◇-宮沢賢治についての拙作再考-前川整洋(12/24-11:08)No.302
302 | 宮沢賢治についての拙作再考 | 前川整洋 | 12/24-11:08 |
横浜文学学校の合評・講評に提出した拙作「宮沢賢治を通しての自然」に対 し、KさんからワープロA4紙にまとめた問題点の指摘がありました。なかな かの力作仕立てとなっているので、私としても少々細かく検討し、次のよう に考えをまとめ、横浜文学学校掲示板に書き込ませていただきました。 これだけを読んでも、ほとんど内容が分からないかもしれませんだ、ここで も掲載させていただきました。 [第1段目] (1文目)「自然破壊が深刻になりつつある今日、」に対し、とっくに深刻 になっているとの意見ですが、ここは「経済より自然保護が優先されように なった」と修正します。 (2文目)「宮沢賢治については、詩「雨ニモ負ケズ」と童話「銀河鉄道の 夜」が突出して有名である。」は1文目とつながりがないとのことですが、 賢治作品ということでつながっているつもりでしたので、「賢治作品につい ては、詩「雨ニモ負ケズ」と童話「銀河鉄道の夜」が突出して有名であ る。」とします。 (3文目)「妹・とし子哀悼の詩三編「永訣の朝」、「松の針」、「無声慟 哭」も広く知られてはいるものの、内容や意味していることまで知っている 人は少ないであろう。」でこの3編に必然性がないとのことですが、この3 編は愛読者が多いことを体験しているのでとりあげました。また、著者がい かにも深く味わっているかのようだ、とありました。私が深く読解している ということではないのですが。というのは、NHKのカルチャーアワーで栗原敦 先生の解説を聞いて、少々驚いた経験を踏まえてのものです。「永訣の 朝」、「松の針」、「無声慟哭」は、朝、昼、夜と展開していて、「無声慟 哭」の括弧に括られた(わたしは修羅をあるいてゐるのだから)には、とし 子の死を乗り越えて行こうとする賢治の決意があるとのことで、単なる追悼 詩ではないという放送での講義でした。 (4文目)童話のことが多くでてくるとのことですが、童話は子供にまで読 まれていて、親しまれているといったつもりです。 (5文目)「童話よりむしろ詩の方に、たくさんの作品が挙げられる。」 は、山や田園での現場での詩が多く、自然を直接語っているといったことで す。 [第2段目] (1文目)「農業改革家としても有名であることからも、賢治には親しみや すいイメージがある。」になぜ親しみやすいのか、とのことでした。私が親 しみを感じたのは、私が工業分野で働いてきたためか、農業に優しさや人間 味を感じてしまう次第です。合評では親しみをもつのは可笑しいとの意見が 多かったことに、むしろ戸惑いました。親しみとするより、人間味とすべき かもしれません。 (2文目)「童話の自由奔放な内容や農業指導を実践していたことなどか ら、賢治の詩からは観念的ではない自然観を見出せるのではないか、」で、 非観念的=即物的と捉えると、「自由奔放」とは逆側である、とあります が、私は、観念的=一般論、常識的と考えています。農業指導を実践から は、単なる空想ではないといったことです。 (3文目)、(4文目)は、書き込みが長くなるので省略します。 (5文目)宮沢賢治は、現代詩ではなく、近代詩の代表的な詩人ではない か、としています。現代詩のはじまりとされる萩原朔太郎の「月に吠える」 が大正6年で、賢治の「春と修羅」は大正13年です。また、思想性の色濃 い作風からも、現代詩と私は考えています。 (6文目)「そこには人道主義や仏教思想も秘められている。」について、 秘匿されたものとい印象は受けないのだが、ということですが、詩も童話も 底流に宗教的倫理観があり、それが人道主義とも結びついていると考えてい ます。 (7文目)「仏教思想との関係は、仏典の法華経の発想がとり入れられてい ることによる。」は、日本語とは呼べないとありましたが、厳密には「賢治 作品と仏教思想との関係は、それらに仏典の法華経の発想がとり入れられて いることによる。」ということで、言葉が足りなかったともいえそうです。 (8文目)「賢治は東北地方のことを、イーハトーヴォと呼んだ。」は嘘、 ということですが、賢治はイーハトーヴォの定義は、童話「注文の多い料理 店」で書いているくらで、多くは書いていません。次のように書いてありま す。 「イーハトヴは一つの地名である。−略― イヴン王国の遠い東と考えられ る。実はこれは著者の心象中に、このような状景をもって実存したドリーム ランドとしての日本岩手県である。」 岩手県の風土を通して想像した国としているようで、東北地方の代表的な 山を登った経験からは、岩手県に限定しなくとよいと考えました。読者それ ぞれの捉え方があってよいような気がします。 (9文目)「イーハトーヴォの語感から、童話の世界が連想させられる。」 に対してそうは思わないということですが、私としては、この語感からは、 北欧的なしっとりとした、少し暗さのある世界が展がりました。 (10文目)書き込みがだいぶ長くなってしまたので省略します。 宮沢賢治探求も第一歩を踏み出したところです。なにはともあり、個別に それぞれの問題点を指摘頂き参考になり、Kさんには有難うございました、と 述べさせていただいた次第です。 今年も残り少なくなりました。賀状書きおよび文芸作品や登山での写真の 整理などであたふたしていますが、残りの日々を有効に使いたいものです。 |