POEM

詩についてU

詩とは、現実や常識、それは観念であることが多く、観念や一般論を打ち破り
現実や常識そこにあるものとことの本質を捉えるための文芸である。

森の奥
ジュール・シュペルビエール
昼も小暗い森の奥の
大木を伐り倒す
横たわる幹の傍ら
垂直な空虚が
円柱の形に残り
わなないて立つ

聳え立つこの思い出の高いあたり
探せ 小鳥よ 探せ
そのわななきを止まぬ間に
かつて君等の巣であった場所を

丸山薫はこう感想を述べている。
在って消えた物の周囲をむなしく羽搏いている小鳥たちに向かって、詩人の「探
せ 小鳥よ 探せ」の呼びかけはもはや絶望の叫びでしかない。梢の巣は二度と何
処にも見付からないのだから。
 一読可憐なこの小詩の核心は抒情でも政治への憤りでもない。空間存在の解き得
ぬ謎と寂寥の思考に私を沈み込ませる。
井伏鱒二にはこんな山の詩がある。


な だ れ
井伏鱒二
峯の雪が裂け
雪がなだれる
そのなだれに
熊が乗ってゐる
あぐらをかき
安閑と
莨をすうような恰好で
そこに一ぴき熊がゐる


井伏鱒二には雪崩の不気味さの中にも、自然の安らぎが垣間見えたのであろう。
目には見えていないものを、心を通して見るのが詩ともいえる。


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