メンテナンス

グリースと潤滑
あるサイクリストが
   「1万キロ走行」した事と併せて「雨中走行」が多かったので
   これを機会にハブベアリングにスプレー式潤滑剤を使用しま
   した。果たしてその処理が正しかったのか疑問に答えました。
▼スプレー式潤滑剤
スプレー式潤滑剤は大まかに分けるとオイル系とグリース系となります。

オイル系は防錆と軽負荷部の潤滑並びに錆び付き浸透剤を兼ねてます。

グリース系は開放型動力伝達(例:チェン)等に使用されております。

スプレー式の共通点は潤滑部に潤滑剤を浸透させる素材を含んでいる。
▼グリースの構造
潤滑油となる「基油」と基油を保持する「増稠剤」で構成されます。
増稠剤(増ちょう剤)は石鹸基でその網目に基油が毛細管力によって
保持されたり、増稠剤表面に吸着したりしていると考えられてます。
▼グリースの潤滑
グリースに外力が加わると、その程度に応じて構造が歪んで基油が
軸受け部に出てきて潤滑する。外力が無くなると基油は増稠剤網目の
中に戻っていきます。擬似的に言うとスポンジに含ませた水に例られ
、ギュッと握ると水が出て、弛めると水は吸い込まれて行きます。
外力に応じ自動潤滑が出来るのです。
特に、内封(封印)された軸受け部の潤滑には最適なものです。
(注記:外力 機械的荷重、熱負荷等々)
▼スプレー式グリスを注入すると!
前述の通りスプレー式は外装向けと考えれば浸透力が弱いと軸受け
部分に潤滑剤が到達できません。強い浸透剤を含むスプレー式グリ
スをホイルベアリング(内封:封印式)に注入すると基油が溶け出
したりグリース構造に支障が生じる可能性もあります。
時にホイルベアリングのオイルシール(防湿・防水・防塵作用)が
膨潤や硬化してシール性能を低下させてしまうこともあります。

従って、グリース内封(封印式)軸受けにはスプレー式潤滑剤は使用
しないようにして下さい。
 ◆ シールの隙間から基油が出てくるかどうか見てみよう。
   出てこなければ暫く基油の流出の有無を見てみましょう。
 ◆ 基油が出てきたら分解清掃しグリース注入して下さい。
> スプレーグリスをシューッと何度も注してみたのです

外から中に向かって「シューッ」と注すのは中にゴミを入れるよう
なものですのでやってはいけません。軸受け部にゴミ噛みを起こし
てボールやレースに傷を付けてしまいます。傷の確認はホイルをゆ
っくり回すとゴロゴロと手にその感触が伝わってくるので確認でき
ますね。
> 注す前と後とで変ったような変らないような・

との事なのでゴミ噛みはないと思われます。老婆心ながら決して外
からの注油はご注意ください。(やらないことです)
> 前輪はほとんどスーッと回るのですが,後輪は結構グリグリしますね。
▼グリグリの要因
その1:ボールの真円度(精度が低い、良否混合)
その2:レース(ボールが転がる面)の精度(地傷など)
その3:ボールとレースの締め具合(プリロード過大)
その4:ゴミ噛み(ボールがレースを転がる時に衝突・衝撃発生)
    まともな製品であれば有り得ない?と思います。
    この要因は人的(技術・知識レベルが低い)に起きてます。
その5:浸水・結露(シール不良)での錆による損傷
以上のような機械的要因が殆どです。
▼グリグリの処理
ボールやレースの精度問題であれば良品と交換以外方法はない。
また、錆による損傷は傷が深いので良品と交換以外方法はない。
自転車業界語?で言う「玉当たり」(プリロード)の点検或いは
再調整をしてみましょう。これで治ることもありますよ。
▼グリグリ所見
回転中に引っかかるようであればハブベアリングを交換する。
手持ちで感じる軽いグリグリは荷重をかけると(乗車時)消える
ことが有ります。走行前に点検して様子を見て下さい。
> 僕が自分でやったことはそもそも意味が無かったのか,
> 逆に悪いことをしたのか?よく分かりませんです。
 ★ メンテナンスの基本は
     【正常な状態を熟知しておく】 この一言です。
機械のメンテナンスは従前の状態がドウだったか熟知しておかな
ければなりません。事をし終えてからでは前後の状態を比較検討
する事が出来ません。やったことや結果の良否を考える良い機会
では無かったのではないでしょうか。何もしなかったらこの疑問
すら生まれてこなかったでしょう。これを機会にメンテナンスの
事やメンテナンスを受ける自転車店の知識・技術・技能レベルを
確認してみたらドウでしょう。
> 雨ランも結構しましたし,1万q以上走りましたので,
> お店に行ってちゃんとオーバーホールしてもらおうかなあ。
> ハブとかボトムブラケットですか?
自転車のシーリングは自動車の様な機密性は期待できません。
小さなマンパワーをシール抵抗でロスしない配慮がされてます。

雨ランの機会が多いようなのでこれを機会に点検されることを
お勧めいたします。
 ★ 点検の際には作業を見せてもらうことです。(必ず)
   「なにが」「どのように」「どうなっている」
   「なぜそうなったか」等々を5WnH手法で……。
 ★ 自分では分解できない所まで見ることが出来ます。
   正常・不良を見ることが出来、今後に役立てます。
 ★ 不具合を発見したら
   発生の背景、発生要因、原因を知り、発生防止
◆点検のすすめ
 1万Km走行した事。
 今回のグリースアップの件を機会にと。
 この先、快適なサイクリングライフを楽しむためにと。
 切りの良いところと、心配を払拭するためにも点検される
 のはとても良いことだと思います。
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# MaCoyTigerはホイル組以外は全て自分でやっております。
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                              平成19年1月11日(木)
                                    MaCoyTiger