2002/9/7-9/8 タヌキと遭遇


毎日厳しい残暑が続くので、そろそろ山が恋しくなってきた。ちょっと涼みにいってこよう。3時ごろ広島を出て、4時ごろ小板に到着。日差しはまだ夏だけど、風はすっかり秋になっている。

畑に行ってみると、おふくろさんは畑でスイカを収穫中。

畑の隅ではコンニャクがすくすく育っている。コンニャクが食べられるようになるまでには、植えてから4年ぐらいまたないとだめらしい。農業は、根気だ。。

前回、お引越しをしたミツバチは、残念ながら全滅した模様。でも、巣箱の出来は上々だったらしく、ほどなく別のミツバチ一家が入居。最近は巣箱に入りきらないのか、たくさんのミツバチが入り口に固まって夜明かししているので、またまた親父さんが腕をふるい、一回り大きい巣箱を増設したとのこと。

巣箱を見に行くと、なるほど古い巣箱には蜂たちがひっきりなしに出入りしている。冬に備えて秋の花の蜜をせっせと集めているんだろう。養蜂家はミツバチを冬越しさせるために、@巣箱に防寒を施す。A蜜をとった後に砂糖水を代わりにいれておく。のだそうだ。

畜舎の先の川沿いは、もうすっかり秋模様。

ワレモコウは今が盛り。むこうに見えるのは深入山。

イヌタデも満開。

久しぶりにヤマボウシの実を食べたくて、おふくろさんと弟と三人で牧場めぐり。春にあんなに花が咲いていたのに、どこを探してもヤマボウシの実が見つからない。よくよくみると、青い実の隣に、実がついていた痕跡だけがたくさん残っている。どうやら、赤くなるはしからカラスが食べてしまうらしい。カラス相手では勝ち目がない。

この先に、サルナシがあるはず、とおもって探すと、あったあった、数メートル上の松の枝に絡まって、たくさん実をつけている。キウイそっくりでおいしいんだけど、あんなに高いところにあるんじゃ、それこそサルしかたべられない。

今年はクリは豊作らしく、青々としたイガをたくさんつけている。これは、秋本番が楽しみだ。

牧草地の土が引っかきまわされているのは、イノシシ一家の仕業。このあたりでは、田んぼや畑もこの調子で、ずいぶんやられているんだって。

牧場めぐりを終えるころには、もう日が暮れていた。

最近、家の近くにタヌキの親子が出没するらしい。魚の骨とかをやると、1mぐらいのところまで近づいても平気だとか。ぜひとも写真がとりたいなー。と思っていたら、家の横の暗がりに2匹の黒い影。てっきり実家の猫だとおもって声をかけると、あわてて茂みに引っ込んだ。動きがどうも猫らしくない。もしかして、例のタヌキかも。カメラの準備をしてから、魚の骨をとってきて、玄関の前においておき、待つこと数分。玄関前の畜舎の暗がりに何かが動く気配。そのままじっとみていると、そろそろと魚の骨に近づいてくる。1匹、2匹。最初は少し警戒しているそぶりをみせたものの、魚の骨を食べ始めると、夢中でえさを取り合っている。フラッシュをたいてもわれ関せず。結局3匹の子狸を確認することができました。

翌日、少し早起きをしたので、散歩に出かける。大規模林道を通って牧場の裏からぐるっと回ってくるコース。

大規模林道の路肩は満開のヤマハギでピンク一色。近づくと、蜜を求めて集まってきた蜂などの羽音がぶんぶんうるさいぐらい。

茂みの影には、夏の名残のツユクサ

なんともいえないやさしい色合いのアキノノゲシ

牧場の一角ではキセキレイがせっせと羽づくろい。

牧場のそこかしこではアキアカネがたくさん飛び回り、有刺鉄線の上で並んで羽を休めている。

太いイヌサンショウの木の枝先には、青々とした実。へー、こんな実だったんだ。

牛たちを驚かせないようにと、繁殖牛群(母牛と子牛たち)用の畜舎の前をゆっくり通り過ぎようとすると、牛たちがどんどん集まってくる。おとなしい草食動物の牛とはいえ、これだけ集まると大迫力。

写真を撮っている途中で、牧草地の嫌われ者、真っ黒な種をいっぱいつけたギシギシをたくさんみかけたので、ナイフと飼料が入っていた紙袋を抱えて、ギシギシ取りに出発。ギシギシは、帰化植物の多年草で、朝鮮人参のように太くて長くて枝分かれした根っこを持つ。秋口になると大量の種をつけて、それが落ちてどんどん増えて一面ギシギシばたけになってしまう。ギシギシだけを狙って枯らすような都合のよい薬などあるはずもなく、一本一本手でとらないといけない。昔は、北海道から取り寄せた特性のクワで、一本一本抜いていたりしていたけれど、今は、とうが立たないうちに葉を切り取って、薬を根元にかけることで退治するようになった。昔に比べればずいぶんと楽になったけれど、それでも一本1一本手作業なのは変らない。農業って、本当に根気の要る仕事だ。

