登山レポート
雲ノ平と裏銀座
雲 ノ 平 |
何かに誘われているようで 立ち止まってみた ほとんど視界のきかない周囲を じっと見詰めてみると そこは 雨降り雲ノ平 池塘だけが やさしく見える 足元に視線を落とすと 灯の点った豆電球のような チングルマの群落 靄の向こうに 黒部五郎岳があるはずだ あっちには 薬師岳 そっちには 水晶岳 今は何も見えない 池塘だけが やさしく見える それが雲ノ平だ |
雲ノ平は黒部源流地帯にある火山台地のことであり、かっては蜘蛛ノ平と呼ばれていた。 残雪の形からこう呼ばれていたようである。雲ノ平の魅力。2600mの高地にあること。 岩と這松のコントラストが庭園のようであること。周囲には3000m級の山々、そして雲ノ平 はそれらの山々の盆地ではなく、黒部源流の本流である黒部川の谷と、やはり源流の一つ である岩苔小谷により周囲の山々と隔てられ、独立した台地となっている。それでとりわけ 明るい高原をなしていることなどにある。 拙著「雲ノ平と裏銀座」に沿って、雲ノ平と裏銀座と呼ばれている縦走コースを次の行程でたどることにする。 |
富山駅==有峰湖==折立――太郎小屋――薬師沢小屋(泊)――雲ノ平山荘(泊)――▲祖父岳 ――岩苔乗越――▲鷲羽岳――岩苔乗越――水晶小屋――水晶岳――水晶小屋(泊)――東沢乗越 ――▲野口五郎岳――▲三ッ岳――烏帽子小屋――▲烏帽子岳――烏帽子小屋(泊)――高瀬ダム ==信濃大町 |
1. 登山口・折立 〜 太郎平 雲ノ平へは富山から有峰湖を経由して折立までバスで入る。登山口には愛知大生の遭難碑がある。 樹林帯の急登を詰めると、高原状のなだらかな登りとなる。やがて有峰湖が見下ろせるようになる。 どこまでも広々とした登りが続き、太郎平に着く。夜行列車で来たなら、昼頃に着くことになる。昭和 38年1月、太郎小屋を舞台にしたような愛知大生の大遭難事件があった。ここにいる多くの登山者 は、その事件を知らない世代のようだ。学生たちの判断ミスが重なり大遭難を引き起こしてしまったと いえる。太郎小屋で昼食後、薬師沢小屋へ向かう。稜線伝いに歩いてから一気に黒部川へと下る。 正面には三叉蓮華岳の優雅な山容が近い。下りきって平坦な笹原となる。 2. 〜 薬師沢小屋(泊) 〜 雲ノ平 〜 雲ノ平小屋 薬師沢小屋は黒部川、川というより沢であるが、その縁の高台にある。小屋前の広場から沢を見下 ろせる。狭い谷間であるが、黒部源流の雰囲気を味わえる場所である。 翌朝は吊橋を渡り、雲ノ平へのいきなりの急登に掛かる。鬱蒼とした杉らしき森、これは杉の一種の 黒部である。樹林の中から広場のような所に飛び出る。ここがアラスカ庭園である。ここからは、高山植物 の草地に岩と這松を配置した庭園のような場所が展開して行く。 奥日本庭園を抜けて雲ノ平山荘に着く。そこからスイス庭園を抜けるとキャンプ指定地に着く。ここで 雲ノ平と別れて祖父岳の登りに掛かる。水晶岳が手の届く近さだ。 3. 〜 △祖父岳〜 岩苔乗越〜 △鷲羽岳 〜 岩苔乗越 〜 水晶小屋 〜 △水晶岳 〜 水晶小屋(泊) 祖父岳山頂は凄く広々している。ガスがでると迷い易い所だ。昼食をとってから鷲羽岳に向かう下り続けて 登りに差し掛かった地点が岩苔乗越だった。ここにザックを置いて鷲羽岳へのピストンに向かう。ワリモ岳の ピークを越えて一登りで鷲羽岳山頂となる。眼下の鷲羽池は意外と大きいその遥か先に槍ヶ岳が悠然と 稜線を拡げている。 岩苔乗越から正面に水晶岳を仰ぎながら、稜線伝いに歩く。水晶小屋にザックを置き、水晶岳への ピストンに向かう。だいぶ歩いた後なので、少々きつい登りだ。狭い山頂には多くの登山者がいた。 黒部湖が遥か先に覗くように見えている。360度、3000メートルの稜線の連なりが展開している。 水晶小屋は牛詰めだった。山の厳しさはこんなことにもある。荷物は外で、シートが被せられた。 4. 〜 東沢乗越 〜 △野口五郎岳〜 △三ツ岳 翌朝は岩稜の下りからだ。朝焼けの槍ケ岳は一段とスマートで秀麗だ。この辺りがこの縦走路で最も危険な 個所である。草地の斜面は白山一草と信濃金梅の群落に覆われている。野口五郎岳は近くに見えているが なかなか近づかない。真砂岳を巻きながら越えると、後ひと登りとなる。この辺はいつも驚くほど風が強い。 野口五郎岳山頂からの槍ヶ岳は雲に半ば隠されていた。山頂直下の山小屋で一休みする。幾く筋も雪渓 の走る水晶岳は、水晶の煌きがある。この山名はかっては水晶が採れたことからに由来している。強風の中を 歩き続け三ッ岳に着く。赤牛岳と薬師岳が迫っている。反対側では高瀬湖が俯瞰できる。 5. 〜 烏帽子小屋〜 △烏帽子岳〜 烏帽子小屋(泊)〜 高瀬ダム ここからは烏帽子小屋まで一下りである。烏帽子小屋は昨年も泊まっているので、懐かしく思いながら宿泊の 手続きを済ませる。 烏帽子岳へは花崗岩の白砂の所を通り、オベリスクの基部の広場に至る。見上げると登れそうもない垂直の 岩場だ。取り付くと見ためほど危険ではない。鎖や針金を利用して、オベリスク直下のテラス状の所に着く。 順番待ちしてさらに天辺まで登った。三ッ岳に遮られ槍ケ岳方面は見渡せない。後立山は視界一杯に広がって いる。 明日は高瀬ダムへ、ブナ坂と呼ばれている急坂を一気に下りこの縦走を終えることになる。 |