特派員レポート

魚と事業


こないだ、郵便屋さんがきたんよ。
ほいで、ちょうど魚釣りするところを通っての。

そいから、
「魚釣れますか」
「いや、釣れんよぉ」

そいから、魚釣りの話になっての。
「そいで、みうらさん、魚を釣りんさるんかい?」
「わしゃぁ、釣らんのんよ、突くんよ。はぁ、24ぐらいまでやったかの。
ほいじゃが、魚突くのものぉ、実際仕事をやってみりゃ、仕事にものすごぉつながっとっての。」
「えっ?わしも魚を釣るんですがの。」

「わしゃぁ、あんたぁ、
魚が、ひらべ(注:ヤマメ)が、岩のところへぱっとはいっていくのを見つけるでしょうが。
ホコをこう、持ってく。
持ってくが、魚の真ん中ねろうたら、まずあたんねえ。
ぱっと突いたら、水の振動で、もう魚は知ってから、前へさあっと逃げる。
そうすると、こう、身構えといて、
どのぐらいのスピードで、前へどのぐらい出るちゅうてよんで、胴体じゃなくて、鼻先にたーんとやらにゃあ。
魚が逃げた後を突いたら、せっかく研いだホコの先はわやったれになるわ、魚は逃げてしまうわ。

そうかゆうて、前へ前へいくばっかりかゆうたら、
わしゃあ、こまい(注:小さい)ときに、手長えびっていう、河口なんかにおる大きなえびを捕りよったけども、
あいつは前へいかずに、後ろへいくんじゃ。ターンと後ろへ飛ぶんよ。
後ろのどの角度へ、どっちへ飛ぶかいうて、こうタモを持ってっといてから、前へたーんとやると
ぱーっと、タモへはいるんよ。

ほいで、わしゃ自分で仕事をするときに、今牛が儲かるけえ、牛をこうて儲けてやろう、という考え方は捨てたんですよ。
何年か先、何十年か先をターゲットにして、そのターゲットへいくためにどうすりゃぁええか、ちゅうことを考えて歩いたんよ。

今みたいに経済変動が激しい時代にゃぁ、やっぱり、胴中狙うてあたるわきゃなぁんじゃけぇ。
みんなが胴中狙うんだったら、やっぱり、一歩先をねらうか、この、相手の魚がどっちへいくかちゅうのを読んで走るほかにゃぁ手がない。」

そしたら、いうことがええわぁ、
「あれでも、わしも、魚を釣ってやりましたが、そこまで考えたことはありませんでした。
魚釣って、”ああ、釣れたあ、おもしろい”、それだけだったんですが、
そういやそうですのぉ、やっぱり、そういうことになりますのぉ。」

それがタイミングじゃけぇ。事業ってのはそうだけぇの。
自然の中に、ものすごい教材がえっと(注:たくさん)あるのに、みんな、みな見落としとるんじゃけぇ。

そいで、そのときに郵便屋さんが、
「わしゃ、魚釣ったが、まさかそがぁなことに結びつくこたぁ、思うちゃおりませんでしたが、
なるほど、いわれてみりゃそうですのぉ。
今、よそでこれを売りよるけぇちゅうて、同じものつくったんじゃ、だめなんですのぉ。
そりゃ売れるわけがなぁですのぉ。
空ばっかり突きよるんだけぇ、あれで儲からんのでさぁや。」

(2003年4月29日 見浦哲弥話す)

<オリジナル音声はこちら>

(掲載:2003年6月10日)