南スラウェシの地方社会(その3)

南スラウェシの地方社会(その3)

Masyarakat di Sulawesi Selatan no.3

南スラウェシ日本人会ニュース 2000年度 第3号 復刻版

マカッサル人の伝統的な名前のつけ方を紹介しましょう。 赤ん坊が生まれると先ず仮の名前 (areng dondo-dondo)が付けられます。仮の名前は、赤ん坊が生まれた時の出来事や、生まれた時の様子、近くにあったものの名前などにちなんで付けられることが多いようです。例えば目が細いのでICina、父がメッカ巡礼中だったので I Makka など。男子の仮の名前として最も一般的なのはIBaco や I Baso、女子の仮の名前として最もありふれているのはIBasse です。
 子供は生まれてから2~3年間は仮の名前で呼ばれますが、子供が病気勝ちだったり世帯の生活が苦しいなど、良くないことが多いと、仮の名前と子供の相性が悪いと考えられ、ほかの名前に変えることもあります。逆に相性が良いと判断されれば仮の名前がそのまま本名になることもあります。

6~7才になるとコーランの勉強や学校に通い始める年になり、本名(areng kale) が付けられます。本名がつけられると仮の名前は使われなくなります。本名として最も一般的なのは、男子ならば Mappangara、Mappanyukki、ITamparang など、女子ならば花の名前のIRosi(バラの花).I Saribau' (花の香り)や宝石の名前のI Jamarro, Bulang (月)や I Bintoeng (星)などです。

かっての奴隷階級出身者の場合は以上でおしまいです。本名一つだけで一生を過ごしていたわけです。旧平民階級は二種に分かれますが、下層の一般人(tau samara')も、奴隷と同じく、本名一つだけで一生を過ごしていました。
 平民のもう一つである自由人 (tumaradeka) は二つの名前を持つ権利を有する者(taurua arenna) とも言われます。自由人は、貴族階級成員とともに、15才頃になると身分称号(areng pa'daengang)を与えられ、これ以降は本名ではなくこの称号で呼ばれるようになります。普通、身分称号には動詞や形容詞が使われます。例えば、男性であれば Daeng Mangngerang (取る)、Daeng Tinggi(高い)、女性ならDaeng Bau' (香り)などとなります。こうして、本名が I Makkuta'nang で、称号が Daeng Mannuntungi ならば、Daeng Nuntung と呼ばれることになります。

さらに結婚して子をもうけた後は身分称号でも呼ばれなくなり、最初に生まれた子供の名前を使って呼ばれるようになります。例えば、最初に生まれた子が娘のI Batti' であれば、父親は「ハッティの父」(Tettana I Batti')、母親は「バッティの母」(Amma'na I Batti') と呼ばれます。このようにマカッサル人はオギャーと生まれてから成長するに従って名前を変えていきます。そういうわけで、日本人が考えるような、姓、苗字という意味での名前は原則として存在しません。

王族の場合はちょっと複雑で、例えばゴワ王として有名なハサヌディン王は、仮の名前、本名に加えて、治めていた地名にちなんでボントマンガペ侯 (Karaeng Bontomangape)と呼ばれ、さらにゴワ王国の王に即位後はスルタン・ハサヌディンという称号が加わり、さらに死後はまた別の名前が付けられ、次のように長い名前となります。

I Mallombasi (仮の名前)
Daeng Mattawang (本名)
Karaeng Bontomangape (王族称号)
Sultan Hasanuddin (ゴワ王称号)
Tumenanga riBalla' pangkana (物故名)

(S)