詩集『扉の向こう』より へのコメント
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前川整洋さんは No.141「詩集『扉の向こう』より」で書きました。 > 現代詩創作集団「地球」同人の小林登茂子氏から詩集『扉の向こう』(地球社、2003年)を戴きました。小林さんは「地球」の大会や研究会で幹事をされていて、「地 >球」の運営を担っています。 > 『扉の向こう』から2篇紹介します。 > > 扉の向こう > >木下順二作「夕鶴」のつう >五十分間に 安らぎ 憂い 迷い 喜び >怒り 希望 哀しみ 祈り >目まぐるしく演じて >白くなって消えていく つう > >セリフも憶え 日常のシーンも >狂乱のシーンも 別れもシーンも >出来上がったけれど >与ひょうと愛し合うことができない >「ほんとうはあんたが好き」 >与ひょうを抱きしめ−ここで >芝居は中断する 扉の前で立ちすくむ > >型通り抱き合えばセリフも型通り流れて >それぞれが 一人芝居 >連日 型を変えて頭 肩 腰を抱きしめる > >なぜ私たちは抱き合っているのだろう >私はなぜ 芝居をしているのだろう > >本番までの一週間 ふと与ひょうの腕が >柔らかくつうを抱きしめてくれるのを感じた >そのとき 扉は開き >私は足の先まで 鶴になった > > > モンゴルからの手紙 > >南ゴビの草原から >ウランバートルに向かうプロペラ機 >乗り込もうとする私たちを >強い風が追い立てる >旅の終わりを告げるような >八月末の突風 > >プロペラ機の高度は低い 私は >ゴビ砂漠の赤茶けた地肌が広がる窓に >額を押し当て 地平線の彼方へと続いていく >無限を見つめていた > >機体が旋回し 下降をはじめる と >くるくると カーブを繰り返す緑の帯 >幾重にも重なり交じわり >離れては寄り添う ほどいたばかりの毛糸 >風に吹かれるままに揺れる >女のカールした長い髪 > >水の流れの足跡 >地下水脈の 透きとおった影 >緑の濃淡は生命の強さ あるいは >地下水脈に 比例するのだろうか > >生命の源 水が描いた絵 > > 簡単に詩評を述べておきます。 > それぞれの詩が、出来事の核心を適確に捉え、読者の心に響くように表現 >している。 > モンゴル旅行は「地球」主催によるものであることが、「あとがき」に書 >かれている。この旅行での一連の詩は、映像では映り出されない、モンゴル >の風土の内面が描出されている。 > 「扉の向こう」では、つうの役を演じている作者の体験が、緊張感ととも >に切実に語られている。つうになかなかなりきれない、しかし演じているう >ちに役者は役の人物へと変わっていく。それは台詞や演技などが、役者が演 >じている人物そのものへと導いているのである、とこの詩からは受け取れ >る。 > 「モンゴルからの絵手紙」は、ポロペラ機から見下ろしたゴビ砂漠を好奇 >心とともに眺めていることから詩がはじまり、意外な光景が詩人を待ってい >た。地下水脈による緑の帯である。それを絵手紙と断定したドラマチックな >展開を描出している。 > >「モンゴルからの絵手紙」を拝読して、一句思いつきました。 > ゴミ砂漠見渡すかぎり風光る
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