。だだ、上記二著は、その論理の問題をかなり直接的に扱っていてとてもスリリングに読める。「論理とは所詮トートロジー」である、しからば…。


構造と力
浅田彰
勁草書房

ポスト構造主義の参考書(と言ったら叱られるか?)の古典。

そう言えば、筒井康隆の「文学部唯野教授」(岩波書店)も、スタイルは全然違うけど、同じく参考書。でも、その参考書に更に「サブテキスト」があるらしい。


この人を見よ
ニーチェ
岩波文庫 他各社

ニーチェの古典。


「内なる近代」の超克
福田和也
PHP研究所

「新・保守主義」(?)評論の若手。最近は、いろいろ書いているが、出世作となったこの頃のものが新鮮である。


メタフィジカル・パンチ
睥睨するヘーゲル
残酷人生論
考える日々   他

池田晶子
文芸春秋 他

女性の書き手が面白い。

この人は、本当のことを書いていると、思う。


仮面の国
柳美里
新潮社

最近は、女性の方が、ものの本質に正直なのでしょうか?

男性の書くものは、どうもただ威勢がよかったり、逆に妙に暗かったりで、本当のところが見えてこないですものね。


そんなバカな!
竹内久美子
文芸春秋

最近の遺伝学・進化論の成果を、面白く、わかりやすく書いています。

上記の他にも多数の著作があり、どれも楽しめ、また示唆に富みます。


生物進化を考える
木村資生
岩波新書

進化論が変わる
中川英臣/佐川峻
講談社ブルーバックス

共に、進化論を知るにはわかりやすくて良かった(が、この分野の進化も速いので、もう既に古くなったかもしれない)。


アフォーダンス〜新しい認知の理論
佐々木正人
岩波書店


小津安二郎の日記
都築政昭
講談社


喜遊曲、鳴りやまず〜斎藤秀雄の生涯
中丸美絵
新潮社


フルトヴェングラーかカラヤンか
W.テーリヒェン
音楽之友社


好妻好局
升田静尾
文芸春秋

(升田幸三「名人に香車を引いた男」)

「新手一生」を掲げ独創的な将棋でファンの多かった升田幸三は、羽生善治四冠王が「最近は升田先生の棋譜を研究しています」と言ったことでますます評価が高まっている(?)が、その生き方も天衣無縫で気持ちの良いものだ。本人の自伝的著作である「名人に香車を引いた男」も面白いけれど、未亡人の書いた本書には、何とも言えない後味の良さがある。


会社は人、人は情け
浅野喜起
致知出版社


雇用・利子及び貨幣の一般理論
J・M・ケインズ
東洋経済新報社

理論経済学専攻ですので、最後に申し訳程度に、経済学の名著を。

「一般理論」は極めて示唆に富む、社会観察、人間観察の書だと思う。いつしか、それを論理化することが経済学のようになり、「一般理論」を「論理体系化」するのがケインズ以降の20世紀の経済学の歴史のようになってしまった感があるが、生の社会事象/経済事象を観察するその眼において、その洞察力の豊かさは、ハイエクと並んで、やはり別格なのだと思う。


個人主義と経済秩序
F.v.ハイエク

ゆっくり暇な時間がある時でないと、とても読めるものではないと思いますが、挑戦してみる価値はあると思います。