◇-「遊歩俳句大会」作品その7-前川整洋(11/1-08:47)No.96
96 | 「遊歩俳句大会」作品その7 | 前川整洋 E-mail | 11/1-08:47 |
俳誌「俳句界9月増刊号・遊歩俳句大会作品集」から各県ごとの掲載句で、 目に付い数句をシリーズで紹介しています。一言の句評も書き加えました。 東京都 大股で歩くふるさと麦の秋………堤亜由美 故郷に帰った開放感からか、自然に包まれた安らぎからか、自ずと大股にな っている。周囲は一面、麦畑、所々には林がある。大股により心の弾みを表 現している。 ひろがりて海べを歩く遍路かな………岸嘉一 遍路路というと、田園の道や山道が浮かぶ。海辺に出たとなると、これまで とは違う広いスペースを、思い思いに歩きはじめる。遍路も旅であり、旅の 自在さがそこにある。 一燈もなき道を行く近松忌………柴田幸子 近松門左衛門の浄瑠璃は、心中の悲恋ストーリーである。まさに一燈もなき 道であり、それでも歩かなくてはならない。 木の根道鞍馬の山の紅葉踏み………栗山さよ子 鞍馬山の木漏れ日の続く山径。紅葉を踏むことに義経の悲劇が、伝わってく るのである。「の」の連続したリズムに、悲劇だけではなく、義経伝説の奇 想天外な明るさも伝わってくる。 団体に譲る木道夏の尾瀬………栗山雅子 団体に道を譲っている光景が、広々とした尾瀬ヶ原なので遠くからも見えて いる。 雨降らば雨また楽し青葉径………斉藤破風 苔生している森の道などでは、雨ならではのしっとりとした煌きがある。 |