348 | 明けましておめでとうございます | 前川整洋 | 1/1-20:51 |
NHKの「ゆく年くる年」の除夜の鐘を聞きながら、一句を作るつもりでした が、例年のことですが、除夜の鐘を撞くシーンが少なくなり、句ができかね ています。有名なお寺の放映も少なくなっています。有名なお寺の鐘の方 が、音に重みが感じられ、句が作りやすいようです。歴史の重みかもしれま せん。昨日は京都の清水寺が出てきましたが、鐘の印象は薄かったようで す。昨日の放映を思い出しながら句を考えました。 鐘響く画面にはなき除夜の僧 群衆の一人一人に除夜の鐘 今年もよろしくお願い致します。 |
347 | 「数え日」にあたり | 前川整洋 | 12/30-20:27 |
「数え日」は季語で、年内の残り数日をいいます。 数え日の光のなを自宅んへと 買い物の帰り、日差が凄く澄んでいて、山あり谷ありの一年でありました が、締めくくりが澄んだ日であれば、よしと思うしかないようです。 数え日や山の想い出くりかえす 「百名山」ではない、由布岳、普賢岳にも登り、「百名山」以外の山の良 さも満喫しました。 のびやかに尖る由布岳若葉どき |
345 | 現代小説塾 ―小説を書くために― | 前川整洋 | 12/26-20:05 |
12月20日(土) 新宿住友ビル7F 朝日カルチャーセンター 文芸評論家の石川忠司氏と小説家の桜井鈴茂(すずも)氏との対談形式の講 義 4月から文芸評論家・石川忠司先生の現代小説塾を受講していましたが、10 月から先生が休業に入られたので、受講は中止しています。ところが、緊急 講座は開催されたので、受講しました。私は詩、俳句それに山岳紀行、評論 の創作活動をしていて、小説は書いていませんが、新しい思想の追求や表現 の仕方の勉強、および文学的視野拡大などのために受講しました。 桜井氏―作法を考えるにあたって、スティーヴン・キングの「小説作法」を 読んできた。 石川氏―文学賞の下読みのシーズンである。200本中、面白いものは10 本くらいである。何でつまらないか。言葉の可能性を活かしきれていない。 日常では、驚くほど限定した使い方しかしていない。依頼、許可、言い訳で 9割。最大限の活用している例として、桜井鈴茂著『アヴェ・マリア』をと りあげる。 桜井氏からのあらすじの紹介―友人が海外に出かけるので、主人公のミツル は彼のアルファロメオを預けられる。ヒロミはミツルとこの車に乗り、女の 子をナンパして空き別荘に入り込む。別荘の持ち主がゴロツキ連中で、ボコ ボコに殴られ、女の子は奪われ、アルファロメオも壊される。 小説現代の依頼だったので、エンタテーメント・ストーリー性のものにし た。88・89年のバブル期の匂いがするものを狙った。ネットが発達して ナンパがなくなってしまった現在だから、ナンパした一晩のことを書こうと 思った。 石川氏―配った資料の、次のページは小説の最後のところで、二人がアルフ ァロメオで帰る場面を例として挙げた。 まあ、ひでぇことはひでぇ、とミツルも言った。八対二だもんな。その 上、女も取られ。 だろ、とおれは言った。最後には力業に適わないんだぜ。 ほんとうだな、なんだかんだ言っても暴力が王様だよな。 暴力、権力、金力。世界はそういったものに支配されてんだ。 ああ、そうかもしれない。 な? そんな世界に神がいるか? いるわけねえだろ。え? でもな、ヒロミ、とミツルは言った。言葉に妙に力がこもっていた。この 曲は美しいぜ。 まあ、とおれはぜいぜいしながら言った。この曲は美しいぜ、たしかに。 で? いま、美しい、って感じるだろ? だからなんなんだよ? 美しいって感じているなら、とミツルは言った。なんだかミツルじゃない みたいだ。 神はいるんだよ、やっぱり。 石川氏―普通の思考では、アヴェ・マリアは美しい、が、おれたちはボコボ コにされている、だから美しくはない。思考・言葉の中心に自分がいる。生 物はまず自分が生きなくてはならない、からこうなるのはやむをえないが、 ここで思考の中心を自分から外す。しかし、世界の側へとは移さない。殴ら れて、我々は幸せである。こうしてしまうと、世界の中心へとなるが、こう してもダメだ。 石川氏―この小説は、最初からこの結末を考えて書いたのかどうか。 桜井氏―結末は勝手に出てきた。いつもの書き方であるが、キャラクターが 勝手に動いてくる。自分は書記のようなもの。 石川氏―小説は書き出しついてとりあげる。下読みでは、最後まで読むの か、とよく聞かれる―最後まで読まなければ、分からないのではダメだ。野 球は四打席目に打てばよい、これは結果がすべてだからだ。小説の応募で は、一打席目に三振しては、それで終わりだ。途中で面白くなる小説もある のでは、との反論もあるが、素人の三振とプロの三振では区別がつく。 石川氏―村上春樹には前口上的な書き出しが多い。この方法はやらない方が いい。 桜井氏―「前口上+力技」ならば良い。 桜井氏―これからデビューする人へのアドバイス @小説は多様だからこう書けという決まりはない。 A自分にふさわしい題材に合ったやり方をとる。 B自分の文体ではなく、主人公に合わせる。しかし、文体は人生だから、文 体を変えるのは信用できない、とT(?)氏が言っているのを聞いたことが あるが、自分はそうは思っていない。 桜井氏―何でもある、ということについて。自由イコール前衛ととられがち であるが、古典を選ぶ自由もあるということである。 桜井氏―書くにあたっての決まりごと @美文を書かない。 Aここが大切、キーなどは示さない。 B改行しない。一般的には、大切なところで、改行したくなる。そういうこ とはしない。単なるカメラマンになるスタンスをとる。 石川氏―小説は時間進行であるが、逐語的に書いて行くと単音でしかなくな る。和音にしなくてはいけない。和音とは、幾つかの異なる情報を一文にす ることである。和音は小説の基本である。 石川氏―村上春樹の小説は、具体的な中身がないのに、文章で美学を立ち上 げている。内容のない生活を書いて、美に高めたのは村上春樹の他には太宰 治くらいである。 桜井氏―自分は少し違った感想である。 石川氏―小林多喜二の「蟹工船」は、プロレタリアートそのものを美しいと はしていないことからは、失敗と考えている。 石川氏―近代文学イコール内面文学である。純文学では偉大な人間は書けな い。近年、木戸孝允は評価が暴落した。書いていた日記が出てきて、グチっ ぽい内容が英雄にはそぐわなかったためだ。英雄は内面の葛藤を乗り越えて いなければならない。高山右近の葛藤などは小説になる。 ほっといても後世に残る人物は小説には書かない。声なき声を書く。それが 書いて面白い。 桜井氏―司馬遼太郎は書いている。 石川氏―それは歴史小説だ。 チンキな人間を書くのが、小説のミッションである。社会保証がゆきとどい たヨーロッパの国では、そういう人物は小説にはなっていない。政治的、経 済的な助力を与えられた人たちには、小説の助力は必要ない。 PM1時にはじまり、終了予定時間はPM2時30分であったが、この時間を過 ぎてから質問がはじまり、PM3時に終了しました。 質問に、日本は社会保障が進んでいる方ではないかというのがあったが、ア メリカに比べれば進んでいるが、フランスなどに比べれば遅れているという ことでありました。 |