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タイトル: 詩集『カシオペアの雫』より
投稿者 : 前川整洋<maekawa.seiyo@ebara.com>Locked!

URL   : 未登録
登録時間:2003年5月29日20時13分
本文:
 私と同じ「現代詩創作集団地球」同人の森三紗さんから詩集『カシオペア
の雫』を戴きました。森さんは「宮沢賢治の会」会員で、盛岡市在住です。
昨年、詩誌『地球』に私が書いた宮沢賢治と法華経についてを読まれて、詩
集をお送り戴けたと思われます。これからも宮沢賢治について探求していく
つもりです。
 森さんは、英語の先生をされていることが、「あとがき」に書いてありま
した。純粋な心が響いてくる詩が、多くありました。『カシオペアの雫』か
ら2篇紹介します。

   リアルト橋を渡って

霧の日に ゴンドラに乗り
運河を 揺られていく
「嘆きの橋」と名づけられた リアルト橋
もう 架けられている それは 運命

いったい いくつ どんな橋を
渡ってきたのだろう

喜びと悲しみの仮面をつけ
サンマルコ寺院に行く 私たちは 結局
礼拝する人々の 傍観者に過ぎないのか
信じることの 旅人に過ぎないのかも知れない


   スコットランドの山うさぎ

雪野原を
純粋無垢な
白い衣裳を着て 走る
鷲の出現や
耳をかすめる矢
谷にこだまする 銃の音
仕掛けられる 巧妙な罠
それら 生死の境界線を 越えて
神より与えられた色
雪の白さに同化して
もっと生き抜け
今あることの美しさを
ありったけ表現して

 簡単に詩評を述べておきます。
「リアルト橋を渡って」は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を連想させられる
詩である。ゴンドラに乗り、この世を、別次元の世界から覗いているようで
ある。「喜びと悲しみの仮面をつけ」の裏には、人の心にある向上心、ある
いは倫理感といったことの存在が浮かびあがってくる。「傍観者に過ぎない
のか」もそのことを、畳み掛けている。。
「スコットランドの山うさぎ」は生命讃歌の詩といる。スコットランドという
遠い地が、幻想感をより強めている。命の緊迫感が、鮮明に表現されてい
る。その緊迫感は、白という色に象徴されていて、生命の美しさとは、何で
あるかを伝えている。


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