◇-「地球の詩祭2004」-前川整洋(12/3-20:07)No.167 ┗Re:「地球の詩祭2004」-前川整洋(12/12-16:47)No.168
167 | 「地球の詩祭2004」 | 前川整洋 E-mail | 12/3-20:07 |
第29回地球賞 高貝弘也氏の詩集『半世記』 11月20日、アルカディア市谷での現代詩創作集団地球が主催する「地 球の詩祭2004」に参加しました。次のプログラムでした。 第1部 第29回地球賞贈呈式 第2部 第9回アジア詩人会議ウルミチ・カシュガル 2004報告 アジア詩人会議での日本側講演の再演。 第3部 記念パーティー 第29回地球賞は、高貝弘也氏の詩集『半世記』でした。この詩集では個々 の作品にはタイトルがありません。その冒頭だけ紹介します。 半世記 高貝弘也 結んだよ かげの花 開いたよ そら 緑の実が 光りうつ 言挙げせぬ、祈り しろい息だけが、言葉をかたちないものへとかえるだろう それは しろいかみのまにまに 一片の月 草露に宿り、 空き地の隅で 子どもたちは 四方草(よもぎ)の花に隠れていたよ 湧くように口から 滴ってくる、 祈りになる前の、声の文 「名なし 国なし かみきれは飛ぶよ」 あなたは、亡くなったばかりと云われた、その子の枕元で、最も古い類の石 とされている(三十九億六千二百万年前)、カナダ盾状地北西部スラブ区ア キャスタ川の、片麻岩を見つめている。細かい石英や長石の眩い光が、雲母 や角閃石の暗い層から、すうと浮かび上がっている。その粗い縞の波状のか たちが、よもすがら、とても気になっているのだろう。固体を持たない自然 のただ中で、死ぬことはない。生まれることもない。…あなたはレンズから 目を離すと、自分が外れつづけてきた、その道程を測っている (あなたを取り囲んでいる、その場所は、見えない聞こえない語れない言 葉で、充ちている)−そう示し遺す転石を、古新聞紙の保護づつみから、慎 重に取り出す。あなたは習慣になった川歩きもせず、もう一つの欠けらの、 表面より浮き出たものになぜ、目を凝らしているのだろう。尾部をくるっと 丸めて防御姿勢を取っているそれは、三葉のかたちで、古(いにしえ)の海 の世を這いながら生きていたのだろうか 目を移せば、噎(むせ)びながら、クモが窓の桟で撥ねる。生きぬ仲の番 (つがい)たち。勃(た)ち上がった、虚根よ。包みを開いた途端、とぐろ が解けるように時間が流れている。永い潮流から噛みついてくる。 上弦の月が(葉越しの)小枝から 下がり。揺れている。結ばれては、宿る 雲。うるむ、蔦。ほうっと 菖蒲は咲いていた 月見れば(息を吐くように)浮き出していた。戦の幻。包まれた莟が、闇の 中で。遠くから 薫るあなたの名前を、又 呼ぶ それは葉擦れ。五月の、供花。−嗚呼 呼びかえす − 略 ― 「地球」に掲載されている部分についての詩評を述べておきます。 前衛的な詩として評価が高いが、かなり難解な詩である。難解さは具体的 にストーリーを捉えるのが難しいことによると考えられる。「あなたは、亡 くなったばかりと云われた、その子の枕元で」とは、どういうことなのであ ろうか。亡くなった子どもの枕元での自らの成長期と生命の起源の回想が、 語り手の視点を通して綴られている、と思われる。さまざまな事柄からある イメージを形づくられている。日本語特有の調べによって、古風で郷愁的幻 想感が展開している。 |
168 | Re:「地球の詩祭2004」 | 前川整洋 E-mail | 12/12-16:47 |
記事番号167へのコメント YAHHO掲示板<山好きのための喫茶室>に載せた「地球の詩祭200 4」に対し、次のbeechlof さんの書き込みがありました。 (スポーツ、レジャー > アウトドア > ウォーキング、トレッキング > 山 好きのための喫茶室) beechlofさんはプロの山岳ガイドで、<山好きのための喫茶室>のトビ主で もあります。ユーモアに溢れた山の話題に特徴があります。 なんか凄い ムムムム 若干脳みそが筋肉化している私には・・ うらやましい 詩といえば昔「チッチとサリー」という詩集を彼女に読まされたのを思い出 します そのくらいですね そういう趣味(頭が)私も欲しい shikinoyamaさんがうらやましいです またお願いします 次の返事を書いておきました。 山の詩を中心として活動している私にとっては、「半生記」は相当に難解で す。いろいろ難解な詩を読んできた経験からいえることですが、比喩的に作 者の主張や意図が表現されている詩では、作者の経歴や生立ち、また時代的 背景などを踏まえて考えないと、分からないことが多いようです。「半生 記」の作者・高貝弘也氏が受賞講演で語ったことですが、彼は死ぬかもしれ ない大病を患い、その体験も根底にある、とのことです。死の縁に立たされ たときの、幻想風景も交じっているようです。 |