こっぺ探偵の事件簿


発端

2002年3月7日、こっぺ探偵事務所に風変わりな依頼メールが舞い込んだ。
依頼人はカナダ在住のおば。
依頼の内容は人探し。おばのメル友のエジプト在住の87歳のおばあちゃんが、日本人の昔の知り合いを探しているという。しかし、この人探し、半端ではない。

尋ね人は、1960年ごろスエズ運河の拡張工事かなにかでエジプトのアレキサンドリアにいて、エジプト在住のおばあちゃんのところによく遊びにいっていたらしい。

手がかりは、現在67歳ぐらいであることと、当時の名刺の文面のみ。英語の名刺には、水野組という建設会社らしい会社の名前と、現在のものとは違う広島市の中心地の住所。

会社をさがせ!

さすがのこっぺ探偵もこれにはこまった。なにせ今から40年以上も昔。会社があるかどうかすらわからない。

まずは、広島市の電話帳で「水野組」を探してみた。やっぱり、ない。
でも、なくなったとあきらめるのはまだ早い。会社が大きくなって、事務所を移転している可能性もある。
そこで、次はインターネットで探してみることにする。
これで見つからなかったら、こっぺ探偵事務所の実力からして万事休すだ。

Yahooで「水野組」をさがしてみると、検索結果の中に「社名を水野組から五洋建設に変更」という記事を発見!。

五洋建設といえば、有名な建設会社だよな、と思いつつ、五洋建設のホームページを探し、「会社沿革」を読んでみると。。。なんと、「1961年、スエズ運河の改修工事を受注」と書いてある。

これだ!。間違いない。インターネットの威力に改めて感動。

尋ね人はどこに?

さて、会社は見つかったが、どうやってこの人を探そうか。
幸い、五洋建設のホームページに問い合わせフォームのページがあったので、ままよと事情を書いてみる。反応があったら、日本もまだまだ捨てたもんじゃない。なければ、世も末だ。

すると、翌日、五洋建設広報部の方からメールが入る。難しいかもしれないが、調べてみるとのこと。ありがたい。日本もまだまだ捨てたもんじゃないぞ。

そして、3月11日、広報部の方から、見つかったとの連絡が。
なんと、関係会社の代表取締役社長とのこと。えー、そんなえらい人に連絡するのか。。しかし、ここでひるんでなるものか、と、取り急ぎ事情を説明したFAXをおくってみた。

ところが、その翌日、広報部の方から「残念ながら同姓同名の人違いでした」との連絡が。。うむむ、67歳といえば、とっくの昔に定年退職している年齢。知り合いが社内に残っている可能性も低い。これは無理かもしれないなぁ。

おばに話すと、五洋建設の方も一生懸命探してくれたんだし、残念だけどあきらめます。と返事が来た。

こうして、この人探し、残念ながら未解決事件ファイルに保存されることになったのだが。。

果報は寝て待て?

依頼メールが飛び込んでから7ヶ月余経過した、10月18日のこと。
五洋建設の広報部の方から見つかったとのメールが届いた。なんと、あれからずっと探していてくれたんだ!感激で胸が熱くなった。

早速、教えていただいた電話番号に電話する。最初に若い声の男の人の声。取次ぎをお願いしてしばらく待っていると、年配の男性のいぶかしげな声。さぞかし、怪しい電話に思えるだろうと、しどろもどろになりながら事情を説明した。

「確かにそれは私のようだが、申し訳ないが、その人のことを思い出せない」と気の毒そうに話す。当時、スエズ運河改修工事の技術者の一人として、エジプトに出張していた折、現地の言葉を覚えようと、たくさんのエジプトの人と交流していたのだそうだ。

「お手紙出してもかまいませんか」とたずねると、「思い出せないかもしれないけど、いいですよ」と快諾していただき、住所を教えてもらった。教えてもらった住所をおばにメールで送る。おばも、よもや見つかるとは思っていなかったと、大喜び。

本当に、五洋建設の方の骨折りの賜物である。本当にありがとうございました。

こうして、無事、この難(?)事件は解決したのだった。

後日談

その半年後の2003年1月、NHKの人気番組「プロジェクトX」でスエズ運河改修工事が取り上げられた。
もしやと思ってみていると、やはり、「水野組」の物語だった。あの尋ね人がかかわっていると思うと、番組を見るのにも熱が入る。そのスエズ運河改修工事の詳細記事が、五洋建設のホームページに掲載されているので、是非ご一読を。URLはこちら。http://www.penta-ocean.co.jp/suez_story/top.html

(掲載:2003年5月4日)