結構ネタバレ含みますのでご注意を(全キャラ分)
なお、リーフ/アクアプラスより出ているWA(ホワイトアルバム)の公式ガイドのSSをもじったものだそうです
「寒い中、集まってもらってごめんなさいね」
頬に手をあてながら、秋子さんは本当に申し訳なさそうに言った。
「全然いいよ!秋子さんにはいっつもお世話になってるし」
と、人一倍元気なあゆの声が、水瀬家のリビングに響き渡った。
リビングには、秋子さん、名雪、あゆ、栞、舞、真琴が集まっている。
なんでかと聞かれても困る。
俺が起きた頃にはもうすでにこの状態だった。
名雪に何かあるのかと聞こうとしたその時、
「祐一さんも揃ったことだし、そろそろ始めましょうか」
と秋子さんが言った。
「では、今から祐一さんの淫猥罪の審議を始めます」
「なんですと?」
思わず顔を上げると、そこにはいつの間にか閻魔大王らしきコスプレをした秋子さんがいた。
水瀬家ウォーズ~乙女達の逆襲~
いきなりすぎて、頭がついていかない。
「いんわいざい。祐一知らないの?学校で習ったでしょ」
横に座っていた名雪がさらりと言う。
「いかに女性に悪いことをしたかっていう審議よ。では原告、名雪から」
げ、原告?
(名雪、立つ)
「はい‥」
さっきとは打って変わって、名雪は静かに口を開いた。
「私は朝が弱いです。目覚ましがいくつあってもなかなか起きられません。
祐一はそれに目をつけて、毎朝部屋に押し入ってきました」
「ちょ、ちょっと待て!俺はただ‥」
「下がってなさい、被告」
「朝だけじゃ飽き足らず、試験前には毎晩入ってきました。
そして、嫌がる私を無理やり連れて、雪の降るベランダへと連れ出しました。」
「い、いや、それは名雪が‥」
「そして私は‥」
(名雪、泣く)
「犯されました」
「おかさ‥」
‥‥れたって、そんな。
「もういいわ、下がりなさい」
(名雪、退場)
「そんな!違いますよ、秋子さん!!」
俺はわめく。
「閻魔大王よ、秋子さんなんて気安いわ。罪人はなかなか罪を認めないものよ」
「名雪!」
と、辺りを見回しても、名雪の姿はどこにもなかった。
「あれ?」
「では次‥」
(栞、立つ)
「栞っ!」
そうだ。
栞なら俺の身の証を立ててくれるかもしれない。
「栞、俺の、俺との話をみんなにしてくれよ!」
「はい」
栞は頷いた。
「私には姉がいます。いろいろ事情があって満足に姉に会えません。
そんな姉に会いに学校の中庭に来ていた私を見つけて、祐一さんは『アイス一緒に食べないか』ってしつこく誘ってきました」
「ち、違っ!設定が逆だよ、栞!」
「祐一さんの私への陵辱は、実はその前から始まっていました。
人気のない、商店街の外れの小道で、重病人の私に頭から雪をかぶらせました」
いや、かぶらせたのはあゆだ。
「来る日も来る日も待ち伏せされて、卑猥な言葉で私を悩ませました。
そしてついにはお姉ちゃんまでも、夜の学校に呼び出して」
「俺が呼び出されました」
「私が学校へ通えるようになっても、しつこく付きまとって、そしてついに‥」
(栞、泣く)
「ついに、どうしたの?」
「ついに‥犯されました」
「しお‥!」
どうしちゃったんだ、栞まで‥。
「それからも公園や中庭で‥」
「もういいわ、下がりなさい」
(栞、退場)
「ああ、聞いているだけで妊娠しそうですね」
「な、何かの間違いですよ!」
俺は声を大に叫んだ。
「マチガイとキ○ガイを間違えて使ってはダメよ」
「あ、秋子さん!」
「では次の方‥」
(真琴、立つ)
「真琴‥」
孤独の縁にいた彼女。
真琴だったら、今の俺の、誰ひとり味方になってくれる者のない境遇を判ってくれるはずだ‥。
「私には両親がいません。死にました」
「いきな設定と違ってるし!!」
「そんな一人ぼっちで空腹だった私に、祐一は『覚悟!!』って言って襲ってきました」
「あら、まぁ」
「ある日は私の肉まんを取り上げ、ある日はねずみ花火を部屋に投げ込み‥毎晩毎晩襲われました」
「俺が襲われました」
「そんな日々が辛くて辛くて逃げ出した私を、山の奥深くまで追い詰め、ピロのいる目の前で‥」
(真琴、泣く)
「私は‥犯されました」
「あう‥」
そりゃ、確かにあのときピロはいたけど‥。
「真琴、もういいわよ」
(真琴、退場)
「‥どう思う?」
秋子さんの‥いや、閻魔さんの冷たい目が俺のそれを捉える。
「どう‥って」
めちゃくちゃだと思う。
「まだ反省の色なしね。次の人‥」
(舞、立つ)
「舞‥」
そうだ、こいつはウソとかつけない奴だ。
証人にはうってつけじゃないか。
「犯されました」
「いきなり!」
「もう少し、詳細に‥」
秋子さんもさすがに困っている。
「祐一は夜な夜な学校にいる私に近づいてきました。
夜食を持ってきてくれたのは嬉しかったです。でも、それは祐一の巧みな作戦でした。
だんだん彼の行動はエスカレートしていき、負傷している私を階段から突き落したこともありました。
そしてある夜、友人の‥佐祐理のことでショックを受けていた私は‥
誰もいない夜の教室で、犯されました」
まだ他の3人とは違って、涙を流していないのが唯一の救いだった。
「でも私は決して『愛してる』とは言いませんでした」
(舞、泣く)
「そうしたら、祐一は、私のことをレズビアンだと‥」
こ、ここで泣くか。
「肉体はどうでもよかったんです。でもその言葉で最高の陵辱を受けたと感じました」
「まさか祐一さんが、肉体だけでなく、精神をも辱めるなんて‥」
(舞、退場)
「祐一さん‥見そこなったわ」
「あうあう」
「じゃあ最後に、あゆちゃん」
(あゆ、立つ)
「あゆは‥あゆは信じてくれるよな、俺のこと‥」
「当たり前だよ」
そう言ってあゆは秋子さんに勇ましく向き直った。
「祐一くんがそんなヒドイ人じゃないってことをボクが証明します!!」
頼もしいぞ、あゆ!
