POEM

詩についてW


 山での究極の境地は、自然との一体感であろう。対象と一体になる、対象に入り込んでしまう
ことが知ること会得すること、の最高の境地であることからもこのことが理解できる。自然との
一体感を表わしている多くの詩が作られてきた。


風・光・木の葉
大木 惇夫
一すじの草にも
われはすがらむ
風のごとく

かぼそき蜘蛛の糸にも
われはかからむ
木の葉のごとく

蜻蛉のうす羽にも
われは透き入らむ
光のごとく

風・光
木の葉とならむ
心むなしく


 風となって草に触れ、木の葉となり、光となる。自然に溶け込んでいる作者がいる。
心むなしくは世俗を離れた心境を表わしているのであろう。


岸田衿子
T
峠道を
ちょうちょのあとから
ついてゆくと
ちょうちょはいなくなり
わたしだけがのぼっていきます

森へちょうちょと
はいってゆくと
わたしがいなくなり
ちょうちょだけが
すすんでゆくのがみえます
U
人をよんでいるような木がある
わたしは木のほうへひかれてゆくが
わたしをよんでいる木はどこもなくて
あたりにはたくさん木が
木のことばで詩をつくっていた

この詩の中には蝶や木になってしまった作者がいる。自然へと入ってゆくと、自分の存在が
なくなり自然だけがあるのかもしれない。



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