◇-建築物構造計算書偽装事件3-前川整洋(11/29-20:33)No.219
219 | 建築物構造計算書偽装事件3 | 前川整洋 | 11/29-20:33 |
この事件では、これほどの大規模なゴマカシをなぜチェックできなかったのか、私はコンピュータによる技術計算を30年近く仕事としてきただけにありえない、と言葉がありません。 私が担当している流れ解析(熱移動と燃焼も含む)も、構造解析も同様なはずですが、計算のやり方は、見積もり、計画設計、製品設計と進むにつれて実機に近い、というか忠実な解析モデルを作り、計算結果の精度を上げていきます。当初は、図面からの詳細データを入力しなくても、大雑把な入力でかなりの精度で耐震強度は分かるはずです。簡単な入力で不信があれば、詳細の入力に進めばよいということです。こういうのは設計の普通のルーチンです。 ビルの幅、奥行き、高さ、各階ごとの柱の本数、柱ごとの鉄筋の数の入力だけかなりの精度で耐震強度は計算できるはずです。こういう簡易入力法をパラメータ入力と言っています。私の仕事の1/3くらいは、簡単な入力で複雑な形状を作り出すことに費やしていたこともあります。 ゼネコンといわれる建築会社であれば、さまざまの簡易入力のプログラムをもっていて、ビルの計画設計段階でいく通りもの形状や構造について耐震強度をチェックした後、最終形状が決められているはずです。その形状について詳細の計算を行い、高層ビルであれば模型実験も行ていると考えられます。 わが国では、超音速ジェット旅客機の開発プロジェクトもはじまったと聞いています。また、今は中断していたと思われますが、高速増殖炉と呼ばれる最高レベルの原子炉の開発も行われいます。高速中性子によりプルトニウムの核分裂を発生させ、ナトリウムにより発生した熱を運ぶという凄い技術レベルの原子炉です。これらの開発は、世界最先端の解析技術があって、はじめ可能になってきます。専門用語では技術計算は解析といっているのは、物理現象を支配している偏微分方程式から厳密に解いているからです。世界最先端の計算技術をもつわが国において、計算結果をごまかしたり、それをチェックできなかったりしたということは、ありえないような時代錯誤の事件です。真相が究明されるにしたがって、いかに技術者がいなくて、詐欺師が多かったということになっていくようです。 |