「ボクと祐一くんはずっと前に会っていました。そして数年ぶりの再会。
おっきくなった祐一くんは、とっても優しい人でした。
孤独に商店街を逃げるボクに、甘い言葉で近づいてきてくれました」
「秋子さん、こいつとは食い逃げと買い物中の学生の関係です」
「被告は下がってなさい」
「ボクと会えないときは、他の女の子といつも楽しく遊んでくれていました。
おかげでボクは探し物を探すことができたんです!」
‥もう少し言葉を選んで言ってくれ。
拍手喝采が起こっても可笑しくない状況だ。
「そして最後は一緒に探し物を探してくれて。他の女の子はどうしたのってきいたら『あんなのどうでもいいや』って言ってくれました」
言ってない。
「そして‥」
(あゆ、はにかみながら)
「犯されました!」
そこは一緒かぁ!!
しかも何を嬉しそうに照れてるんだ、あゆは。
「祐一さん、有罪」
「え!!」
なんで驚くんだ、あゆ!
あゆの瞳に、じわりと涙が浮かぶ。
「ごめんなさい、祐一くん。ボク、力になれなくて‥」
「そうかなぁ‥」
充分なったと思うけど。
有罪への。
「祐一さん」
未だに閻魔の格好の秋子さんがじっと見つめながら言った。
「な、なんですか‥」
「選択権をあげます、最後の情けです。もう1度、やり直していらっしゃい」
「は?何をですか?」
「今登場した5人の中から1人だけ選んで、もう1度出会いのところからやり直すのよ」
俺の前に、5人のそれぞれの顔の載ったカードが出される。
「さあ、選びなさい」
‥よく判らないけど最後の選択だ。
選ぼう。
そして選んだカードを手に取ろうとしたとき、
「あら、まだもう1枚残ってたわ」
と、もう1枚のカードが、選択肢の前に浮かび上がったのはほぼ同時だった。
(暗転)
あれから、最後に選択した人と俺は結ばれた。
あの日、起こった出来事は未だに夢だったのか現実だったのか判らない。
でも今、こうして考えてみると、あの不思議な審議が行われて本当によかったと思える。
そうでもしなかったら、今こうして俺の腕の中で寝ているコイツとは出会えなかっただろうから。
「おい、そろそろ起きろ」
ベッドから起き上がりながら、体を揺する。
「う~。今何時?」
「8時。早く準備しないと遅刻するぞ」
「くー」
「寝るな!」
「もう、祐一のいぢわる」
そんな拗ねた北川(旧姓)潤を見て俺は、やっぱりかわいいな‥と、もう1度思った。
(Fin)
<コメント>
WAの公式ガイドに載ってるSSをもじったKanon版です。
しかも初のSSです☆
Kanon、ちゃんとクリアしました。
真琴の話は、相当泣けました。
でもやっぱり名雪が1番のお気に入りです☆
誤字脱字、表現等がおかしかったら修正願います。
18禁の場合等は、H.Nを昔に戻します。
いろいろ危険なんで(笑)
『宮野想良&鳩乃潤』時代‥懐かしいねぇ(死)
2002.4.21
鳩乃 潤
想良:いかん……編集の為に2回読み直したがどうしても『そこは一緒かぁ!!』で笑ってしまう……
2号:鳩乃さん、本当にありがとうございますね
想良:おい……なんでそんな他人行事に物を言うんだ?
2号:??
想良:あんた、正式名称は「キュアー2号」だよな
2号:そうだな
想良:1号は?
2号:まさか……
想良:そういうこった
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