そういえば、小学生のころ、親から「ギシギシの根っこ1本につき1円あげる」といわれ、弟と2人でせっせとギシギシ抜きに勢を出したことを思い出す。子供といえども、何とか楽に懸賞金を手に入れようと知恵をしぼり、抜くのが大変な太いギシギシはそっちのけで、芽が出たばかりの小さなギシギシが密集しているところばかりを狙ってせっせと集めたものだ。成果報告の際には、裂けた根っこの切れ端や、何の根っこやらわからない髪の毛のようなものまで数えて、親に懸賞金をもらいにいった。そのせいか、ギシギシ抜きの懸賞金はすぐに廃止されてしまった。

一袋分集め終わって一休み。ちょっと涼もうとおもって、木陰にはいると、そこはすっかり山の中の風情。

これ、よく見かけるけど、なんだったかな。緑のイガが美しい。(後日ヤマボクチと判明。これから花が咲くのだそうだ。)

牧柵に、見慣れない花。トケイソウかと思ったけれど違ってた。ジイソブ(おじいさんのそばかすの意)という花だって。よくにた花でバアソブって花もあるそうだ。一体だれが植物の名前をつけてるんだか。。

すぐそばに、ミツバアケビのつるを発見。実がなっていないかな、とおもって探したら、あったあった。まだ時期が早すぎて食べられないけど、ここならカラスに見つからなくてすむかもしれない。

写真を撮っていると、首すじにチカッと痛み。なにかにさされた!スズメバチだったら大変だし、いったん家に戻ることにする。

ギジギシの袋をかかえて大規模林道を帰っていると、三脚の上に立派なカメラを取り付けて、満開のハギの写真を撮っている女の人がいる。もしかしたら、Web上でニアミスしているかもしれないなあ、とおもって、声をかけてみた。本当は聖湖にいきたかったんだけど、道を間違えてここに入ってきたんだそうだ。ハギがあんまり見事なので、そのまま通り過ぎることができなかったんだね。花好きの人はみんないっしょだなぁ。

とりあえず、スズメバチではなさそうなので、薬をつけてもらってから様子を見る。

午後、牧草をロールにする仕事をはじめるらしいのでついていく。

作業現場は昔水田だったところを牧草地に転換した場所。その場所のすぐそばに、コスモスがたくさん植えられていて、快晴の秋空にそびえる深入山の景色を引き立てている。

牧草のロールは、刈り取り→天日乾燥→集草→梱包→ラップ→野積みという手順で作られる。今日は集草と梱包作業。集草は親父さんが担当。サイドレーキ(ホイール型)をつけたトラクターで作業開始。

このサイドレーキ、放射状に取り付けられたツメの形状と角度のおかげで、トラクターで引っ張るだけで勝手に回って、引っ掛けた干草を左に送り、どんどん畝(うね)にしてくれるというシンプルながらも優れもの。トラクターもサイドレーキも30年ぐらい前から現役だそうだ。機械のメンテナンスも大事な牧場の仕事の1つ。

作ったうねは、専門用語ではウィンドロー(風の列)という。風が通り抜けるように、ふんわりと盛り上げた草の列のこと。ある程度まで乾いたら、広げておくよりも、ふんわり盛り上げて風のとおりをよくしたほうが、早く乾燥するんだって。

続いてこのうねをロールにする。こちらは弟が担当。

まずは、機械の整備。グリスをさして燃料を補給する。
牧草をロールにする機械(ロールベーラ)の中身はこんな風になっている。

下の部分から引き込まれた牧草が、中でくるくる回るうち大きなロールになるという仕組み。これは外からまく方式で、まきがゆるくなるのが特徴。他に中心からまく、芯巻き方式があり。こちらはしっかりまける。カナダでみたロールがきれいな円柱型になっていたのは、芯巻き方式だからだろう。ロールをラップしてサイレージにする方法が考案されるまでは、乾燥させた牧草を巻くのに使われていたが、芯巻き方式では貯蔵している間に熱がでて、発火した事故もあったとか。

メンテも終わり、作業開始。

うねの上をトラクターでまたぐようにして、ロールベーラをかけていく。

ロールベーラの下で回転するツメにひっかけられて、牧草がどんどん機械の中に引き込まれていく。

いっぱいになったところで、ぱっくり、

ごろん。

はい。できあがり。

どの機械もよく出来ていて、おもしろいね。