木造船のふるさと(4)

- Nagasaki Dream -


2000年3月8日の地元FAJAR紙報道を追記しました。


 

1999年3月18日にブルクンバのタナベル(Tanaberu )に行った際に、現在日本の顧客向けに建造中の大型の木造船を見ることができました。長崎の某社向けの船で全長 60 米、幅 11.5 米の巨大な木造船です。タナベルでもこの様な大きな船は希のようです。私もスラウエシ島でいろいろな木造船を見ましたが、こんなに大きいのは初めてで思わず興奮しました。残念ながら大きすぎて全体をカメラに収めることが出来ませんでした。船底部分はすでにほぼ出来上がっていて完成は2000年の予定とのことです。左の写真は地表からタラップを上がったところで撮ったものです。なかで働いている人間が小さく見えます。

 

昨年オーストラリアのフリーマントルを訪れたとき、海洋博物館で大航海時代の大型木造船(オランダの Duyfken 号のレプリカ 全長約 20 米)を建造していました。これは当時のオランダの造船技術をもとに建造していて、船底のフレーム材もモジュール化されていて当時の造船技術の高さを知る上で大変参考になりました。マジェネでも2000年のシドニーオリンピックに向けてインドネシアのバゴ( Bago )を建造していました。(「木造船のふるさと」(3)を参照下さい。)これはどちらかと言うと伝統工芸的な感じでした。タナベルでは長崎向けの船の他、その横で東京の某社向けの木造船も建造中で、こちらは船長約30米で、インドネシアのピニシです。(頁の関係で写真は割愛させて頂きます。)これも2000年完成に向けて建造中です。同じ時期に各地で異なったプロジェクトの木造船を建造していることになります。これらの木造船の建造をビデオなどで記録したら大変な価値があるように思われます。

 

長崎向けの船はインドネシアの金融危機の前の契約のためわずか約5億ルピア(日本円で800万円)、東京向けの船は小型ながら金融危機以後の契約のため約4億2700万ルピアとのことでした。現実にウジュンパンダンの造船所では契約がルピア建てであったため資材費が3倍以上に膨れ上がりプロジェクトがとん挫している例があります。長崎向けの船では船尾骨材にNAGASAKI DREAM 28.10.1997 と書かれてました。このプロジェクトが夢に終わらないことを心より祈ります。

 

ウジュンパンダンからタナベルまでは車で片道約4時間、往復8時間のドライブでした。途中の塩田も雨期のため養魚場に変わっていました。街道沿いの名産の西瓜売りもなく一寸残念でした。

  •  写真(上)甲板レベルから船体内部を見る。 
  •  写真(下の右)船体が大きいので海側に大きく迫り出した状態で建造している状況
  •  写真(下の左)船尾部から写したもので、横の事務所が小さく見えます。 



2000年3月8日の地元FAJAR紙報道


 

日本の長崎にある団体はかって大きな船をつくる夢を持っていた。この計画で今年、西暦2000年に日本でオランダのVOC(オランダ東インド会社)の400年を記念するために“長崎号”を進水させる計画であった。そこで1997年の10月28日、ブルクンバのハジバソ(54歳)と5億2千500万ルピアで契約が行われた。ブルクンバではかって建造されたことのない1000トンの巨大な船の建造が開始された。これまでブルクンバでは300トンが最大級の船であった。しかし残念ながらこの巨大な船舶の建造は継続できなかった。船体の建造が50%の段階で建造費は10億ルピアに達した。

建造が継続出来なくなった原因は3つある。

  • 長崎側が一方的に中止を求めてきたこと。これは恐らく長崎の団体内部の事情と思われる。  
  • 建造者側の問題としてハジバソが建造費の管理が出来なくなっていたこと。もし建造を継続させると経済混乱による原材料の値上げの影響で建造費は30億ルピア近くに膨れ上がってしまう。  
  • かってない巨大な船であったため進水の問題が表面化した。ピニシ“NUSANTARA号”でバンクーバーへ航海したことのある木造船の建造経験者によると、多分この船は海には引き出せないだろうと言う。これまで60隻以上の木造船を手がけたと言うハジバソは進水の計算はやったことはないし、ただ経験だけが頼りであるという。

起工からすでに2年以上本当に問題続きであったが、ただ一つハジバソにとっての救いは、すでに船はハジバソに贈与されたことである。さらに長崎側からは5億2千500万ルピアは支払われている。しかし巨大な船が2年以上にわたって、本来ならば他の船を建造する場所を占拠している。1000トンと巨大なため遠浅の海岸を掘削する必要があるが莫大な資金が必要となる。ハジバソは昨日(3月7日)レモの海岸でこの問題は最初から問題であったと述べた。長崎側は進水の問題はハジバソの責任であるとの認識である。一方ハジバソ側は(言われた通りに)船をつくるだけとの認識である。

ハジバソとしてはまだ諦めていない。進水は可能と考えている。しかし一体誰がこの船を買ってくれるのか?もし希望者がいれば観光スポットのビラの海岸まで曳航は可能と言う。そこで建造を続けてレストラン船にすることも出来ると。

以上

編集者注

ハジバソは伝統的な木造船ピニシを図面なしに経験のみで建造する職人であり、造船技術者ではない。300トン以下のピニシなら造れても1000トンのオランダ船の復元など出来るはずがない。そもそもピニシはオランダ船とは構造的に全く異質のものである。地元の木造船の専門家の話しでは船体は甲板部分が未完成のため強度が十分でないから、このまま海に引き出すと船体を損傷する恐れがあると言う。遠浅のためかなりの浚渫も必要。